京都芸術大学 舞台芸術学科の卒業制作公演が2021年度も開催されます。
本学の舞台芸術学科は、舞台芸術を学ぶことのできる京都で唯一の4年制の学科です。同学科には、演技や演出について学ぶ演技・演出コースと舞台美術や音響、照明などのデザインやスタッフワーク全般について学ぶ舞台デザインコースの2コースがあります。両コースとも京都芸術劇場 春秋座やstudio21において演劇やダンスなど多様なジャンルの発表公演を重ねることで実践的に舞台芸術を学んでいます。
卒業制作公演では、4年間の集大成として、企画から作品を上演するまでをすべて学生が行います。今年度はダンス作品や学生自らが執筆した書き下ろし作品、そして名作などバラエティーに富んだ4作品を皆様にお届けします。
ダンス公演「聲(こえ)」
公演第一弾を飾るのは、ダンス公演「聲」です。
本公演は、ダンスを表現方法とする学生で構成されたパフォーマンス団体「#(ハッシュタグ)」によるもので、脚本・振付・演出まですべて学生が行っています。
社会の縮図と言われる学校を舞台に、いじめを題材として13名のダンサーが演じます。物語は2人の女子生徒を中心に展開され、いじめの被害者、加害者、傍観者などそれぞれの登場人物の立場や心情、その移り変わりを身体をつかって表現します。
本公演のコンセプトは「発信する」。「私たちの手で私たちの世界をほんの少し変えることができるのなら、あの時感じた感情は歩き出すための一歩になる」というメッセージが込められており、この公演を見た人の背中をそっと後押しするような作品に仕上げました。
聲(こえ)
社会の縮図と言われる「学校」を舞台に、2人の女子生徒を中心として、登場人物全員の心情やその移り変わりを13名のダンサーが身体をつかって表現します。
日時 | 2021年9月5日(日) 18:00、6日(月) 13:30/18:00、7日(火) 13:30 |
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会場 | 京都芸術劇場 studio21(京都芸術大学内) |
上演時間 | 約60分 |
座席 | 全席指定席 |
料金 | 事前予約1,000円 |
チケット | 7月30日(金)19:00~ https://ticket.corich.jp/apply/113212/ |
前日に公演中止…前回の悔しさをバネに!
実は、この公演はメンバーにとって2回目の公演になります。昨年3月に控えていた第1回公演は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対策による政府からの要請により、本番を翌日に控えながらも中止が決定。約1年かけて準備してきた思い入れのある公演だったので悔しい気持ちもありましたが、その頃はまだ感染症が非日常的なものでした。「またすぐに元通りになるだろう」と淡い期待を抱いていたとか。
しかし、状況は好転することはなく、現在も感染症の影響で、演劇業界は思うような活動ができずにいます。そんな渦中でも時間は容赦なく過ぎてゆき、メンバーは今年4年生になり、学生生活も残り1 年を切りました。
メンバーの胸の内にあったのは、「自分たちの内に秘めた舞台やダンスへの想いを、ラスト1年でどうにか形にして皆様へお届けしたい」というもの。平井愛子教授に相談したところ、特別に卒業制作公演枠に入れてもらえることになり、第2回公演を実施するにいたりました。
ダンスの力を信じて
舞台芸術学科では、演技の幅を広げるために週に1度ダンスの授業を行います。そうした授業を受けていく中で、ダンスには演劇とはまた違った魅力があるということを強く感じたと話します。そこで、ダンスが主役になる舞台をつくりたいと思ったことが企画のはじまり。
だからこそ、約60分に及ぶこの公演には台詞や言葉はありません。「何かを伝えられるのは言葉だけではない、何かになりきれるのも芝居だけではない」。ダンスには、全身で表現するからこそ伝わる熱量や言葉を越える力があると信じているからです。あえて言葉を削ぐことで、ダンスの力を最大限に引き出します。
公演名である「聲」という言葉の由来は、楽器をたたいた際の音だとされています。足音、服の擦れる音、そして息遣いまで、言葉以外の「聲」があると解釈し、その「聲」をつかった表現を届けたいと言います。
立ちはだかる壁。クラウドファンディングに挑戦!
2回目の公演と言えども、それは順風満帆なものではありませんでした。実は、今回の公演は中止となった第一回公演の再上演ではなく、さらに内容を昇華させた新しい公演になっているのです。もともとメンバーにはダンス未経験者が多く、振付役が1年がかりでトレーニングしていたもの。平井愛子教授も「フォーメーションが複雑」だと話す演出のレベルに到達するために、踊りから1年離れてしまったメンバーは基礎部分から稽古する必要がありました。
また、活動再開と同時に、浮かび上がった問題がありました。それは制作費の調達。舞台には制作費に多額の費用がかかります。美術費、衣装代、感染症対策費…。
これまでは、主にお客様からいただくチケット料金で運営していましたが、感染症対策のための座席数の半減などにより、資金が調達しにくくなりました。
「ここまできて諦めたくない」。そんな思いを胸に、どうにかできないかと考えた結果、舞台芸術学科では初めてとなるクラウドファンディングに挑戦することにしました。2か月間もの間、準備と発信を続けた結果、たくさんの方々からの応援を受け、目標金額を大きく上回るご支援をしていただけたとのこと。「公演が始まる前からお客様とつながっているような感覚。期待に応えなきゃ、と身が引き締まる思いです」と語ります。
いま、想いを届けたい
昨年度は世界的にも、演劇や音楽などのライブ作品のあり方が問われる一年になりました。公演前日に中止を余儀なくされた経験から、より一層ライブで作品を上演する意味を問い直すことになりました。しかし、こんな情勢だったからこそ、公演を開催できる喜びやありがたさ、そして大変さを再認識したことも事実なのではないでしょうか。「賛否両論はありますが…」と慎重に言葉を選びながら、いまの思いの丈を次のように語ってくれました。
「この1 年、“不要不急”という言葉をたくさん聞きました。確かに、舞台は急を要するものではなく、無くなってしまっても生活に影響はないのかも知れません。でも、舞台は人生を豊かにしてくれます。目の前で繰り広げられる物語に感動したり、力をもらえたりします。こういうときだからこそ、その熱を肌で感じ、お客様と同じ時間を共有したいのです。私たちの精一杯の想いが皆様の元へ届きますように」。
座席は全席指定席となっており、満席になり次第、チケット予約を締め切るとのこと。ダンスへの思いにあふれた公演に、少しでも興味のある方はお早めにお申し込みください!
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