COLUMN2017.05.09

京都文芸

常磐木落葉を載せた大階段 -瓜生山歳時記 #9

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  • 尾池和夫
  • 高橋 保世

 常磐木落葉は初夏の季語である。杉落葉、樫落葉、椎落葉、樟落葉などが詠まれ、総称して夏落葉ともいう。初夏に新らしい葉が出始めると、古葉がはらはらと落ちる。若葉も初夏の季語で、夏落葉が木の種類で詠まれるのと違って、若葉はその存在する環境を詠むことが多く、傍題には谷若葉、里若葉、山若葉、若葉風、若葉雨、若葉寒、若葉冷など、若葉が置かれる状況を示す季語がたくさんある。春に芽吹いた木々が五月ごろに新葉を拡げて若々しい緑を見せる。もちろん柿若葉、蔦若葉など、植物の種類を冠しても季語としている。
 その他、初夏には新樹、青葉、新緑、万緑というような季語もあり、日本列島の初夏には、北から南まで植物の力強い姿が見られる。

  いつまでも樟落葉掃く音つづく    山口青邨

 樟は大学のキャンパスによく見られる。大学のシンボルになっている場合も多い。県や市のシンボルに選ばれる例もある。佐賀県の木が樟で県の花が樟の花である。佐賀県や大分県には推定樹齢3000年という樟の巨木がある。大垣市の緑のマークも樟、磐田市の木も樟で、JR磐田駅の県指定天然記念物、善導寺の大樟は、推定樹齢約700年だという。熱海市木宮木の宮神社の樟は樹齢2000年と言われており、わざわざ見に行ったことがある。
 京都市内では、神宮道から円山公園へ抜ける途中に、青蓮院門跡の樹齢800年と推定される大樟がある。時計台の前にある樟がシンボルになっている京都大学では、エンブレムに樟をデザインして使用している。正門横のカフェの名も「カンフォーラ」である。
 「僕たちの目の前には、59段の架け橋、ひとつ階段を上ると、未来が近づいてくる」と、入学式で唱った「59段の架け橋」の、秋元康元副学長作詞による瓜生山学園学園歌は、大階段を見上げると自然に口をついて出てくる歌詞であるが、この季節の早朝には、階段の樟落葉を丁寧に掃いている職員に朝の挨拶をする。卒業した先輩たちと新入生の登場を象徴するように、若葉の季節には大階段が新緑と落葉で覆われる。

  実習は箒とばけつ樟落葉         和夫

<文:尾池和夫、写真:高橋保世>

 

  • 尾池和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、2038年南海トラフの巨大地震(マニュアルハウス)、あっ! 地球が・・・ 漫画による宇宙の始まりから近未来の破局噴火まで(マニュアルハウス)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。京都造形芸術大学 美術工芸学科 現代美術・写真コース2014年度入学。フォトグラファーを目指して学内、外での撮影活動を行っている。

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