REPORT2022.03.15

すべての人に開かれた芸術の結晶がここに。― 2021年度 京都芸術大学 通信教育課程 卒業・修了制作展

edited by
  • 京都芸術大学 広報課

日差しもすっかりやわらかくなりましたね。2021年度 京都芸術大学 通信教育課程 卒業・修了制作展が2022年3月13日(日)から開幕しました!卒業生・修了生の集大成である卒業制作や研究成果を京都・瓜生山キャンパスにて20日(日)まで展示しています。学部、大学院合わせて約800点の作品が、瓜生山キャンパス人間館NA棟1F〜3F、ギャルリ・オーブ、芸術館に所狭しと展示されています。

藝術はつねに新しい ―通信教育部長 石神裕之

 春到来です。まずはご卒業、ご修了をされるみなさま、まことにおめでとうございます。ご家族、ご友人の方々にも心から祝福の気持ちをお伝えしたいと思います。
 藝術への志をもって入学された皆さんにとって、この二年間はとくに厳しい試練の月日であったものと思います。社会は新型コロナウイルスとの共存の日々に費やされ、当たり前の日常が跡形もなく消え去りました。
 図書館にも通えず、キャンパスで仲間と語り合うこともできない大学生活は、本当に孤独な学びの戦いであったかもしれません。
 しかし、こうして卒業・修了制作、卒業研究・学位論文をかたちにされた皆さんの挑戦と努力は、何者にも変えがたい経験であり、財産であると思います。どの作品、研究もいつにない輝きを放ち、自信に満ちあふれたものとなっています。
 「藝術はつねに新しい」とは、かの岡本太郎の言葉です。岡本は藝術とは同じ形式の繰り返しから生み出されるものではなく、いまを生きる人々の「瞬間瞬間の生きがい」や「自信」から表出されるもの。それが「藝術作品」なのだと述べています。つまり、今という時代だからこそ生み出し得るものが、藝術なのです。
 ウィズコロナの時代にあって、どんな新しい藝術が生み出されたのでしょうか。まずは皆さんの仲間が奮闘努力し創り上げた作品たちに向き合っていただければと思います。きっと一人ひとりの学びの営みと熱量を感じ取ることができるに違いありません。
 改めて、皆さんの挑戦と逞しさに心からの拍手をお送りするとともに、くれぐれも健康に留意されて、これからの人生をさらに実り豊かなものとされますように祈念いたしております。
 最後に卒業・修了制作展へご来場いただいた皆さん。我々通信教育課程の誇るこの素晴らしい成果を存分に堪能してください!

実は通信教育課程 卒業・修了制作展の対面での開催は3年ぶりとなります。今年度は、新型コロナウイルス感染症対策として、受付時間ごとに来場者数の制限を設け、事前予約制という形で実施にいたりました。学生にとっても、教職員にとっても、ようやく対面での開催が叶った今年度の卒業・修了制作展。喜びもひとしおです。

また、今年度はWeb卒業・修了制作展サイト(https://www.kyoto-art.ac.jp/t/graduationworks/2021/)を同時にオープン。遠くてキャンパスに行くことができない!など様々なご事情で来場が叶わない方、来場したけれど見逃した作品やもっと見たかった作品がある!という方は、Webサイトでじっくり鑑賞をお楽しみいただけます。
 

会場準備は、通信教育課程の教職員のチームワークが感じられる瞬間。会場となる教室の机や椅子を使用しない教室に移動させ、展示するためのスペースをつくります。ギャルリ・オーブでは、展示用パーテーションや照明を設置し、教員と職員で力を合わせて会場をつくりあげます。
卒業生・修了生の集大成を美しく展示できるように、汗をかきながら動き回る教職員の姿から卒業生への想いが伝わってきます。

通信教育課程の教職員総出で設営!


卒業生・修了生のみなさんは前日に会場入りし、たったの1日で搬入作業を行います。授業や課題、自主制作などを通して磨き上げたそれぞれの知識・技術・感性を大いに発揮した力作を、それぞれの展示スペースに設営。時間は限られていますが、卒業生は最後の最後まで作品の見せ方にこだわって準備に駆け回っていました。

互いに手伝いながら準備を進めます。
高所も学友と協力!
後藤吉晃先生による展示方法のレクチャー。
上田篤先生の表情は真剣そのもの。
奥田輝芳先生は率先して高所作業をしてくださいました。


通学課程とは異なり、多くの方が社会人学生である通信教育課程。学業と仕事や家事との両立は、時間のやりくりや経済的負担、家族の理解など、さまざまな苦労があったことと思います。作品を観てまわると、作品ひとつひとつに、それぞれの苦労や葛藤が感じられ、卒業生・修了生のみなさんが挑戦し努力を続けられた姿がまざまざと思い浮かばれます。


