COLUMN2017.04.12

京都舞台

都をどり in 春秋座 ―瓜生山歳時記 #8

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 毎年4月、京都祇園花見小路にある祇園甲部歌舞練場で、舞妓さんや芸妓さんたちが絢爛豪華な踊りの舞台を見せる。「都をどりはー」「ヨーイヤァーサー」という独特の掛け声で知られている。明治5年からの長い歴史がある。明治維新で東京へ遷都したあと京都の衰退の危機感がもとになって掲げられた政策が、京都の伝統を保ちながら近代都市を建設しようというものであった。その一つとして博覧会が企画され、余興に祇園の芸舞妓のお茶と歌舞を公開するという案が実現し、第1回「都をどり」が1872( 明治5)年、祇園新橋小堀の松の家で開催された。80日間、舞方32名、地方11名、囃子方10名、計53名が、7組7日交替で演じたという。

都をどり観給ふ母を見てゐたり  大串 章

 2017年の都をどりは、「都をどり in 春秋座」としてポスターを飾った。今までの都をどりの開催会場である祇園新地甲部歌舞練場が、いよいよ耐震対策に着手することになり、2016年の「温習会」をもって一時休館とすると決定した。そのために、2017年の公演を京都造形芸術大学の劇場である京都芸術劇場春秋座に移したのである。春秋座の舞台は、廻り舞台や花道、すっぽんなど、歌舞伎のための設備を持っており、その設備を大胆に活用され、かなり新しい演出の都をどりとなる。
 京舞井上流を創始した、長州浪人の娘、井上サトは初世井上八千代となった。近衛家に仕えてあらゆる芸能の基本を取り入れて井上流が生み出されという。それを磨き上げて伝える現在の家元、五世井上八千代が、春秋座での都をどりに挑戦するのである。

大学に都をどりの茶席かな     和夫

 

<文:尾池和夫、写真:高橋保世>

春秋座ならではの回り盆や片側のみの花道を利用した演出が展開された

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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