日ごとに秋も深まり、空が高く澄みわたる11月1日(土)、京都芸術大学ホームカミングデーが開催されました。卒業生が同窓生や先生方、在学生と交流する、年に1度の機会です。
コロナ禍には感染症拡大の影響でオンライン開催されていたホームカミングデーですが、昨年度からは対面形式での交流が復活。今年度も、直心館の講堂に卒業生と先生方、職員の方々が集まり、立食パーティー形式で旧交を温めました。
昨年度に引き続き、1日(土)に実施されたホームカミングデー懇親会以外に、学科・コースの懇親会を目的としたホームカミング・パーティーも開催されました(一部の学科・コースのみ)。学科・コースごとに対面とオンラインを併用し、会場に集まった卒業生とも、遠方の同窓生とも、オンライン上の同窓会場で再会できたのではないでしょうか。この記事では、1日に開催されたホームカミングデー懇親会の模様をお届けします。
当日は大瓜生山祭(学園祭)とオープンキャンパスも同時開催され、学内はとても賑やかでした。大瓜生山祭の様子をレポートした記事はこちら!
(URL→https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/1441)
まずはじめに、佐藤卓学長が開会の挨拶を行いました。

佐藤学長は「こんなに面白い学校を卒業されて、みなさんは本当に幸せだなと思います。社会に出ると、同じ学校を卒業した同窓生であるという共通点があるだけで、言葉にしなくても伝わることがあります。根本の価値観の部分で『繋がっている喜び』を感じられるということは、貴重なことだと思います。ホームカミング・パーティーで世代を超えて集まった同窓生たちと、ぜひ新たな繋がりを作って、楽しんでいってください」と卒業生に呼びかけました。
卒業生のいるお店

「乾杯!」の合図の後は、一気に和やかな宴会ムードに。食べ物が提供されるブースにはあっという間に行列ができ、美味しいお酒と食べ物を手にしたら、あちこちから笑い声が。旧友や先生たちとの再会を喜びあう姿が散見され、みなさん楽しそうに談笑していました。
ホームカミングデーでは学園WEBマガジン「瓜生通信」でご紹介している「卒業生のいるお店」から飛び出して、卒業生が活躍するお店が出店します。今年は「屋台手打蕎麦『鴨まる』」「京都岩倉 逸京」「保存食LAB」「益や酒店(ますやさけてん)」の四店舗が出店しました。
「卒業生のいるお店」についてのそれぞれのインタビュー記事も、併せてぜひご覧ください。

プロダクトデザイン学科の卒業生・三木俊輝さんが営むのは、「屋台手打蕎麦・鴨まる」。2023年11月から、屋台風のキッチンカーを使って宮城県仙台市の駅前で日本蕎麦を提供しています。今回は看板メニューの手打ち蕎麦「鴨せいろ」をご提供いただきました。

なんと、三木さんが目の前で蕎麦を打つ様子を見ることができるライブキッチン形式で、並んでいる間も楽しんで順番を待つことができました。疲れた体を労るのにうってつけな温かい鴨せいろに、卒業生も先生方も舌鼓を打っていました。
卒業生のいるお店 — 屋台手打蕎麦・鴨まる(プロダクトデザイン学科卒業生・三木俊輝さんインタビュー)記事はこちら→https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/1418

環境デザイン学科卒業生・益田藍さんの「益や酒店」からは、飲み比べできる日本酒と日本酒に合う酒肴をご提供いただきました。益や酒店は2015年の開業以来、地元の常連客や観光客、外国からの旅行者など多くの人が気軽に通える日本酒バルとして注目を集め、現在は缶入り日本酒とおつまみの製造販売も手がけています。


お店で人気の京都の蔵の日本酒と酒肴のペアリングを楽しむことができ、ナッツのたっぷりと入ったおつまみは特に大人気で、すぐに完売していました。
卒業生のいるお店 — 益や酒店(環境デザイン学科卒業生・益田藍さんインタビュー)記事はこちら→https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/1426

美術工芸学科卒業生の増本奈穂さんが店主を務める「保存食LAB」からは、温かなスープにあっさりとした米麺を使ったフォーと、3種類のフィンガーフードをご提供いただきました。大きなエビの乗ったパイや秋らしい色合いのお稲荷さんなど、写真映えするフィンガーフードはすぐに来場者のハートを掴み、我先にと手を伸ばす人で溢れていました。


保存食labでは、京都の北部に位置する京丹後の自家菜園で大切に育てた野菜や果実を、厳選した調味料やスパイスと合わせ、ひとつひとつ手作業で作っています。出町柳駅の近くにあり、大学からも自転車で十分ほどの距離です。ぜひ、近くにお立ち寄りの際は覗いてみては。
卒業生のいるお店 — 京都市左京区・保存食lab / フォー屋さん(美術工芸学科卒業生・増本奈穂さんインタビュー)記事はこちら→https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/1433

