COLUMN2018.04.25

京都アート

紅花の種蒔で始まる東北芸術工科大学の一年 -瓜生山歳時記#20

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  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 晩春の季語に種蒔がある。種降し、すぢ蒔、籾蒔く、籾おろすなどの傍題があり、種まきに関連して、八十八夜、苗代、種選、種浸しなどの季語も日本列島の晩春の光景である。種まきとだけだと、日本の暮らしの中心となる稲の籾を苗代に撒くことをいう。それを、立春から数えて88日目である八十八夜のころに行うのである。
 一方、野菜や花などの種を蒔くのは、もの種蒔く、花種蒔くと言う季語で、種蒔という季語と区別する。毎年大きさを競うコンクールが行われるジャンボ大根は35キロもあるが、種は2mmしかない。それを蒔くとあっという間に大きく成長して私たちに貴重な栄養を提供してくれる。その種の持つ生命力が素晴らしい。

物種をにぎれば生命ひしめける 日野草城

 東北芸術工科大学の紅花プロジェクトのことをすでに2回紹介した。1回目は2017年7月の紅花摘みのこと、2回目は2018年1月の寒中染めのことであったが、今回は紅花プロジェクトの最初の行程である、紅花種蒔のことである。4月の入学式の直後から1連の行程が始まるが、その最初が種を蒔くことから始まる。
 もちろん種を蒔く前には畑の手入れが必要である。冬を越す準備として、堆肥と苦土石灰をほどこす。鍬はたくさんなくても、スコップなどで工夫しながら畝をつくる。種を水に浸しておく。消毒効果があり、かつ発芽がスムーズになる。
 4月中頃、朝9時、毎年恒例の紅花種蒔である「播種祭」が開催される。テキスタイルコースの学生が中心となって、教養ゼミナール「紅花クラス」、こども芸術大学からも、生徒や家族が参加する。教職員、全学の学生の参加もできる。畑である「染料博物館」に、長靴やつなぎなど、汚れて良い服装で集合して実施する。雨の場合には、かっぱ等の準備も頼む。山形市高瀬地区の紅花農家の方々も参加する。
 私は卒業生に花の種を贈ることがあるが、それを見事に咲かせてほしいと願い、卒業生自身も大きく成長してほしいという願いからであるが、収穫しておいた種が足りないときもある。

卒業の祝に足りず花の種 和夫

 

播種祭の始まりはラジオ体操から
テキスタイルコースの辻けい教授
こどもたちと保護者、教職員や近隣住民も参加
播種祭の最後には蒔いた種にたっぷりの水をやる

[文:尾池和夫・写真:高橋保世(メインカット:4月12日  東北芸術工科大学にて撮影)]

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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