SPECIAL TOPIC2022.03.31

教育

一つひとつの壁を乗り越えてきた一年。― 学びを止めないために学園が取り組んだこと

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  • 京都芸術大学 広報課

新型コロナウイルス感染症拡大が未だ予断を許さない状況が続いた2021年度。引き続き、学生が、教職員が、学びを止めないためにさまざまな工夫と努力を重ね、一つひとつの壁を乗り越えてきた一年でした。

春からの取り組みの一端を、特に大学の通学課程のうち、ごく一部とはなりますが、広報課が取材させていただいた中で見聞きしたことを踏まえ、振り返りたいと思います。

 

2021年 春

超えるカタチ、継ぐココロ。― 京都芸術大学 開学30周年記念「瓜生山ねぶた」プロジェクト


そのねぶたは、あらゆる意味で「これまでと違う」ものでした。2021年3月30日の点灯式に登場したのは、「…なんだろう?」と誰もが首をひねる奇妙なデザイン。しかも、「中に入れる」という複雑な構造。いったいなぜ、こんな形となったのか ――。

そもそも「ねぶた制作」とは、2007年度からつづく1年生を対象としたワークショップ型授業のひとつ。それが2020年度はコロナ禍で中止となり、後期授業も終わろうとする頃、「開学30周年記念となる “瓜生山ねぶた” を」と、大学法人部門からリアルワーク(仕事としての制作)の依頼が入りました。急きょ集められたメンバーで、授業ではなく春休み期間に制作するという異例の状況で生みだされたのが、この作品でした。

超えるカタチ、継ぐココロ。― 京都芸術大学 開学30周年記念「瓜生山ねぶた」プロジェクト
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/828

 

初めてって不安だらけ… でも大丈夫!― 先輩たちによる学科の学びや一人暮らしのための相談会


京都芸術大学通学部は13学科23コースに分かれており、学べることも様々です。昨年の新入生歓迎会では、初めての大学生活で不安を抱える1年生に「素敵な学生生活のスタートを」と、学生会が主催する相談会と交流会が行われました。

先輩たちとの相談会は人間館1階にあるカフェの横のスペースにブースが設けられ、開催。1年生が参加しやすく気軽に先輩や先生と話ができるよう、さまざまな工夫が施されており、最初は緊張の面持ちの1年生も徐々に笑顔になり不安が解けていくさまが見て取れました。「こんな先輩がいてよかったな」「先輩も同じように不安だったんですね」と思っていただけたはず。

初めてって不安だらけ… でも大丈夫!― 先輩たちによる学科の学びや一人暮らしのための相談会
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/830

 

創造的なものの見方、考え方を身につける。 ― マンデイプロジェクト


通学課程のもっとも特徴的な授業といえば、1年生の前期、毎週月曜日に行われている授業「マンデイプロジェクト」ではないでしょうか(昨年より1,2年生の授業に)。
2007年度から始まったこちらの授業では、13学科23コースの1年生が全学科混合でクラスを編成し、毎週月曜日にワークショップ形式の授業を行っています。それゆえ、通称「マンデイプロジェクト」と言われています。毎週さまざまな課題にクラス単位で取り組み、すべての基礎となる教養を身につけることで、それぞれの専門領域での学びを深めていくための土台を育む授業です。

マンデイプロジェクトで行われるワークショップは、大学オリジナルで開発したものを中心に、その数なんと「100以上」。その中から担当教員がワークを選び、各々のアレンジを加えて行われます。中には、新たにワークを開発して行うことも。そのようなワークを通じて、グループでさまざまな課題を発見し、その問いに対する答えを探るために必要なものの考え方、見方を学んでいるのです。
感染症対策を講じつつ、対面での授業が開講された昨年度のマンデイプロジェクトの様子から、いくつかのワークショップ内容をご紹介します。

創造的なものの見方、考え方を身につける。 ― マンデイプロジェクト
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/882

 

 

2021年 夏

私たちの夏が始まる ― 瓜生山大作戦~夏の懐祭り~


学内に突如現れた「瓜生山大作戦 ~夏の懐祭り(なつのなつまつり)~」のポスター。ゆかたに屋台にビンゴ… どうやら誰かが夏祭りを企画しているらしい。そんな噂を嗅ぎつけて、8/7(土)に開催された、イベントの様子を追ってみました。ふたを開けてみると、主催者も驚いたと言うほどの真夏のビックイベントとなりました。

(撮影:中山博喜)

このイベントを企画・運営したのは、学生有志団体「おCHA☆会」のみなさん。突然ふわっと現れて、突然学園を盛り上げた、謎に満ちた団体を調査するべく、メンバーの皆さんに企画段階から当日の運営まで詳しくお話をお伺いしました。

私たちの夏が始まる ― 瓜生山大作戦~夏の懐祭り~
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/887

 

燃える伝統を、全国の視聴者へ。 NHK『京都五山送り火』生中継のセットを舞台芸術学科の学生有志が製作!


