■メインビジュアル:蕾が膨らむ瓜生山のヒカンザクラ(緋寒桜)
植物の季語の中で「芽」という字が入っているものをあげると、三春では、木の芽という一般的な季語、初春では、桔梗の芽、薔薇の芽、牡丹の芽、仲春にはたくさんあり、楓の芽、草の芽、山椒の芽、たらの芽、蔦の芽、芽立ち、真菰の芽、ものの芽、柳の芽、そして晩春になると「花」が多くなって「芽」のつく季語はない。この中で木の芽はすべての樹木の芽を指しており、「ものの芽」は、草の芽が地中から萌え出ることとその芽の総称である。
三春の「木の芽」は「このめ」と読む。その傍題には、芽吹く、芽組む、木の芽張る、名の木の芽、雑木の芽、木の芽山、木の芽時、木の芽冷、木の芽晴、木の芽雨、木の芽風、芽起こしとたくさんの季語が歳時記に掲載されている。冬を抜けて春の訪れを実感する木の芽である。
また、植物以外の項目にも「芽」が登場する。例えば生活の項目では、木の芽和、山椒和、木の芽味噌、山椒味噌、木の芽漬など、とても美味しいそうな季語である。山椒の若葉をすり、砂糖、白味噌を混ぜ合わせた山椒味噌、木の芽味噌とも言うが、これで筍、蒟蒻、烏賊などを和えるのが木の芽和である。木の芽漬は、山椒の柔らかい葉を塩漬けにする。山椒の葉と昆布を刻んで醤油で煮るのもある。
隠岐や今木の芽をかこむ怒濤かな 加藤楸邨
植物学では、茎の先端、幹と葉の間に発生する未発達の枝のことを指しており、形成されたのち、休眠状態に入る場合、すぐに新しい枝を形成する場合があるという。温帯および冷帯において、芽は芽鱗(がりん)という葉の変形したものできつく包まれている。芽鱗はゴム状の物質で覆われて保護されている。芽が成長すると脱落して、成長する幹の表面に痕跡を残し、芽鱗痕と呼ばれている。この痕跡で枝の年齢を決定する。芽鱗痕と次の芽鱗痕の間が一年間に成長した区間である。
芽の字の声符は動物の牙(が)をとり、艸に牙で芽となる。花の蕾も一緒に芽という。芽胞というのは最初に出てくる葉や花の芽が牙の形をしていることによる。つまり、芽という字は、植物の種子、葉、花の蕾の最初の状態を指す字である。その意味を拡張して、事物のはじめの状態を萌芽という
京都樹木探検塾塾長の橋本恵さんの「瓜生山の樹木」(GREEN AGE誌、2018年7月号)には、瓜生山の赤松も紹介されている。橋本さんの文にある瓜生山で観察される樹木の表では、常緑樹として下瓜生山学園の赤松を含めて、馬酔木、カクレミノなど19種類が掲載され、落葉樹としては、ウツギ、エゴノキ、栗、タラノキ、辛夷、ネムノキなど56種類が掲載されている。
ものの芽や高みに移る鳶の笛 和夫
【協力】京都天ぷら かふう
住所:京都府京都市左京区吉田二本松町54-7 / TEL:075-761-9060
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尾池 和夫Kazuo Oike
1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。