REPORT2021.09.10

教育

創造的なものの見方、考え方を身につける。 ― マンデイプロジェクト

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  • 京都芸術大学 広報課

通学課程のもっとも特徴的な授業といえば、一年生の前期、毎週月曜日に行われている授業「マンデイプロジェクト」ではないでしょうか。

2007年度より始まったこちらの授業では、13学科・23コースの一年生が全学科混合でクラスを編成し、毎週月曜日にワークショップ形式の授業を行っています。それゆえ、通称「マンデイプロジェクト」と言われています。毎週さまざまな課題にクラス単位で取り組み、すべての基礎となる教養を身につけることで、それぞれの専門領域での学びを深めていくための土台を育む授業です。

 

そして8月末からの夏期集中期間には、約2週間かけて、与えられたテーマをもとに考えた巨大な「瓜生山ねぶた」の制作に取り組みます。専門の異なる個々の力をいかに使えば大きな仕事が実現できるのか。真剣に向き合い、試行錯誤を繰り返しながら、学生たちが大きく成長できるプログラムです。

クリエイティブワークショップ1

「正解のない問いに挑む:考え方を考え、つくり方をつくる」

授業概要
芸術大学として専門教育を受けるための基盤をつくり、社会の様々な領域や
場面で求められる力の基礎を育てることを目的とします。
創造的な課題を設定して、解決するアイデア、方法をデザインしたり、正解
のない問いに挑みます。マンデイワークショップは、以下のテーマ別に課題
設定したワークショップを幅広く実施することで、答えを導き出す思考力、
主体的学習態度、体験を言語化するなど人間力と社会人基礎力を養います。

ワークショップテーマ
考える(思索、ことば、構想)
知る(知識、生活、コミュニケーション)
つくる(造形、空間、観察)
感じる(感性、身体、体感)

昨年は新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、マンデイプロジェクトは開講中止に。そこで立ち上がったのが、マンデイプロジェクトを経験した当時2年生のLA(ラーニングアシスタント)20名と、アーカイヴ担当の4名。

彼らは「自分たちが1年生の頃に得た、かけがえのない時間を後輩たちにも少しでも味わってほしい」と、全4日間のオンラインワークショップを開催したのです。
4日間のプロジェクトを無事に終えた学生たちへのインタビュー記事はこちら。

学びを止めない、あきらめない。 ― 4日間のONDAY WORKSHOPレポート
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/765


感染症対策を講じつつ、対面での授業が開講された今年度。学生たちは現在、「クリエイティブワークショップ1」を終え、「クリエイティブワークショップ2」ねぶた制作の真っ只中。

では、今年度のマンデイプロジェクトの様子から、いくつかのワークショップ内容をご紹介します。

 

ワークショップは、その数100以上。

マンデイプロジェクトで行われるワークショップは、大学オリジナルで開発したものを中心に、その数なんと「100以上」。その中から担当教員がワークを選び、各々のアレンジを加えて行われます。中には、新たにワークを開発して行うことも。そのようなワークを通じて、グループでさまざまな課題を発見し、その問いに対する答えを探るために必要なものの考え方、見方を学んでいるのです。

 

マルサンカクシカク

階段や通路など奥行きや凹凸のある空間に、線や絵、記号などを描きます。それをある一点から写真に撮ることで、三次元の空間を二次元として切り取り、観る側に視覚的錯覚を引き起こすことを試みます。

 

バルーン

養生シートをつなぎ合わせ、巨大なモニュメントをつくるというもの。組織としてまとまって一つのプロジェクトを成し遂げるときに必要なものとは?スケジュール管理や役割分担、メンバー同士の協力が求められます。
このクラスは、食パン袋などを留めるバッグ・クロージャーをモチーフにしたそう。なかなか高度な形です。
こちらは「クリオネ」。下準備がとっても丁寧で、慌てず丁寧な仕事。そして一気に膨らませて、その姿を現しました。
こちらのクラスの推しポイントは「中に入れる」。
すり鉢状の教室の構造をうまく活用した、素晴らしい発想です。

 

ペーパーファッションショー

「切る」「折る」「もむ」「貼り付ける」などの手法を駆使して、紙と針金のみを用いてドレスを制作。完成後にファッションショーも演出するというもの。演出や音楽なども自分たちで手掛けます。紙のできること、紙でしかできないことを探る名物授業です。
どのチームもディテールがとっても丁寧で、そのテクスチャーが美しい印影を生み出していました。

 

Room 0(ゼロ)

白い紙を使って普段授業で使っている教室を白くしていきます。天井、床、壁だけでなく、机、椅子、ドアノブなど細かな部分まで。着ている服も白で統一することで、まるで別次元であるかのように感じることができ、色の持つ力を実感します。
こちらのクラスでは、今年は対面とオンラインとで2チームに別れていることを踏まえ、先週は左半分を今週は右半分を真っ白にし、あとで合成するそう。なかなかのアイデアです。かばんの仕事が特に丁寧。
こちらのクラスでは、白い教室の窓に赤と青のビニールを貼って、幻想的な空間をつくりあげていました。赤と青と、そしてまじりあう境界。

 

タワー

単一の素材を用いて、高さのある構造物を制作。以前は「紙」でしたが、ここ数年は「割り箸」。安定性に留まらず、形の面白さやアンバランスさも楽しみつつ。
こちらのクラスでは「パーフェクト・タワー」と題し、自分たちが思う「パーフェクトとは?」を表現。

 

サインペンを一本使い切る

サインペンを一本使い切るという、相当な根気がいる、まるで修行のようなワークショップ。2,3時間から、中には17時間かけた学生もいたそう。

 

パターン

テーマに基づいて各自がさまざまなモノを持ち寄り並べていきます。それぞれの感性で持ち寄ってきたモノを空間的に配置することで、一見無意味に見えるモノたちをどう組み合わせれば意味あるものになるのか、見つけ出します。

 

以下は、担当教員オリジナルのちょっと変わり種のワークショップです。

 

Q興し

Qクラスだけに、巨大な「Qちゃん」を制作。「岩」というワークショップをアレンジし、「引き興し(ひきおこし)」の手法を使ったもの。ダンボールで表裏面をそれぞれ作り、棺桶のように重ねて制作されています。引き興して立ち上げる時にどのように力がかかるのか、高度な計算を要します。思ったよりも難しいはずですが、無事完成しました。

 

ラジオドラマ

映画美術が専門の嵩村裕司先生のクラスでは、チームに別れての「ラジオ放送」を。「音だけ」の表現ですし、その企画はなかなか難しいもの。

 

オンライン海外旅行

4,5人一組のグループで、オンラインで想像上の海外旅行にでかけ、旅の報告にまとめるというもの。想像力を思いっきり羽ばたかせている様子が伺えます。ほとんどのグループが、超高級ホテルに宿泊したらしいです。

 

エアー・大玉転がし

これが意外と、すっごく盛り上がります。ゴールで玉を受け止める、先生のリアクションがすごく良かったです。

 

集団での “ねぶた” 制作で一人ひとりがレベルアップ。

そしてこのあと9月の約2週間、集中して1クラス1基ずつの “ねぶた” を制作する名物プログラムが始まります。前期の学びを全て活かし、集団での長期制作、アイデアのクオリティ、ディテールへのこだわりなど、チームで高いハードルをクリアしていきながら完成を目指します。
今年度はどのような作品が見られるのか、乞うご期待ください。

制作8日目の夕刻の様子。

 

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