「この夏のすべてを注ぎこんだけど、やってよかった!」。放送から一週間以上たっても、まだ残り火が体内にくすぶっているかのよう。8月16日に本学で行われたNHK『京都五山送り火』生中継、その舞台美術セットを製作した、舞台芸術学科デザインコース学生たちの言葉です。「中継する場所だけを借りたい」というNHKの申し出をきっかけに、産学連携のプロジェクトへと発展。番組テーマである「伝統を次の世代へ」の実践例として、学生が放送局といっしょに舞台美術をつくりあげることになりました。

(撮影:吉見崚)

“舞台”には慣れている上級生も、“テレビ”はまったく未知の世界。「そもそも、送り火について何も知らない私たちが、そんな大役を任されていいのか」。それぞれに悩み、考え、情熱を注ぐことになった舞台裏のストーリーを学生たちに伺いました。

燃える伝統を、全国の視聴者へ。 NHK『京都五山送り火』生中継のセットを舞台芸術学科の学生有志が製作!
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/888

 

昨年公演中止となった悔しさをバネに、いまダンスで想いを届けたい。― 舞台芸術学科・2021年度卒業制作公演「聲」


本学の舞台芸術学科は、舞台芸術を学ぶことのできる京都で唯一の4年制の学科。卒業制作公演では、4年間の集大成として、企画から作品を上演するまでをすべて学生が行います。公演第一弾を飾ったのは、ダンス公演「聲」。実は、この公演はメンバーにとって2回目の公演になりました。

前年3月に控えていた第1回公演は、新型コロナウイルス感染症拡大のため、本番を翌日に控えながらも中止が決定。その頃はまだ感染症が非日常的なもので「またすぐに元通りになるだろう」と淡い期待を抱いていたとか。
「自分たちの内に秘めた舞台やダンスへの想いを、ラスト1年でどうにか形にして皆様へお届けしたい」という想いを受け、特別に卒業制作公演枠に入れていただくことになったと言います。

昨年公演中止となった悔しさをバネに、いまダンスで想いを届けたい。― 舞台芸術学科・2021年度卒業制作公演「聲」
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/868

 

白く輝くチームの力!瓜生山ねぶた2021受賞作品紹介


2007年度から始まった「瓜生山ねぶた」制作は、さまざまなワークショップに取り組む基礎力養成プログラム「マンデイプロジェクト」の集大成。8月末からの約2週間で “ねぶた” を制作する本学の名物プログラムです。前期の学びをすべて活かし、集団での短期集中での制作、アイデアのクオリティ、ディテールへのこだわりなど、チームで高いハードルをクリアしていきながら、今年度は「SDGs」をテーマに学科横断の20クラス、820名の学生が取り組みました。

(撮影:吉見崚)

「5… 4… 3… 2… 1!」 静まり返った場内にカウントダウンの声が響きます。2021年9月15日(水)18時頃、「点灯!」の合図とともに一斉に浮かび上がった白く光り輝く“ねぶた” を前に、学生たちの拍手が響き渡りました。感染症防止対策のため、例年のように歓声を上げたり、抱き合ったりすることはできません。しかし、2年ぶりにさまざまな困難を乗り越えて完成へとたどり着いた今年度。その歓声は今まででもっとも大きく、心震える瞬間となりました。

白く輝くチームの力!瓜生山ねぶた2021受賞作品紹介
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/890

泣いて笑って、最後はAll Right! 「瓜生山ねぶた2021」点灯式・表彰式
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/895

 

 

2021年 秋

2年ぶりの巡行は、晴れのち感涙!粟田大燈呂プロジェクト2021


そのプロジェクト最大の成果は、「やっと日常が帰ってきた」という地元の方々の笑顔。10月23日、東山の粟田神社でおこなわれた粟田祭の「夜渡り神事行列」で、色鮮やかな大燈呂(山車)が2年ぶりに町を輝かせました。

