COLUMN2016.10.12

京都

佞武多と十三重の石塔 ―瓜生山歳時記 #2

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  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 ねぶた祭あるいはねぶたは秋の季語である。佞武多と標記される。青森の代表的な行事で、青森市や弘前市で8月初めに行われる。ねぶたは睡魔のことであると言われる。収穫を前にして睡魔を防ぐための祭だという。青森では「ねぶた」と呼ばれる舞伎人形灯籠、弘前では「ねぷた」と呼ばれて扇灯籠が主役となる。

ねぷた絵の義経抱かれまだ赤子      辻 桃子

 京都造形芸術大学では毎年1回生が全員参加でねぶたを制作展示する。2016年度のねぶたの課題は「刻」。21基の力作がぎりぎりまでに見事に仕上がり、9月14日夕刻、点灯式が行われた。その感激いまだ覚めやらぬ中、春秋座で表彰式があり、学長賞には「光らせたいもの」が選ばれ、その他多数の賞が発表されて歓声が上がった。
 今年から新設された青森市長賞は、青森からねぶた職人が審査に参加して、「コントラバス」が選ばれた。楽器の木の肌まで表現された技術が評価された。青森市との間には総括協定が締結されており、交流が続く。京都造形芸術大学の学生たちの作品が今年、青森市内で展示され、また「写真展京造ねぶたの軌跡」も開催された。
 2016年度の学長賞に選ばれた作品は体育館の舞台に設置されていた。その窓の外には十三重の石塔が建っている。学園の創設者である故徳山詳直前理事長が、その想いを込めて建立した塔で、瓜生山に眠る霊が祀られ、学園の基本理念の象徴の石塔である。

石塔の見守る佞武多点灯す          和夫
 

学長賞作品<光らせたいもの>
青森市長賞作品<コントラバス>
瓜生山に建つ十三重の石塔

 

<文:尾池和夫、写真:高橋保世>

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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