COLUMN2017.03.07

京都アート

春風と大階段の「風の環」 ―瓜生山歳時記 #7

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  • 尾池和夫
  • 高橋 保世

 中緯度にある日本列島では、四季折々、減り張りのある変化がある。春風、東風、貝寄風、涅槃西風、春一番、風光る、春疾風など、春のさまざまな風の様子が季語によって表される。春風は暖かくなってのどかに吹く風、東風は東から吹くやや荒い早春の風、強東風というと激しい風になる。貝寄風は、旧暦二月二十日前後に吹く季節風で、大阪四天王寺の聖霊会(しようりようえ)の舞台の花を風で吹き寄せられた貝殻で作ったことによる。涅槃西風は彼岸西風ともいい、涅槃会の前後に吹く西風で、西方浄土からのお迎えの風で、この風で寒さが戻る。

  貝寄風や難波の蘆も葭も角     山口青邨

 瓜生山学園の59段の大階段の途中には武藤順九製作の「風の環2011 -絆- 」が設置されている。イタリアの山から切り出された大理石によるこの彫刻は、石巻市に整備される震災復興祈念公園に2020年設置を目指している「風の環」の3分の1モデルである。「風の環」はすでに完成して彫刻の町ピエトラサンタのアトリエから日本に向かって船出した。
 この事業「風の環プロジェクト」を一般社団法人「風の環」が支援している。武藤順九の日本における芸術活動の拠点が京都にあり、彼の思いを大きくひろげるために「風の環3.11絆プロジェクト」実行委員会が活動している。京都市は復興支援プロジェクトを行っているが、中でも特別支援プロジェクトとして、2014年2月から京都マラソンを通じて、このプロジェクトの支援を全国に先がけて呼びかけている。人々の鎮魂と追悼の思いと世界から寄せられた愛を、モニュメントの設置とともに後世に伝えたいと、私も実行委員長としてこのプロジェクトを応援している。

  春風や銀のハートの耳飾       和夫

 

<文:尾池和夫、写真:高橋保世>

  • 尾池和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、2038年南海トラフの巨大地震(マニュアルハウス)、あっ! 地球が・・・ 漫画による宇宙の始まりから近未来の破局噴火まで(マニュアルハウス)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。京都造形芸術大学 美術工芸学科 現代美術・写真コース2014年度入学。フォトグラファーを目指して学内、外での撮影活動を行っている。

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