この大燈呂は、いま世にある「ねぶた」の原型ともいわれる歴史深いもの。粟田神社から依頼を受け、本学の学生たちが約180年ぶりに復活させ、制作と神事への参加をつづけて14年目。コロナ禍で巡行が中止された去年につづき、今年も先が見えないなかでの制作でしたが、それでも38名のメンバーが「瓜生山ねぶた」で磨いた技術や経験を惜しみなく注いだ結果、素晴らしい大作が生まれました。

2年ぶりの巡行は、晴れのち感涙!粟田大燈呂プロジェクト2021
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/918

 

日本全国、海外で活躍する卒業生たちと「つなぐ」。― 京都芸術大学ホームカミングデー2021 オンラインで開催!


10月30日(土)京都芸術大学30周年記念事業とホームカミングデーが開催されました。今年度は京都芸術大学ホームカミングデー史上初のオンラインでの開催。今年のテーマは「つなぐ」。オンラインだから、京都にいなくても、日本中どこにいても、もちろん世界中からでも、遠方で集まるのが難しい卒業生とつながります。

(撮影:顧剣亨)

YouTubeメインチャンネルでは京都芸術大学30周年記念事業として京舞井上流五世家元 井上八千代氏による祝舞や裏千家15代・前家元 千玄室氏による講演のほか、大学が設けている松陰芸術賞と瓜生山学園賞の授与式、ダンスライブ、懇親会の生中継などを配信します。このほか卒業生たちはWeb会議システムZoomを用いた懇親会に参加したり、ウェビナーによる特別講義を聴講します。

日本全国、海外で活躍する卒業生たちと「つなぐ」。― 京都芸術大学ホームカミングデー2021 オンラインで開催!
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/920

 

 

2021年 冬

Merry Christmas!― 学生が学生のために届けるクリスマスプレゼント。


京都芸術大学の年末は、クリスマスイベントが目白押し!慌ただしくも、楽しい年の瀬になりました。12月21日(火)から24日(金)にかけて学内のあちらこちらで行われたイベントは、なんとすべて学生の自主企画によるもの。そのどれもが“共に学ぶ仲間と楽しい時間を過ごしたい”、“学園を盛り上げたい”、そんな想いから企画されたものでした。
駆け足ながら、各団体のクリスマスイベントの様子を瓜生通信でレポートします!

https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/936

夢を掴みとれ!『FAME Jr.』― 舞台芸術学科 初のミュージカル公演


情報解禁と同時に、学内でじわじわと話題になった舞台芸術学科の3年生によるミュージカル授業発表公演。実は今回の公演は、舞台芸術学科にとって初のミュージカルへの挑戦でした。

舞台芸術学科は2007年度に舞台芸術学科を設立して以来、 ストレートプレイ(演劇)に特化して日頃のトレーニングの成果を実際の劇場や舞台で発表公演として披露してきましたが、2019年度の入学生から新たにミュージカルをカリキュラムに導入しました。
彼らが3年生となった今、 入学時から演技に加えて取り組んできたダンスやボーカルの集大成として学科初のミュージカル公演に挑むことになりました。

(撮影:顧剣亨)

学科初のミュージカル公演の演目に選んだのは、『FAME Jr.』。『FAME Jr.』は、1980年に世界的大ヒットとなった映画『FAME』(2009年にリメイク)の舞台版です。
ニューヨークはマンハッタンのブロードウェイに実在するハイスクール・オブ・パフォーミング(舞台芸術専門高等学校)を舞台に、俳優やダンサー、ミュージシャンを夢見る高校生たちの等身大の姿を描いたミュージカルです。夢が大きいだけに悩みも大きい彼らの姿は、舞台芸術学科の学生たちそのものを映し出しているようにも捉えられます。

夢を掴みとれ!『FAME Jr.』― 舞台芸術学科 初のミュージカル公演
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/955

 

アートフェアとしても展開!約800点もの作品をキャンパス全体に展示 ― 2021年度 京都芸術大学卒業展・大学院修了展


2021年度 京都芸術大学卒業展・大学院修了展が2022年2月5日(土)から開幕し、学部の4年間・大学院の2年間の集大成である卒業制作や研究成果を京都・瓜生山キャンパスにて13日(日)まで展示しました。