通信教育課程の学生にとっての卒業・修了制作展は、展示はもちろん、久しぶりに大学で先生方や学友と集う貴重な機会でもあります。会場では久しぶりの再会に喜びの声があがる場面も多く見受けられました。

それでは今年度の「学長賞」受賞作品を紹介いたします。各学科ごとに作品写真、そして学科長からのコメントを掲載しています。どうぞご高覧ください。

「学長賞」受賞作品のご紹介

美術科

染織コース 森口美幸《地球 生命の誕生》


美術科の学長賞は染織コースの森口美幸さん「地球 生命の誕生」です。大きな藍の絞り染めの作品で、アンモナイトをモチーフに絵画のように表現されており、そのアンモナイトの中には多くの絞り染めの技法が複合的に詰め込まれています。アンモナイトから周囲にあふれ出しているのは宇宙生成の初期に生まれた生命のイメージであり、作品全体から脈動が感じられて迫力に満ちていました。宇宙と藍の色のイメージが重なるところが面白く、藍の可能性をまた一つ感じさせてくれるものとなりました。(松生歩 学科長)

 

デザイン科

グラフィックデザインコース 塩谷杏美《ことあわせ ― 世界のことわざ絵つなぎ地図鑑》


デザイン科の学長賞はグラフィックデザインコース 塩谷杏美さんの「ことあわせ ー 世界のことわざ絵つなぎ地図鑑」です。絵本図鑑として制作されたこの作品は、見開き2ページに、同じ意味を持つ世界のことわざとその意味を表現したイラスト、使われている場所がわかる世界地図をセットにして50音編成で紹介されていきます。言語の違いを超えた共通する考え方をほのぼのとしたイラストで表現したことで、辞書では難しそうな 多世代で一緒に楽しむという時間を提供してくれる絵本として、グラフィックデザインがもつ力を改めて感じさせるものとなっています。(小杉宰子 学科長)

 

芸術学科

和の伝統文化コース 山下亜加音「「野山水辺をのづからなる姿」の挿花思想-草花瓶・砂之物と盆栽・作庭の関係から」


花道文化における「をのづから」という挿花思想の由来について、花道周辺の文化まで見据えて考察した論文。花道の源流として、従来言及されてきた依代や供花といった宗教的な花文化だけでなく、盆栽や作庭などより自然志向の文化の存在を指摘し、それらが室町時代の草花瓶の花や砂之物へ与えた影響と「をのづから」という理念の生成を考察している。資料についても『山科家礼記』にある花関連の記述や五山文学の漢詩などを丁寧に調査し、当時の人々の挿花に対する考え方が整理されている。以上のことから、今日の花道史研究において重要な意味を持つ研究成果であると評価できる。(井上治 学科長)

 

芸術教養学科

芸術教養学科 藤内和博「鷲宮催馬楽神楽にみる持続可能な郷土芸能伝承のあり方」


2021年度の学長賞は、藤内和博さんの「鷲宮催馬楽神楽にみる持続可能な郷土芸能伝承のあり方」についてのレポートです。
祭事を伝承していく上で直面する変化を通して、持続可能な郷土芸能の可能性について提言したものです。研究は、消滅の危機感により、早くから伝承の対象を広げてきた、鷺宮催馬楽神楽の取り組みの有効性を浮かび上がらせることに成功しています。また、神楽が継続のために変化してきた点、変化していない点、新しく取り入れた点を明らかにしたことが評価できます。伝統的な祭事の伝承が課題となっている他地域の参考になりうる内容でした。(早川克美 学科長)

 

卒業生・修了生のみなさま、改めましてご卒業誠におめでとうございます。みなさんが学修・制作に励まれ、無事に卒業・修了制作展を迎えらえたこと、その努力に頭が下がる思いでいっぱいです。
ご来場者のみなさま、卒業生・修了生の集大成をぜひその目に焼き付けてください!

京都芸術大学 2021年度卒業・修了制作展(通信教育課程)

会期 2022年3月13日(日)〜3月20日(日)
時間 11 時〜18時(最終日は16時)
入退場 事前予約制(https://www.e-tix.jp/kyoto-art-sotsuten2021/airu.html)・入場無料
会場 京都芸術大学 瓜生山キャンパス

https://www.kyoto-art.ac.jp/t/graduationworks/2021/

 

京都芸術大学 Newsletter

京都芸術大学の教員が執筆するコラムと、クリエイター・研究者が選ぶ、世界を学ぶ最新トピックスを無料でお届けします。ご希望の方は、メールアドレスをご入力するだけで、来週水曜日より配信を開始します。以下よりお申し込みください。

お申し込みはこちらから

  • 京都芸術大学 広報課Office of Public Relations, Kyoto University of the Arts

    所在地: 京都芸術大学 瓜生山キャンパス
    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

お気に入り登録しました

既に登録済みです。

お気に入り記事を削除します。
よろしいですか?