REPORT2021.03.24

教育

企業や自治体が抱える課題に取り組む。― リアルワークプロジェクト説明会(2021年度 前期)

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  • 京都芸術大学 広報課

2021年3月22日(月)18時より、リアルワークプロジェクトの説明会(在学生向け)が開催されました。今回は感染症対策を講じ、教室とオンライン(ZOOM)とのハイブリッドでの開催となりました。昨年はオンラインのみでしたので、教室での説明会は久しぶりのこと。教室の参加者は少なかったですが、オンラインでは200名以上の学生が視聴していました。

リアルワークプロジェクト(社会実装プロジェクト)とは、企業や自治体が抱える課題をアート・デザインの力で解決し「学生自身が社会とつながる」本学の名物プログラムです。

本学には、企業や自治体から年間100件以上の依頼が届きます。そのような実際の「仕事」を通じて、学生たちが社会に出て行く時に必要となる力「= 社会人基礎力」を身につけるための実践的なプログラムとなっています。

※完全オンラインでの説明会となった昨年5月1日に公開したものです。

 

リアルワークプロジェクト(社会実装プロジェクト)には、大きく以下3つの種類があります。


領域横断プロジェクト(プロジェクト演習科目)
所属する学科、コース、学年を問わず、内容や時期から仕事を選び参加が可能なもの。学科の分野と異なる角度から制作やリサーチを行い、社会における芸術の役割や可能性をリアルに体験します。ビジネス視点が身につくことで、卒業後の進路にもつながります。

学科プロジェクト
所属する学科やコース単位のプロジェクトで、専門分野の学びをさらに深め、社会で実践的に展開する力を身につけるというもの。専門性を活かし、企業や自治体が抱える問題を解決します。「ニーズを捉え、課題を発見し、リサーチする」という流れを繰り返し、仕事の厳しさとやりがいを学びます。

アーティストプロジェクト
共通工房ウルトラファクトリーを使用し、国内外で活躍するアーティスト・デザイナーとともに作品等を制作するもの。学科やコースを問わず参加可能です。プロの現場で求められるレベルを知り、世界に届く作品が生まれる裏側のプロセスと厳しさを実践的に学びます。


今回の説明会は、学科コースや学年を問わずに参加可能な「領域横断プロジェクト」で、2021年度前期は以下ラインナップとなりました。
 

  • 南座看板制作プロジェクト

  • 学園祭お化け屋敷プロジェクト

  • 粟田大燈呂プロジェクト

  • フコクアトリウム空間プロデュースプロジェクト

  • VIVAプロジェクト

  • さとゆめプロジェクト

 

各プロジェクトの概要と昨年の様子をご紹介します。

南座看板制作プロジェクト

南座は歌舞伎発祥とされる四条河原町にあり、約400年の伝統を持つ由緒ある劇場です。2018年11月に耐震補強工事が完了し、伝統を保ちながら新しいイベントもできる劇場として新開場しました。横幅10メートルを超える一文字看板の制作を行い、地域性や創造性などを学ぶことができます。

(撮影:高橋保世)

南座正面の一文字看板を制作するプロジェクトは、2018年から行われています。看板制作に携わる職人の減少を受け、伝統技術の保存・継承を目的としてスタートしました。学生たちにとっては、プロの看板制作者でもなかなか味わえない貴重な経験となっています。

5作目となる前回では、2021年1月元日(祝)から南座で始まる「初笑い!松竹新喜劇 新春お年玉公演」の一文字看板を制作。そのサイズは、幅10.3m、高さ1.5m という巨大なもの。新春の華やかさを色鮮やかに表現しながらも、周囲の景観や歴史ある劇場と調和するよう配慮がなされ、色合いには特に工夫が施されています。テレビや新聞にも取り上げられ、様々なメディアで報道されました。

撮影:高橋保世

新春を彩る大看板! ― 京都・南座「一文字看板」制作プロジェクト
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/750

 

学園祭お化け屋敷プロジェクト

学園祭の大人気企画である「学園祭お化け屋敷」の企画・立案のプロセスを学ぶことができるプロジェクトです。「人はなぜ怖いものに惹かれるのか」「本当の恐怖とは何か」をホラー映画やWebなどを使ったグループワークで学びながら、企画の「軸」となるストーリーを作り、お化け屋敷内の部屋の場面設定や内装を企画することができます。

学園祭で話題となった昨年の「ナイトキャンパスツアー」は、フジテレビの朝の情報番組「ノンストップ!」やTBSの「グッとラック!」でも紹介されるなど、オンラインを生かしたその取組は、とても話題になりました。

案内人の神崎誠さんによる「ナイトキャンパスツアー」はこちら。
https://youtu.be/Fu9VswiDrLw

 

粟田大燈呂プロジェクト

天保3年以前に途絶えたといわれるこの「夜渡り神事」を、180年ぶりにアートで復活させ今回で14年目。単なる制作だけではなく、神社や周辺地域の歴史・伝承等を調査、京都の歴史・芸術・文化を掘り下げ、そこから見えてくる日本人の感性を捉えなおし、モノづくりの神髄を学びます。

京都市東山区にある粟田神社における「粟田祭」の行事の一つ「夜渡り神事」にて巡行する「大燈呂(ねぶた)」を制作するプロジェクト。毎年2~5基ほどの大燈呂を制作しています。

ぐるっと干支が一周し、13年目となった昨年の粟田祭は、新型コロナウイルス感染拡大のため、規模を大幅に縮小して齋行されることとなり、「夜渡り神事」は残念ながら中止に。通常の半分ほどの大きさの大燈呂を2基制作し、神社に奉納いたしました。

