COLUMN2017.10.11

京都アート教育

秋祭と粟田神社の大燈呂 -瓜生山歳時記#14

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 単に「祭」というと夏の季語で、古くは、祭は京都の上賀茂神社、下鴨神社の葵祭のことを指していた。夏の祭は、祭太鼓、祭笛、祭囃子、山車、神輿とたくさんの傍題でも俳句に詠まれている。
 秋祭は春祭と対になっている。春の祭が豊作祈願する祭であるのに対して、秋の祭は、収穫後、神に感謝し、田を守ってくれていた神が、山に帰っていくのを送るための里祭である。里祭、村祭、浦祭、在祭が傍題として歳時記に載っている。
 秋祭の御輿も、かけ声とともに村や町を移動する。京都の吉田神社では、御神輿さんが、「ホイットホイット、ヨーサ」と練り歩く。こども御輿も京都大学の近くを通る。「サイヨレ」とうかけ声もあり、「幸寄れ」という意味だという。

海沿の道に灯が点き秋まつり  大串 章

 瓜生山学園の人間館の1階では、9月の「京造ねぶた」の後、同じような作業が始まる。粟田神社の祭のための大燈呂の制作である。10月7日、小雨の中を、レインコートを着せられた大燈呂が、大階段を降りてトラックで運ばれた。粟田神社では7日、やはり瓜生山学園で活動するグループによる石見神楽が奉納され、8日の夕刻に夜渡り神事の行列、9日には神幸祭と還幸祭、15日には例大祭が行われる。
 粟田祭で1832年以来途絶えていた粟田大燈呂が、瓜生山学園の学生たちの協力で2008年に復活した。今年は京都造形芸術大学と京都文化日本語学校の学生たち30名が参加して制作した。夜渡り神事では、闇夜に光る粟田大燈呂が並び、からくり仕掛けで動く大燈呂に参拝者たちが感動の声をあげる場面も見られた。
 今年の「京造ねぶた」で学長賞、在京都フランス総領事賞の両方を受賞した「ホッキョクグマ」が、10月6日のニュイ・ブランシュ(白夜祭)で、アンスティチュ・フランセ関西の庭に展示された。また、横浜のカップヌードルミュージアムに置かれた2013年の「カップヌードル」ねぶたも、すでに400万人の人たちに見てもらえたという。

浦々の神に行きあふ秋日和     和夫

「京造ねぶた」とちがい彩色が施される
有志の学生たちがキャンパスで制作
引き手となるのも学生たち
夕闇に包まれるころねぶたに明かりが灯る
巨大なねぶたの巡行は圧巻の一言
多くの観光客がねぶたを囲んでため息をもらす

[文:尾池和夫・写真:高橋保世(制作風景は10月7日京都造形芸術大学瓜生山キャンパスにて撮影、巡行のようすは10月8日に行われた粟田神社「夜渡神事」にて撮影)]

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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