外部の美術館を借用した展示では、設営期間・作品サイズ・展示方法に大きな制約が伴いますが、大学のキャンパスを利用した展示では、大小様々な教室や体育館、テラスなど屋内外と問わないスペースの特性を活かした作品プランを練ることができ、自由で大胆な展示設営が可能です。2010年度よりスタートしたこの展示形式は、常に新しい表現の模索を続け、毎年進化を遂げています。

卒業・修了を迎えた皆さんのハレの場である「卒業展・大学院修了展」。密にならない来場者数を算出し、事前予約制での開催となりました。さまざまな困難を乗り越え、展覧会にたどり着くことができた4年生、修士2年生の皆さん。会期中、さまざまな学生に話を伺いましたが、コロナ禍を言い訳にするのではなく、むしろ「このような状況だからこそできた」と話す学生も。

アートフェアとしても展開!約800点もの作品をキャンパス全体に展示 ― 2021年度 京都芸術大学卒業展・大学院修了展
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/950

 

混迷の時代を切り拓く、多国籍、異文化が揃うアート実践の場「KUA ANNUAL 2022 in Cm | ゴースト、迷宮、そして多元宇宙」東京展


「KUA ANNUAL」は、第一線で活躍するキュレーターを招聘し、キュレーターの提示したテーマに応答する形で、全大学院生・学部生を対象に幅広くプランを集い、制作指導と対話を続けながら実際の展覧会をつくり上げていく、実践的なプログラムです。今年度は全学生から87組106名の応募があり、15組18名の作家が選出。

2022年2月24日(木)から26日(土)まで、学生選抜展「KUA ANNUAL 2022 in Cm | ゴースト、迷宮、そして多元宇宙」が東京都美術館で開催され、800名を超える方々にお越しいただきました。

https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/967

(撮影:顧剣亨)

 

 

2022年 春

すべての人に開かれた芸術の結晶がここに。― 2021年度 京都芸術大学 通信教育課程 卒業・修了制作展


2021年度 京都芸術大学 通信教育課程 卒業・修了制作展が2022年3月13日(日)より開催されました。卒業生・修了生の集大成である卒業制作や研究成果を京都・瓜生山キャンパスにて展示。学部、大学院合わせて約800点の作品が、瓜生山キャンパス人間館NA棟1F〜3F、ギャルリ・オーブ、芸術館に所狭しと展示されています。

実は通信教育課程 卒業・修了制作展の対面での開催は3年ぶりとなります。今年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、受付時間ごとに来場者数の制限を設け、事前予約制という形で実施にいたりました。学生にとっても、教職員にとっても、ようやく対面での開催が叶った今年度の卒業・修了制作展。喜びもひとしおです。

すべての人に開かれた芸術の結晶がここに。― 2021年度 京都芸術大学 通信教育課程 卒業・修了制作展
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/965

 

かけがえのない宝物を胸に。― 2021年度 京都芸術大学 学位授与式・卒業式


2022年3月19日(土)京都・瓜生山キャンパスにて、通学課程および通信教育課程の学位授与式・卒業式が執り行われ、通学課程からは博士5名、修士73名、学士841名が、通信教育課程からは修士102名、学士690名がそれぞれ学位を授与されました。

卒業生・修了生のみなさんは、大学生活の中でさまざまな出来事があったと思います。授業や課題で学んだこと、自主制作や課外活動に励んだこと、友達や先生と語り合ったこと。振り返ると大学で過ごした時間は宝物のように感じられます。かけがえのない大学生活の思い出を胸に、卒業生・修了生はこれから始まる新しい世界への旅に巣立っていきました。

かけがえのない宝物を胸に。― 2021年度 京都芸術大学 学位授与式・卒業式
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/972

 

 

感染症拡大の中にあっても、さまざまな工夫と努力によって、学生たちの制作活動が続いています。

ある先生は、こう話します。
「『できないこと』から『できること』を発見してほしい。芸術の歴史は、さまざまな制約とそれを乗りこえる新しい発想の誕生の繰り返しだった」。

このように、感染症の猛威の中で状況を嘆くのではなく、新たな学びの場を構築し、学びを止めないために個々人が「何ができるか」を考えねばならないということを、私たちは学びました。個のクリエイティビティが問われる時代、そんな画期に私たちはいます。

 

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