REPORT2025.07.31

教育

文化デザイントークシリーズ#1 文化はデザインできるか?レポート

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  • 上村 裕香

京都芸術大学大学院 芸術研究科 芸術環境専攻 文化デザイン・芸術教育領域は、アートコミュニケーションやインクルーシブデザインを通じた関係性の構築や、地域の風土や歴史を起点に新たな価値を創出するカルチュラルデザインについて研究する領域です。

本トークイベントは、文化デザイン・芸術教育領域が掲げる「文化デザイン」の理念と実践を再考するために立ち上げられたトークシリーズ「カルチャーデザイントークシリーズ(CDTS)」の第1回イベントです。
登壇したのは、グラフィックデザイナーとして第一線で活躍しながら、NHK番組『デザインあ』『デザインあneo』や展覧会などを通じて日常にひそむデザインの背景を社会に開いてきた佐藤卓学長と、地域や社会との関係性を重視しプロジェクトを実践してきた服部滋樹領域長(京都芸術大学教授)、企業や自治体のコンセプト戦略づくり、ブランディングを行うトム・ヴィンセント教授の3名。文化とは何か? デザインの役割とは? 「文化をデザインする」という行為の可能性とその倫理について考えるイベントとなりました。

登壇者プロフィール

佐藤卓
1979年東京藝術大学デザイン科卒業、81年同大学院修了。株式会社電通を経て、84年独立。株式会社TSDO代表。商品パッケージやポスターなどのグラフィックデザインの他、施設のサインや商品のブランディング、企業のCIなどを中心に活動。代表作に「ロッテ キシリトールガム」「明治おいしい牛乳」パッケージデザイン、「PLEATS PLEASE ISSEY MIYAKE」グラフィックデザイン、「金沢21世紀美術館」「国立科学博物館」シンボルマークなど。また、NHK Eテレ「にほんごであそぼ」アートディレクター、「デザインあ」「デザインあneo」総合指導、21_21 DESIGN SIGHT館長を務め、展覧会も多数企画・開催。著書に『塑する思考』(新潮社)、『マークの本』(紀伊國屋書店)、『Just Enough Design』(Chronicle Books)など。毎日デザイン賞、芸術選奨文部科学大臣賞、紫綬褒章他受賞。

服部滋樹
1970年生まれ、大阪府出身。暮らしにまつわるさまざまな要素をものづくりから考え実践するクリエイティブユニットgraf。1993年から活動を始め、異業種が集まる環境と特性を生かした新たな活動領域を開拓している。リサーチからコンセプトワーク、デザイン、設計、プログラムへとソフトからハードまで持続可能な形態を生み出す。grafでは代表を務めるほか、コンセプターとしてデザインやディレクションを行う。あらゆるデザイン領域の視点から社会を翻訳するようなアウトプットを行っている。仕組みの再構成と豊かな関係性を生み出すコミュニケーションを物づくりからデザインする。プロジェクトからプログラムへ、ムーブメントからカルチャーへ育むデザインを目指している。

トム・ヴィンセント
イギリスロンドン生まれ。「近江日野の未来のために。繋がりと祭りと文化が続く魅力的な町を目指して」NPO法人日野まちつなぐ研究所理事長。内閣府クールジャパン戦略アドバイザリー・ボードメンバー。近江商人発祥地である滋賀県蒲生郡日野町の築240年の旧近江商人宅を本拠地とし、企業や政府、自治体のコンセプト戦略づくりから、ブランディング、プロモーション及びメディアやコンテンツの制作などを行っている。株式会社トノループネットワークス 代表取締役。クラフトビール会社「Hino Brewing」を日野の老舗酒屋六代目と日野在住ポーランド人ブラウマイスターと共同経営。

デザインはいかにして文化になるのか

はじめに、服部領域長がデザインの役割の転換と文化形成における流れについて説明しました。服部領域長は20世紀には消費社会やデザインの役割が経済に飲み込まれるようにして展開されていったと指摘し、「モノ消費」から「コト消費」へと変化したことで、物事そのものを捉え直す必要があると考えたと話します。

