毎回、知る人ぞ知る京の和菓子を紹介する連載企画「京の和菓子探訪」。第2回目は、日本三大祭りのひとつ「祇園祭」の菊水鉾ゆかりの和菓子「したたり」(亀廣永製)を取り上げます。
取材した7月12日は(火)、鉾の曳き初めの日。菊水鉾町では、小雨が降りしきる中、午後の曳き初めに向けて急ピッチで準備が進められていました。そんな忙しい中、公益財団法人菊水鉾保存会の副理事長で囃子方菊童会総代の川塚錦造さんに菊水鉾と「したたり」についてお聞きしました。
菊水鉾の名前の由来は、能楽の演目「菊慈童」(または「枕慈童」)にもなった、菊の葉の露を飲んで700歳まで生きた男と不老長寿の薬水にまつわる中国の伝説です。元は「夷山」を名乗っていたそうで、正確にいつ名前を変えたのかは不明ですが、応仁の乱(1467~1477年)の前には菊水鉾町の名前が文献に残っているそうです。
元の鉾は火事で消失してしまったのですが、現在の鉾は、1953年に再興されました。
元々菊水鉾町は、千利休の師にあたる武野紹鴎(たけのじょうおう)が大黒庵という庵を構えていた場所で、言ってみれば茶の湯の原点のような土地。そのようなことから、菊水鉾では再興当初から茶会を行っていますが、再興から何年か経ったころ、亀廣永に依頼し、菊水鉾オリジナルの和菓子として「したたり」がつくられました。
「したたり」と命名したのは、八坂神社の宮司であった高原美忠さん。菊の葉からしたたり落ちる薬水のイメージから名前がつけられました。御菓子の包み紙に書いてある「したたり」という筆文字も高原宮司が書いたものだそうです。
「したたり」は、琥珀羹 *1の一種ですが、その甘味に黒糖が使われ、また一般的な琥珀羹よりもやわらかいのが特徴です。
箱から出した瞬間香る黒糖の甘い香り、そして光に透かした時に見えるまだら模様がとても綺麗でした。口に入れると、黒糖の味がふわっと広がり、少し弾力はありながらとてもなめらか。冷やしていただくと、さっぱりとした甘さが夏の暑さを忘れさせてくれます。
ところで、菊水鉾茶会は、7月13日(水)から16日(土)までの4日間、菊水鉾会所で行われます。この茶会で、中国・景徳鎮で作られているという菊を模ったお皿で「したたり」を楽しむことができます。当日券は、持ち帰ることができるこのお皿が付いて2,000円。
菊水鉾では、再興60周年を記念して4年前から4面胴駆を毎年1面ずつ新調してきましたが、今年2016年はその新調した4面がすべて揃う記念すべき年。節目の年に、菊水鉾とともに「したたり」を楽しむのはいかがでしょうか。
*1 琥珀羹(こはくかん):寒天を煮溶かし、甘く味付けをして固めたもの
<文・菊水鉾取材写真:田村七美、その他写真:高橋保世>
亀廣永 「したたり」
住所 | 京都市中京区 高倉通蛸薬師上ル和久屋町359 |
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電話番号 | 075-221-5965 |
営業時間 | 9:00〜18:00 |
定休日 | 日・祝 |
価格 | 「したたり」1本 1,100円(税込み) |
菊水鉾茶会
場 所 | 菊水鉾会所 |
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当日券 | 2000円(お皿付き) |
7月13日(水) | 14時〜21時 裏千家 |
7月14日(木) | 13時〜21時 裏千家 |
7月15日(金) | 13時〜22時 遠州流 |
7月16日(土) | 12時〜22時 表千家 |
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田村 七美Nanami Tamura
1994年大阪府生まれ。京都造形芸術大学 情報デザイン学科2013年度入学、同学科2016年度卒業。タイポグラフィ や エディトリアルデザインを学ぶ。男女問わず同年代のアイドルが好き。
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。
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瓜生通信編集部URYUTSUSHIN Editorial Team
京都造形芸術大学 広報誌『瓜生通信』編集部。学生編集部員24名、京都造形芸術大学教職員からなる。