COLUMN2020.04.24

瓜生山の紅枝垂と江戸彼岸ー瓜生山歳時記#44

edited by
  • 尾池和夫
  • 高橋 保世

(メインビジュアル:入学式が行われる予定だった瓜生山キャンパス直心館(講堂)から見える直心塔と枝垂桜。)


 昨年の4月にも桜のことを紹介した。毎年、入学式には満開の桜や散り始めた桜のことを式辞で触れる。しかし、今年は特別の桜の時期となり、入学式は通学部、通信教育部ともに5月2日に延期されて、式辞もまだ内容が定まらない。その頃には葉桜が緑豊かな瓜生山を飾っているに違いない。と、ここまで4月上旬には書いていたが、それでも高橋さんへの課題が届くのが遅くなって申し訳ないことになり、そして、結局、入学式は中止になった。しかし、桜は確実に葉桜になっていく。

 瓜生山は奥深い山である。自然、山、生物好きという方が、「瓜生山歩人」というブログで、京都周辺山歩きの情報を発信している。その中で、瓜生山の奥深さを、素晴らしい写真とともに詳しく紹介し、東の石切り場の東斜面に見える江戸彼岸のことを説明している。それを引用する。

 「日本には大雑把にヤマザクラ、エドヒガン、マメザクラ、チョウジザクラなどの種類が自生しています。広く植えられているソメイヨシノや様々な八重桜などの多くは、江戸時代の昔から人の手によって100を越える多様な品種が作出、維持されてきたものです。これらをサトザクラと総称します。《中略》一方、おなじみのソメイヨシノはオオシマザクラとエドヒガンとの雑種に起源するといわれています。エドヒガンの大きな特徴は春、葉が出る前に花が咲くことです。これはソメイヨシノにも共通し、エドヒガンの性質に由来するのでしょう。対して、ヤマザクラそして多くのサトザクラは葉と花が同時に展開します。」

 昨年紹介した三大桜といわれる神代桜、三春滝桜、薄墨桜はすべて江戸彼岸である。枝垂桜も江戸彼岸に由来する。瓜生山の石切り場にある江戸彼岸がその実例で、近くでは巨木が何の木がわからないが、木に近づくと地面に多数の桜の花が落ちているという。大きな幹が3つに分かれ、胸高幹周は実測値で3m67cm。樹高は目測で25mはあるとブログには書かれている。

 

枝垂桜しだれざる枝なかりけり   草間時彦

 

 江戸彼岸は京都大学北部構内にある植物園の中にも見事に咲く。昔、京都大学に居たときには咲いた頃を見計らっては見に行った。

 その江戸彼岸の遺伝子を継ぐであろう枝垂桜が、瓜生山学園に新しく3本植えられたのは、徳山豊理事長の就任記念であった。入学式は延期になったが、今年も「徳ノ桜」「山ノ桜」「豊ノ桜」と名付けられた3本の枝垂桜が、みごとに花を付けて、学生たちの入学を待っている。

 

紅しだれくぐりて来る京ことば     和夫

 

「徳ノ桜」:今年は開花が早く、気づいた時には葉桜に
大階段の桜の木
京都を一望できる能舞台横のテラスでも桜吹雪が美しく舞っていた

◎参照:「瓜生山歩人」http://urysan.blog.jp/

(文:尾池和夫、撮影:高橋保世)

  • 尾池和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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