服部領域長:「文化デザイン」という領域は、世界中を見渡してもあまり聞かれない言葉です。社会学の分野には「カルチュラル・スタディーズ」が存在しますが、デザインの領域で文化を扱うのは難しく、同時にトライしがいのあるテーマだと思っています。
わたしはデザインの仕事を27年間やってきました。20世紀の終わりにバブルも崩壊し、21世紀におけるデザインの役割を改めて考え直す中で、本来、「コト」や「モノ」は人のために存在しているのに、人という存在が消えていたんじゃないかと思うようになりました。「人と人が出会い、コトが生まれ、コトのためにモノが存在する」というサイクルがあるべき姿ではないでしょうか。そこで、わたしはモノの背景になにがあるか、どんな人が関わっているかをリサーチしながら、作り方を整え直すことに力を入れてきました。


そうした考え方に基づき行動する中で、都会の先進的なデザインよりも、地域の見えない課題を掘り起こし、次なる課題を発見し、未来へと整理していくことを地域の方々から求められるようになったと服部領域長は話します。そこで、文化デザインにおけるメソッドとして、「プロジェクト、プログラム、ムーブメント、カルチャー」という文化形成の流れを導き出しました。

・プロジェクト:いままでになかったことを、先進的な未来を見据えて行う実験的行為。
・プログラム:プロジェクトが長く続き、人が入れ替わっても継続される状態。同じ課題を抱える他の地域でも再現可能になる。
・ムーブメント:プログラムが各地に移植され、様々な場所で活動がスムーズに起こり、活動が世界中に広がる段階。
・カルチャー:ムーブメントが過去を振り返った時に、それが時代を作り、課題を解決し、人々がポジティブに生きられるように、土台作りになった証。

服部領域長:本学科では、このようなメソッドを使って文化デザインという考え方について、教育プログラムとして展開しています。今日のトークではこうした流れを念頭に、佐藤学長の事例を聞きながら検討していきたいと思います。


「ほしいも学校」プロジェクト — 干しいもを通して宇宙を見る

続いて、佐藤学長が具体的な事例として「ほしいも学校」プロジェクトを紹介しました。佐藤学長は40年以上デザインの仕事に携わってきた実感として「お金のために働いているというよりも、お金は結果としてついてくる。資本主義社会の中で生きているけれど、やっぱり世の中を面白くしたいという気持ちがあります」と語ります。
「ほしいも学校」は、茨城県ひたちなか及び東海地域で生産される干しいもを、あらゆる角度から分析・研究し、干しいもを通して人の営みと環境を考え、未来へと繋ぐプロジェクトです。ひたちなか・東海地域が、日本全国の干しいもの約8割を生産する産地であることからはじまりました。

佐藤学長:きっかけは2006年にわたしが水戸芸術館の現代美術ギャラリーで展覧会をしたときに、「せっかく水戸でやるんだから、いままで制作したものを並べるんじゃおもしろくないな」と思って、地域のモノづくりとコラボレーションしたことです。地域とのコラボレーションで商品が生まれ、その制作過程を会場で来場者に見せる、そしてその商品は世の中に残り続けるというプロジェクトを考えたんです。
地域の特産品を調べたら、干しいもと納豆が有名だと。ドライ納豆にチョコをコーティングした「チョコ納豆」と、チョコレートに干しいもを混ぜた「チョコほしいも」を開発しました。「チョコほしいも」は、当初は茶色いチョコレートに干しいもを混ぜたものを実験的に作ったんだけど、美味しくない。ダメだなと思ったときに、「そうだ、チョコレートにはホワイトチョコレートがあるじゃないか!」と思いついて、ホワイトチョコレートと組み合わせたら美味しかった。そうやってできた商品を、過程も含めて展覧会で来場者に見てもらいました。
そのあと、地元の方々と「商品開発のように一過性のものじゃなく、地域のためになる活動をしよう」と話して、「ほしいも学校」が生まれました。学校ってことにすれば、商品も作れるし、ワークショップもできるし、一緒に干しいもについても学べますよね。それで、わたしは「干しいもを通して、宇宙を見ませんか」って言ったんですね。

