INTERVIEW2021.02.24

アート

御村紗也 ― KUA ANNUAL 2021「irregular reports:いびつな報告群と希望の兆し」

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  • 京都芸術大学 広報課

大学院を含め、通学課程の全学生から選抜された作家による企画展 KUA ANNUAL 2021 「irregular reports いびつな報告群と希望の兆し」。そのプレビュー展が、2020年12月に本学ギャルリ・オーブにて開催されました。

キュレーターに服部浩之(インディペンデント・キュレーター、秋田公立美術大学准教授)を迎え、150名を超える応募の中から幅広く服部が注目したプランをピックアップし、合計16名と1つのプロジェクト、17組28名が採用されました。

プレビュー展を終え、2021年2月に開催予定の「KUA ANNUAL 2021(東京展)」に向けて、4組のアーティストに話を伺いました。

今回は、御村紗也さんを紹介します。

御村紗也さん

大学院 美術工芸領域 油画分野 修士課程1年

「日に照らされてできた影、風に揺れる木々の音、肌で感じる温度、空気の香り ※」。御村紗也は何気ない日常の光景を収めた写真を元にドローイングを行い、そのドローイングをシルクスクリーンやペインティングによってキャンバス上に再現する。作品の表面は、樹脂を用いた光沢面や下地材の粒子が粗い面、または水性アクリルによるマットな面など、ひとつの画面の中に異なったテクスチャーを混在させることにより、人を取り巻く環境にある様々な要素を表現している。浮遊感と洗練された雰囲気を併せ持つこれらの作品は、彼女の身の回りにある日常の断片を掬い上げたものでもある。
※作家のステイトメントより。
[文、原田桃望(アシスタント・キュレーター)]
http://kuaannual.com/2021/

日常にある些細な光景や漂う空気、五感で感じる雰囲気を作品に

《look》《see》《flowers》《penetrate》《thaw》《flamingoes》《whisper》 アクリル絵具、ミクストテクニック、パネル


陽に照らされた影や風に揺れる木々の音とか、日常にある些細な光景や現象を作品のコンセプトに取り上げています。普段の生活にある何気ない光景やさまざまな現象を「美しい」と感じ、それこそ必要なものだと感じているんです。

そういう些細なことを見過ごしてしまって、気づかずに生きている。私はそれを手に取れるような形にしたくて、作品を描いています。

高校時代から油絵を描き始めたのですが。その頃からずっとそういう風景を描きたいと思ってきました。

iPhoneで気になったものというか、ちょっとでも心が揺れたものをパッとすぐに撮るようにしています。それを後からもう一度見返して、この部分に多分惹かれたんだろうなとか、部分ではなく全体の風景に惹かれたんだななどと考えて、モチーフにしています。

 

デザイン的な表現を個性に

さまざまなテクスチャーを混在させる手法は、昨年の卒業制作の頃から始めた表現です。アクリルやシルクスクリーン、樹脂などの様々なメディウムを使用することで、複雑な環境を、つまり温度や湿度、匂いや音というようなものを表現できたら、と考えています。

布が一部見えている作品などは、最近作り出したものです。また、シルクスクリーンで刷っている部分の加工方法なども KUA ANNUAL のミーティングを通して、ブラッシュアップしてきた表現です。月に一回程度のミーティングで、指導のヤノベケンジ先生やキュレーターの服部先生、髙橋耕平先生、そして山城大督先生や林田新先生などからいただいたコメントを参考にしながら制作しました。

実はこれまで、「デザイン的すぎる」という指摘をされることもあったのですが、この頃は「作品の作り方などもデザイン的で面白いね」とも言われるようになりました。以前はデザイン的な、テクニカルな部分に偏りがちなのかもしれないと気にしていたのですが、逆を言えば、それが「面白さ」として捉えていただけるようにもなってきたので、却ってそれが私の個性として活かせる方法もあるんだなと感じました。

 

完成度が高いがゆえ、求められる「破綻」

先日のプレビュー展での講評会では「もっと破綻してほしい」と指摘され、理解できました。自分でもそれがまだ弱いと思っていて、全部をきれいにまとめようとしてしまっている点を気にしていたんです。だからといって、いま思いついているようなやり方でパッとやってしまったら、普通すぎるなと思いますし、大きな課題だと思っています。


東京展では、もう少し展示空間を意識したレイアウトもしっかりと考えたいと思っています。先生方とのミーティングでも「作品ごとの関係性や横のつながり、広がりをもっと考えよう」とアドバイスをいただいたのですが、たしかに私は個々の作品を「ひとつの作品」として作っていたなと思い知らされました。

大作と小品との兼ね合いとか、作品を一列にずらっと並べるのか、ランダムに並べるのか。そのために作品全体に通底するコンセプトを定めて、展示空間とつなぎ合わせるような作業をしたいと考えています。コンセプトといっても、それを鑑賞者に説明的に示すのではなくって、自分の中に持っておいて、作品同士の関連性が引き締まるようにしたいと思います。

(撮影:顧剣亨)

KUA ANNUAL 2021「irregular reports いびつな報告群と希望の兆し」本展

 

会期 2021年2月23日(火)~26日(金)※予定
9:30~17:30
場所 東京都美術館

https://www.kyoto-art.ac.jp/kuaannual2021/

 

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    連絡先: 075-791-9112
    E-mail: kouhou@office.kyoto-art.ac.jp

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