
2025年6月21日、今年度3回目の「収穫祭」が奈良の明日香村で開催されました。
収穫祭とは、全国にいる在校生・卒業生と教職員との交流・学修を目的としたものです。2018年からスタートして、年々、規模が大きくなり、現在では全国8会場で開催しています。
全国様々な地域の特色ある芸術文化をワークショップや特別講義を通して紹介することや、公立私設を問わず美術館や博物館の社会への取り組みや発信、また開催中の展覧会を鑑賞することなどを行っています。
それでは、今回の収穫祭を担当した日本画コース教員の山本雄教より、現地報告をご紹介します。

明日香村は、6世紀末から7世紀にかけて日本の都が置かれた歴史的な地域で、古代国家が誕生した場所として広く知られています。
日本で唯一、全域が「古都保存法」の対象地域でもあり、なつかしい田園風景の中、古代からの史跡があちこちに点在している光景は、他には無い特別な場所です。


今回まず訪れたのは「飛鳥資料館」。その名の通り、飛鳥に関する歴史や文化を学ぶことのできる資料館です。

お庭には明日香村に点在する石造物の複製が展示されています。

有名な亀石のレプリカ。穏やかな表情ですが、この亀が当麻の方向である西を向いた時、大和国一帯が泥の海に沈むというなんとも恐ろしい言い伝えが…

こちらが本物の亀石。今回の収穫祭では立ち寄れませんでしたが、「こんなところに!?」というような住宅地の道すがらにあってびっくりします。(頼むから西だけは向きませんように…)


こちらは飛鳥資料館のチケットとパンフレット。
デザインが可愛い! と私と事務局の高木さんとで開始前から盛り上がってしまいました。

まず学芸室の濱村美緒さんから、飛鳥資料館について、飛鳥時代について、そして明日香村の史跡等について、レクチャーをしていただきました。

レクチャーを受ける参加者皆さんの姿勢は真剣そのもの!
質疑応答の時間にも積極的な質問が飛び交いました。

レクチャー後は展示室へ。







貴重な資料が展示室中にずらり!
見ごたえたっぷりでした。


地下には高松塚古墳の発掘調査や石室保存に関する詳しい資料もあり、こちらも興味深かったです。
ちなみに今回特別陳列室(飛鳥池工房遺跡の展示)は休室中でしたが、この秋には『秋期特別展「古代技術の精華-飛鳥池工房-」という展覧会が開催されるとのこと!
現在も『飛鳥のたてもの』(〜9/23まで)という企画も開催されておられますので、ご興味のある方はぜひお出かけください。詳しくは飛鳥資料館のホームページへ。
https://www.nabunken.go.jp/asuka/index.html
レクチャーをご担当いただいた濱村さんをはじめ、心よく迎え入れてくださった飛鳥資料館の皆さま、誠にありがとうございました!

飛鳥資料館をたっぷり堪能したあとは次の場所へ移動。
明日香各地を回りますので今回はバスをチャーター! 遠足感があってワクワク。

各地を回る前にまずは腹ごしらえ。農村レストラン 夢市茶屋へ。

いただいたのは、村内で採れた季節の野菜が使用された古代米御膳。
舌でも明日香を堪能できました。

参加された皆さんの語らいのひと時にもなりました。
夢市茶屋の皆さま、ご馳走様でした!

昼食を終えたあとは、夢市茶屋から歩いてすぐの石舞台古墳へ。
こちらの古墳の被葬者は蘇我馬子が有力視されています。


石室の中にも入れます。大きい…!

このようにして作られたと考えられているそうです。

続いては飛鳥寺へ。
日本ではじめての本格的な寺院と言われています。ちなみにこちらは先ほども名前が登場した蘇我馬子が建立を発願したものです。


こちらは重要文化財でもある、本尊の釈迦如来像。


中では飛鳥寺にまつわる様々な資料も見ることができました。

寺の西側には蘇我入鹿の首塚と呼ばれる五輪塔が残っています。
明日香はあの大化の改新の現場でもあるのです。

続いては本日最後の目的地である高松塚古墳へ。
バスの駐車場所からテクテク歩いていきます。

まずは高松塚壁画館に。




検出当時の壁画の現状模写や再現模造模写をはじめ、高松塚古墳にまつわる資料を見ることができました。
館内では古墳や壁画について、壁画館のスタッフの方が詳しく解説をしてくださいました。

そして最後は実際の高松塚古墳と対面。
皆さん長い1日お疲れ様でした!

最後は石舞台古墳で撮影した集合写真を。
この日は6月にも関わらず朝から30℃を超える暑さで、かなりハードな環境での1日となったのですが、皆さんこの写真のように笑顔で前向きにご参加いただけたのが印象的でした。
それは遠足のような楽しさだけではなく、この機会に何かを学びとろうとされる熱量があったからこそだと思います。そんな皆さんの姿勢が、企画者として嬉しい限りでした。
余談ですが、この集合写真を見てお気づきかもしれませんが、今回は前学長の吉川左紀子先生にもご参加いただいておりました。在校生の方も、卒業生の方も、教員も、そして前学長も、コースや学年に関わらず共に学び楽しみことができるのも収穫祭の素敵なところですね。
以上、奈良県明日香村の収穫祭の振り返りとご紹介でした!
(文=日本画コース 教員 山本雄教)
参加学生レポート
「かけらをつなぐ 飛鳥時代の探訪に触れた日」
収穫祭のはじまりは飛鳥資料館から。講義では歴史の明暗を知った。高松塚古墳の石室の南壁は鎌倉時代の盗掘孔により、壁画の存在は判らず。一方でキトラ古墳の南壁に描かれた十二支像の午は、付着した泥に塗料が転写され、赤色の着色がくっきりと残っている。
続いて、倒壊した当時そのままの姿で発見された山田寺の東回廊の展示室へ。全23間87メートルのうち、最もよく残っていた3間分の部材が保存処理の末に、本来の位置に再現されて展示されている。目の前の10メートルほどの建造物が約1000年のあいだ土中に眠っていたものだと思うと、時間の感覚が揺らぐような不思議な感慨があった。
午後から飛鳥寺へ。飛鳥大仏は鎌倉時代の火災により大部分を焼損していて、補修の痕が目立つ。しかし創建当時からずっと同じ場所に祀られている。ひとも傷つきながら人生を続ける。日本最古の釈迦如来像に親しみを覚え、合掌した。
収穫祭のさいごは高松塚壁画館と高松塚古墳へ。壁画のレプリカは発掘当初のもの、汚れや剥落をある程度処理したもの、とそれぞれの写真を模写して描かれている。石の上に漆喰を塗り、岩絵具を使用して描かれたものもあった。その精巧な成果物に引き込まれて見入った。
残されたかけらをつないで、姿なきものの像を結ぶ。飛鳥時代の探訪の一端に触れた日となった。
(田中景子 芸術学科アートライティングコース 2025年度生)
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