服部領域長:宇宙まで行ったんですか。

佐藤学長:わたしの頭の中では、太陽の光、風、水、それから土、ありとあらゆるものと干しいもは繋がっているから、それを多くの人たちに伝えるってことをやったらどうかと思って、提案したんです。でも、地域の方々は呆気に取られてて……。最終的には、やりましょうと言ってもらって、このプロジェクトがはじまりました。
わたしが干しいもに惹かれたのは、現代社会が求めているキーワードの「真逆」だからです。シワだらけ。同じものがない。地味。スピード感がない。いまの世の中が流れている方向と真逆であることが、すごく面白いと思いました。ここには未来があるんじゃないかと思ったんです。

佐藤学長は世界中のさつまいもを育てる畑や伝統的な干しいも作りの現場を訪れ、干しいもに適した茨城の土地の条件を専門家と一緒に調査したといいます。トークショーやシンポジウムも開催されました。その中で作られたのが、干しいもに関する本と干しいものセットです。この本は本屋や食品店、サービスエリアなど、様々な場所で販売されました。

常識を打ち破る「デザイン」

服部領域長:いまお話を聞いて、ヒントがあるなと思いました。固定観念ではない考え方で考えたからこそ、食品だけでなく、様々な領域で販売されたわけですよね。

佐藤学長:そうですね。普通は、世の中の業態にものを合わせざるを得ないという状態でものが作られて、社会に送り込まれていきます。でも、そこからものを考えるんじゃなくて、純粋に「こういうものがあったらどうかな」と考えることが大切なんです。

服部領域長:わかります。例えば、お皿のデザインを依頼されたときに、お皿だけを見てデザインすると、店頭に並んでいる同じような価格帯のお皿の調査から入ってしまう。でも、「お皿の中にどんな食材が、どんな料理が載るか」という観点からデザインを考えていくと、違う視点から見ることができますよね。

佐藤学長:クリエイションって、刷り込まれている概念に疑いをもつことなのかもしれませんね。

さらに、「ほしいも学校」の活動は多岐にわたり、干しいもの色や道具に関する調査から、「世界ほしいも大会」の開催、「ほしいも神社」の建立にまで発展しました。世界ほしいも大会には、南アフリカ、韓国、中国など様々な地域の人々がオンラインも含めて参加しました。ほしいも神社は、宮司もいる正式な神社で、佐藤学長がデザインを手がけ、干しいもと掛けて「ほしいものが手に入る」というコピーをつけました。こうした活動には、「楽しい場を作っていく」という佐藤学長の思いが込められていたといいます。

「デザインの解剖」と「知る喜び」

佐藤学長は、「デザインの解剖」というプロジェクトに取り組んだ経験が「ほしいも学校」のプロジェクトにも活かされていると話しました。
「デザインの解剖」は佐藤学長が2001年から取り組んでいる、身近な製品を「デザインの視点」で解剖し、各製品の成り立ちを徹底して検証する試みです。本来の「解剖」が生物体を解(ひら)き、構造や各部門の関係を分析していく行為であるように、デザインを解剖の手段として、「ロッテ キシリトールガム」、「富士フイルム 写ルンです」、「タカラ(現:タカラトミー) リカちゃん」、「明治乳業(現:明治) 明治おいしい牛乳」などの製品を外側から内側へと分解・観察していきます。

佐藤学長:若い頃に大学でデザインの講義をしたとき、学生たちに馴染みのない作品を見せてデザインの話をしてもみんな寝ちゃったんです。でも、学生のポケットの中に入っているものの話をすると、みんな目をキラキラさせて聞いてくれる。知っていると思っていたことを、自分がいかに知らないかに気がつくというのは、意外と喜びに繋がるんです。

佐藤学長は、20世紀以降のものづくりの発展によって、消費者がその技術や工程を理解しないまま製品を使っていることを指摘し、「デザインの解剖」プロジェクトによって、20世紀以降のものづくりについて振り返り、その背景をトレースしておくべきだと考えたと述べました。ペットボトルがどうやって作られているか、水がどこから来ているか、わからなくても疑問にも思わず、「便利であればいい」という考え方が、人とものの距離を遠ざけているといいます。

