祇園御霊会の起源は貞観11年である。国の数66本の鉾を立て、6月14日に御霊会を
修した。これが今の還幸祭の起源である。神幸祭と還幸祭の神輿渡御が祇園祭の山場
となる。祇園御霊会の初見は『祇園本縁雑実記』に「貞観十一年天下大疫の時、寶祚
隆栄、人民安全、疫病消除鎮護の為、卜部日良磨、勅を奉じて六月七日、六十六本の
矛、長二丈許りを建て、同十四日、率洛中の男児及び郊外百姓を率いて、神輿を神泉
苑に送り、以て祭る、是れ祇園御霊会を号す、爾来毎歳六月七日十四日、恒例と為
す」とあり、『三代実録』(巻七清和天皇貞観五年五月二十日条)に、「廿日壬午。
神泉苑に於いて御霊会を修す」とある。
同じ年の直前に、東北地方に巨大地震があり、大津波による災害があった。祇園祭
と貞観の大津波との時間的な関係から、私は両者に深い関連があったという考察をし
たことがある。当時、京、多賀城、大宰府だけが大都市であった。多賀城の被害は京に
緊密な関係があり、早馬で災害を知った朝廷は御霊会の勅令を発することになったと
考えた。
祇園会の水美しく鯉を飼ふ 茨木和生
今、祇園祭は暑い最中の宵山に人が集まる。京都市では2018年度も「祇園祭ごみゼ
ロ大作戦」を実施している。京都の大学生たちも多数、ボランティアで参加してい
る。また、さまざまな展覧会などが鉾の街で展開される。2018年には、第7回祇園祭
によせて、扇子展が「Art Space-MEISEI」で、第10回祇園祭展が「染・清流館」で、
祇園祭扇子・うちわ展が、四条室町角鶏鉾町の「ちいさいおうち」で、などなど。美
術工芸学科や空間演出デザイン学科の学生たちが、京都マルイ店頭で展示販売会を行
い、風呂敷で知られる宮井株式会社の活動に参加する学生もいる。宮井株式会社のあ
る鯉山町では、左甚五郎作の大きな鯉の彫刻が展示される。
祇園祭に直接の関係はないが、本学から最近巨大なゴミが搬出され、東京の大井町
にできている劇団四季の新しい東京キャッツシアターに届けられた。この劇団四季
キャッツプロジェクトの写真は本学のウェブサイトに出ている。学生たちの力作のゴ
ミは、今、東京で保管されており、8月上旬には学生たちが東京へ出かけて劇場に運
び込む作業を行う。
鉾粽売る子左手に握り飯 和夫
◎劇団四季 産学連携「キャッツ」プロジェクト(瓜生通信Webマガジン)
[文:尾池和夫・写真:高橋保世]
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尾池 和夫Kazuo Oike
1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。