COLUMN2020.07.25

京都

蒸し暑い夏の京都盆地と瓜生山学園の取り組み ― 瓜生山歳時記#47

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 季語が生まれたのは京都ですから、真夏の蒸し暑さを表現する季語が豊富にそろっています。歳時記を開くと、「暑し」という季語から始まり、「大暑」「薄暑」「極暑」「炎暑」「溽暑」と続き、「灼く」という季語があって、その次に「涼し」とあります。真夏に涼しさを感じるというのが、日本の文化です。

 新型コロナウイルスによる感染症の影響は、学園の活動にも大きな影響を与えています。とくに京都盆地の夏の気候は高温多湿で、エアコンがないと学生の活動に支障があります。しかし、感染症対策としては部屋の窓を開けての通気を必要とします。しかも、人が集まるところではマスクをするようにという指導があります。

 これに関連して、学園内ではさまざな安全のための準備がなされています。その一部を紹介すると、エタノールを入り口などに用意して手を消毒してもらい、緩衝法によって生産された次亜塩素酸水による消毒対策を行います。メーカーのしっかりしたデータを基に選択した方法です。

 屋外では、適度な距離が保たれる場合には、マスクを外すように国が指導しています。それを理解して、お互いにそのことを認め合うよう、教職員、学生にお願いしながら学園内の活動を少しずつ可能とする登校可能日を設定します。卒業制作に励む大学4年生や大学院生のために必要な対策です。


涼しさや鐘をはなるゝかねの声    蕪村
 

 「涼し」という季語の傍題には、朝涼(あさすず)、夕涼、晩涼(ばんりょう)、夜涼、涼風(りょうふう)、涼風(すずかぜ)とあります。夏の暑さの中にあってこそ感じられる涼気をいう季語です。朝夕の涼しさ、水辺の涼しさなど、俳句では暑さの中のかすかな涼しさを捉えて夏を表現するのです。本格的に秋の涼しさを感じる立秋以後には、まず、新涼という季語が登場します。

 今年はいつもとは異なる世界の状況の中で、瓜生山学園でも夏休み期間にさまざまな活動がある可能性があります。通信教育部では昨年度の卒業式を中止ではなくて延期しました。それを8月になるとできるようになりました。同時に卒業制作展も開催します。

 ようやくキャンパス内での大学の活動が少しずつ形を変えて始まろうとしています。皆さんもくれぐれも健康に留意して夏を乗り切ってください。


八の間に涼風とどく登り窯      和夫

入構前に非接触型赤外線体温計等にて検温。各建物の入り口や各フロアには、手指用の消毒液等を設置。

各建物の入り口や各フロアには、手指用の消毒液等を設置。
換気を徹底するとともに、事務局や研究室など会話を要する場所は、アクリル板や透明ビニールカーテンの設置し、飛沫感染を予防。

 

(文:尾池和夫、撮影:高橋保世)

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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