環境デザイン学科卒業生の植浦基暁さんが運営する「京都岩倉 逸京」からは、京のもち豚を使い、無添加にこだわった「角煮丼」をご提供いただきました。肉厚の角煮に白米が合う、思わずおかわりしたくなる一品です。
京都岩倉逸京は、安心・安全にこだわった手作りの和食ブランドとして京都市・岩倉から全国に展開されています。京都のおばんざいやお弁当、無添加の調味料、スープを扱う「逸京デリ」、おばんざいをビュッフェスタイルで楽しめるレストラン「逸京ダイニング」、逸京がプロデュースするオリジナルの和カフェ「逸京茶寮」など、複数店舗を運営。京都の料理人による伝統的な和食と、料理に込めた思いを表現するデザインを融合させ、百貨店でも展開しています。
卒業生のいるお店 — 京都岩倉逸京(環境デザイン学科卒業生・植浦基暁さんインタビュー)記事はこちら→https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/1427
また、会場では、Homecoming Day特別呈茶会と題して、瓜生山同窓会のメンバーで立ち上げた茶道サークル「瓜同茶会」の方々が呈茶をしてくださるイベントも行われていました。秋らしい安納芋のお茶菓子と抹茶が、日々の疲れを癒してくれます。

タナアミ先生 楽園回想記 ー田名網敬一の創造教室ー
点てていただいたお茶を飲みながら、まったりとした談笑タイム……と思いきや、直心館後方からなにやらテクノ音楽が聞こえてきました。覗いてみると、暗い講義室の前方に本格的な機材が設置され、講義室後方ではアニメーション映像が流れているではありませんか。クラブに迷い込んだような雰囲気です。

こちらの「VJ/DJイベント」、実は2024年8月9日に88歳でご逝去された本学の名誉教授・田名網敬一先生の追悼展の関連企画なんです。後方で流れている映像は、田名網先生の映像作品。その作品に合わせて、DJとしても活動する情報デザイン学科の教職員が曲をセレクトし、音楽と映像を楽しみながら田名網先生との思い出を語り合う場を設けました。
田名網先生は瓜生山学園が4年制大学を開学した1991年4月、芸術学部デザイン科に着任され、情報デザイン研究室主任、学科長、研究センター所長を歴任、ご逝去された2024年8月まで本学教授として在職されました。
在職期間中には、他大学には見られないユニークな授業課題や入試科目の導入、たえず新しさを追究する指導方法への取り組みなど、自ら率先して情報デザイン教育の基盤形成づくりを牽引し、専門分野の未来像を指し示してくださいました。
また、田名網先生はイラストレーション、アニメーション、グラフィックデザイン、映像、立体など、多様な表現領域を自在に越境し、ファッションや音楽とも融合しながら独自の世界を切り拓くことで、アーティストとして唯一無二の存在感を日本のみならず世界各地に発信されました。
10月23日(木)から11月2日(日)まで、望天館1階で開催された「タナアミ先生 楽園回想記 —田名網敬一の創造教室—」は、田名網先生が在職中に制作された作品を中心に、授業や大学運営などの関連資料、本学通信教育部のテキスト、膨大な数の作品集、出版物などを紹介する展覧会です。

田名網先生の年表や田名網先生と関わりのあるアーティストや作品、モチーフ、土地などを縦横無尽に結んだ「田名網陀仏曼荼羅」から、田名網先生が学生に個人的に出した課題とそのコメントまで、様々な角度から田名網先生の足跡を辿る展示が行われました。

ホームカミング・パーティー当日は、直心館で卒業生によるトークイベント「空飛ぶ田名網教室」を開催。田名網先生と関わりの深い榎本了壱さん、束芋さん、佐藤允さん、抜水摩耶さん、宮田有香さんの5名が登壇し、田名網先生の作品や写真、それぞれの作品をスクリーンに投影しながら思い出を振り返りました。印象的だったのは、佐藤さんが田名網先生について「自宅を見せてもらったとき、絵を描いているスペース以外のすべての空間に絵が置いてあって、この人は本当に絵が好きなんだなと思った。その真っすぐさに、ぼくも影響を受けている」と言われていたこと。そのエピソードだけで、田名網先生の芸術にかける思いが伝わってきますね。
トークイベントは、登壇者それぞれから見た田名網先生の印象を話したり、「田名網先生から受け継いだものは?」という質問に答えたりと、田名網先生と実際に話したことがない学生も先生のお人柄を知ることのできる暖かい時間でした。
ちなみに、ホームカミングデーでは「田名網敬一オリジナルデザイン手ぬぐい」を来場者のみなさんに配布していました。田名網先生の作品が、多くの卒業生の手に渡り、その想いが引き継がれていくと思うと胸が熱くなりますね。
懇親会もお開きの時間になり、「今日はいかがでしたか」と聞いてみると、みなさん声を揃えて「同窓生や先生方とお話しできました」と話してくれました。直心館に集まった卒業生たちの笑顔からは、久しぶりの再会を心から喜ぶ様子が伝わってきました。卒業生が営むお店の料理を味わい、田名網先生を偲ぶイベントに参加し、世代を超えた交流が生まれる。まさに佐藤学長が語った「繋がっている喜び」を実感できる一日となりました。




同じ校舎で学び、同じ空気を吸った仲間たちとの絆は、時を経ても色褪せることはありません。たくさんのご参加、ご支援をいただき、ありがとうございました。卒業生のみなさん、来年も、この大学に帰ってきてくださいね!

(文:上村裕香 撮影:吉見崚)
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上村 裕香Yuuka Kamimura
2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。