服部領域長:広告や社会に溢れる情報は、ものが生まれてからの使い方ばかり説明して、作られ方についての説明は一切されてこなかったですよね。こう使ったらいいよ、あなたの生活が便利になるよ、という説明ばかりで、作られ方は知らないまま。

佐藤学長:ほんとですね。わたしは広告代理店での広告制作からこの世界に入ったので、広告というのは「この商品を売ってくれ」と依頼されて、いいことばかり伝えるものだと思っていたんですね。技術や裏側については伝えずに、表面的に着飾って、ゴミになったあとのことも考えない。でも、「デザインの解剖」のプロジェクトを通して、商品の背景を伝えるだけで、ちゃんと、人にものが伝わるんじゃないかと思ったんです。

ヴィンセント教授:佐藤学長がすごいなと思うのは、キシリトールガムやリカちゃん人形のような工業製品でも、伝統工芸品と同じような視点で見ているという点です。

佐藤学長:大量生産品のデザインをするようになったときに、大量の資源を使い、ゴミが生まれるという社会的責任を考えざるを得なくなったんです。大量生産品を悪者にするんじゃなく、まず理解したいと思って。大量生産品って、なくなるときは1個もなくなるんです。1日に100万個作っていたものが、メーカーにさえなくなる。その大量生産品の性(さが)をきちんと記録しておくべきだっていう気持ちもありました。大量生産品の素晴らしさを伝えるということではなく、客観的に事実を伝える姿勢を徹底しています。

「美濃焼」プロジェクト — プログラムからムーブメントへ

佐藤学長は「デザインの解剖」プロジェクトで得た知見は、岐阜県美濃地方の「美濃焼」プロジェクトにも活かされていると話しました。美濃焼は、岐阜県の東濃地方西部(多治見市、土岐市、瑞浪市)を中心とした地域でつくられる陶磁器の総称です。日本最大の焼き物の産地である美濃は、高価な伝統工芸品から100円ショップの食器まで幅広い種類の焼き物を生産しています。
佐藤学長は地元の住民から「美濃焼の知名度が低い」ことについて相談を受け、「セラミックバレー」という名称をライターの橋本真理さんと考案。「日本全国のラーメン丼の9割は美濃焼き」という事実に着目し、ラーメンを入口として美濃焼の世界を知ってもらおうと、「ラーメンどんぶり展」と題した展覧会を企画しました。

ラーメンどんぶり展

この展覧会は、国内のギャラリーでの開催後、ロサンゼルス、サンパウロでも行い、規模を拡大していきました。今年3月に21_21 DESIGN SIGHTで行われた展覧会では、さまざまなジャンルのデザイナーやアーティストらがラーメン丼とレンゲをデザインする「アーティストラーメンどんぶり」40点や、日本全国のラーメン店のラーメンどんぶりを展示するなど、多角的にラーメンと美濃焼の魅力を紹介しました。佐藤学長は現在、美濃焼の歴史や世界を、ラーメンどんぶりを通じて解説する書籍を制作中だといいます。

服部領域長は佐藤学長の「デザインの解剖」プロジェクトや「ラーメンどんぶり展」によって、デザインの展覧会の法則ができているのではないかと話します。
ヴィンセント教授は、服部領域長が提唱する「プロジェクト、プログラム、ムーブメント、カルチャー」という文化形成の流れに重ね合わせ、「ムーブメントは、当事者じゃないところで勝手に動くものなので、自分はコントロールできない。他の地域の人々が、わたしもぼくもと、勝手にやってくれるのがムーブメント。佐藤学長のプロジェクトと違う場所で、解剖の仕組みやデザインに対する考え方を引き継いで、人々が新たに行なっているなら、それは『ムーブメントになった』ということに思えます」と佐藤学長の取り組みを評価しました。

佐藤学長:服部領域長がムーブメントという概念を加えたのはすごいことだなと思います。普通はプログラムまでやると「それはわたしのもの」という自我が生まれてくるし、権利の問題が出てくる。でも、服部領域長は「公開していいことであればどんどんみなさん使ってください」っていう著作権フリーの姿勢ですよね。それが服部領域長のすごいところというか。