大燈呂の勢いで大きな厄を祓いたいと考え、粟田神社の御祭神である牛頭天王と粟田地域に古くから根づいている刀鍛冶の2つのモチーフとし、見てくれた人に元気や活力が湧いてくるようなデザインをという想いが込められています。また、もう一方のモチーフは、神大市比売命(カムオオイチヒメ)、大年神(オオトシノカミ)、宇迦御魂神(ウカノミタマノカミ)という3体の家族の神様。はしゃぐ子供たちの姿や見守るような母の様子から「人の温かさ」を感じ取っていただければ、との想いで制作されました。

粟田神社に奉納された、昨年制作した2基の大燈呂。
牛頭天王と刀鍛冶
神大市比売命


疫病退散を願う祈りを込めて ― 180年ぶりにアートで復活! 粟田大燈呂プロジェクト
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/706

 

フコクアトリウム空間プロデュースプロジェクト

JR大阪駅前にある大阪富国生命ビルの地下2階から地上4階にわたる吹抜けアトリウム空間「フコク(生命)の森」をアートでプロデュース。今回で7年目となるこのプロジェクトでは、夏季にライブペインティング形式の巨大壁画制作、冬季にはスノーマンをテーマに盛り込んだ本格的な立体オブジェの制作を行います。

(撮影:大河原光)

昨年の夏季は残念ながら中止となりましたが、冬季は一年を通して北の夜空に輝く「こぐま座」をモチーフにした作品を制作。星座のしっぽの先に位置する北極星が、大きく光り輝きます。この北極星が明るい未来への道しるべとなり「みんなのハートがつながり、未来へと進んでいけるように」との想いが込められているそう。

明るい未来への「星の道しるべ」 ― フコクアトリウム空間プロデュースプロジェクト
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/733

 

VIVAプロジェクト

季節を問わず楽しめる京都市内唯一の屋外型スケートリンク「VIVA SQUARE KYOTO」をより一層と盛り上げていくということを目的としたプロジェクトです。
班活動やグループワークを行う中で、企画・デザイン・プレゼン・制作といった、実施までの一連を全て行います。学外企業へ向けて貴重な経験を培うことができます。提案した企画は夏のイベントから実施の予定です。このプロジェクトは2020年度より取り組まれ、今年で2年目となります。学外へ向けた活動&新しい事へのチャレンジにはピッタリなプロジェクトです。

VIVA SQUARE KYOTO(ビバスクエア京都)の「くまのがっこうアイスリンク」が、2020年11月21日(土)にオープンし、その空間デザインやスケートリンクを盛り上げるためのイベントを企画しました。新規案件のため、特に難しかったプロジェクトの一つ。

「くまのがっこう」のキャラクターを用いて、企画、デザイン、プレゼン、制作までを担当。学生たちが提案した企画は「心の距離が縮まる空間 “愛す Link”」。 アイスリンクで愛が通じ合う(Link)という意味が込められています。

心の距離が縮まる空間 “愛す Link” ― 「くまのがっこうアイスリンク」空間デザインプロジェクト
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/730

 

さとゆめプロジェクト(新規案件)

今年度前期から新たにスタートする地域未来創造プロジェクトです。「株式会社さとゆめ」と一緒になって、私たちが日頃から見慣れている街の身近なモノや人、その地域で育まれてきたコトなど様々な資源をリサーチし、どのように社会に向け発信していくのかを探求します。

そして、詳細の説明はありませんでしたが、後期には「HAPii+2021 ホスピタルアートプロジェクト」も控えているそう。

【後期開催】HAPii+2021 ホスピタルアートプロジェクト

病院の空間をアートやデザインの力で、心地よい空間に変えることをはじめ、その場所に一番長く滞在する医療スタッフの労働環境の改善することを目的としたプロジェクトです。

(撮影:大河原光)

前回は、2021年1月、京都大学医学部附属病院に開設した「こども医療センター」を施工。高度な医療を行うだけでなく、入院患者や家族のQOL(生活の質)にも配慮した2フロアのゆとりある病棟で、手掛けたのはなんと壁面数100ほど、処置室3つと施工範囲は過去最大。

医師や職員の方々が晴れやかで、とてもうれしそうな表情が印象的でした。患者さんだけではなく、働く方々の職場環境という観点も大切なポイントになります。

こちらもテレビや新聞等でさまざま取り上げられ、話題になりました。

撮影:大河原光
撮影:大河原光
撮影:大河原光


闘う命と生きつづけるアート。― 京大病院ホスピタルアートプロジェクト
https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/793

 

説明会の最後に「Q&A」でも解説していましたが、複数のプロジェクトへの同時参加はできません。広く浅くではなく、きっちりと深く参加していただくことが自身の学びとしても重要ですし、所属する学科コースの学業とも両立できなければ意味がありません。

とはいえ、このような魅力的なラインナップですと、どれか一つと言われても迷ってしまいますね。さらにこのほか、ウルトラファクトリーにおけるアーティストプロジェクトも2021年度はなんと12本(!?)もあるのだそう。

ウルトラファクトリーの説明会や、今回は在学生向けのものでしたが、新入生向けの説明会は4月に行われますので、またレポートしたいと思います。


社会実装プロジェクト 特設サイト
https://www.kyoto-art.ac.jp/project-2021/

 

さて、最後に今回の説明会のポスターに改めてご注目。
ラインナップされたプロジェクトへのオマージュが感じられる素晴らしいデザインですね。

デザイン:情報デザイン学科2年生 坪久田千春さん

 

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