服部領域長:コモンズという言葉もムーブメントに必ずついてくる言葉で、21世紀の価値観になっているような気がします。「個人の」というよりも「わたしたちの」という動き。

ヴィンセント教授: コモンズの考え方は面白くて、どんどん増えていると思うんですが、一方でコモンズではない部分も大きいですよね。どうすればコモンズを増やせるか。特に21世紀は技術が文化を作ることが多いじゃないですか。最近だと、音楽配信の方法によってビジネスモデルが変わって、音楽の聴き方も変わった。昔は情報源が限られていたから、みんな同じような音楽を聴いていたけど、いまはインターネットを通じてみんな幅広い音楽の趣味を持っている。その文化を作ったのは、技術インフラそのものなんですよね。ムーブメントを文化にするためには、インフラストラクチャーのようななにかを作る必要があると思うんですが、これが難しい。
服部領域長がいう「プログラム」はある意味レシピみたいなものだと思うんですよね。まだ普及していないんだけど、多くの人が同じレシピで料理を作れるという「プログラム」。技術によって世の中の大きなものが変わっているけれど、それは本当に文化になるのか、という疑問があります。例えばAmazonのサーバーの仕組みは多くのオンライン配信システムに使われていて、一社の財産になっていますよね。

佐藤学長: テクノロジーの力が強すぎて、世の中を大きく動かしてしまい、文化が追いついていけないイメージですかね。

ヴィンセント教授:はい。それは本物の文化じゃないと思うんですよ。壊れやすい、薄っぺらで残らなさそうな気がする。大企業の気が変わればそれ自体が消えてしまう。

カルチャーという森を作る

佐藤学長は最後に、自身がディレクターを務める21_21 DESIGN SIGHTの取り組みについて語りました。2007年に三宅一生さん、深澤直人さん、川上典李子さんを中心に立ち上げられた21_21 DESIGN SIGHTは今年で18年目を迎えます。安藤忠雄さんが設計した建築も特徴で、「デザインの視点でさらに先を見る」というコンセプトのもと、活動してきました。
佐藤学長は、水をテーマにした最初の展覧会「water」を筆頭に、東日本大震災後の「テマヒマ展<東北の食と住>」、「コメ展」、「デザインあ展」、企画監修に虫好きとしても知られる解剖学者の養老孟司さんを迎えた「虫展—デザインのお手本—」、昨年開催された「ゴミうんち展」など、多岐にわたる企画展を開催してきたことを説明しました。

ヴィンセント教授:間違いなく、日本のデザイン界は21_21 DESIGN SIGHTなしでは語れないと思います。デザインの入口をどう見せるかは、佐藤学長の「解剖」の手法と同じように、文化になったと感じます。21_21 DESIGN SIGHTのロゴを佐藤学長がデザインして、ぼくがコミュニケーションウェブを担当したとき、佐藤学長が「ロゴを無料で、無条件、権利なしで配布しましょう」という取り組みを行ったことも、ムーブメントにつながってると思います。

佐藤学長:日本に本格的なデザインミュージアムが一つもないという問題意識から、三宅一生さんが朝日新聞で語ったことがきっかけで、21_21 DESIGN SIGHTは動き出したんです。実際には、ミュージアムには保存するスペースが必要で、それがないとミュージアムとは言えない。だから、ギャラリーとも違う、ミュージアムとも違う場所として考えました。ミュージアムではないからこそ、ユニークなアイデアで構築できたのかもしれない。保存ももちろん重要だけど、労力とか予算とかの都合でいまの形になったことが、結果的にはオリジナリティになっているとうれしいです。

終わりに、服部領域長はプロジェクト、プログラム、ムーブメント、カルチャーという流れを植物に例えると、プロジェクトは「種」、プログラムは「木」、ムーブメントは「枝」、カルチャーは「森」であると述べ、みなさんとも議論をしながら今後も文化デザインについて考えていきたい、と参加者に呼びかけました。

トークイベントを通して、プロジェクトからはじまり、ムーブメント、文化へと育っていくデザインの可能性について考えるきっかけをもらいました。次回のトークイベントは2025年9月13日(土)を予定しているそうです。今回は参加できなかった方も、ぜひご参加ください!

 

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  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。

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