COLUMN2020.06.25

京都

梅雨の季節の京都盆地と学生たちの活動 ― 瓜生山歳時記#46

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

(メインビジュアル:映画学科の撮影スタジオや研究室のある「高原校舎」)


 京都盆地の梅雨の季節は、ひときわ蒸し暑い日が続く。今年は、感染症対策が重なって、余計に梅雨の季節の厳しい状況がある。

 梅雨の季節には、さまざなな季語が登場する。まず、「芒種」である。二十四節気の一つで、新暦六月五日ごろにあたり、禾(のぎ)のある穀物を播く時期の意からこの季語が生まれた。田植えが始まり、天候は梅雨めいてくる。つぎに入梅である。梅雨入(ついり)、梅雨きざすとも詠む。太陽の黄経が80度に達したときをいい、6月11日ごろにあたるが、実際にこの日から梅雨が始まるわけではなく、各地の過去の平年値を見ても6月初旬から中旬にかけて梅雨に入ることが多い。今年2020年の京都の梅雨入りは6月10日であった。

 梅雨の傍題は多い。黴雨、荒梅雨、男梅雨、長梅雨、梅雨湿り、走り梅雨、迎へ梅雨、送り梅雨、戻り梅雨、青梅雨、梅雨の月、梅雨の星、梅雨雲、梅雨の雷、梅雨曇り、梅雨夕焼などがあるが、これらをそれぞれ説明してみると日本列島の特徴が理解できる。日本列島は広い。北海道では明確な梅雨がない。沖縄では早くから梅雨入りする。

 梅雨の期間には「梅雨寒」などの季語がある。また梅雨の期間に晴れ間があると「梅雨晴」と言うが、それを「五月晴」とも言う。梅雨の最中にも晴れ上がることがあるのを呼ぶのであって、入梅前の五月の好天にこの言葉を使うのは間違いである。そして、梅雨明である。平年は7月下旬までに全国で梅雨が明ける。雷鳴が轟くと梅雨が明けるともいわれている。


わが庭に椎の闇あり梅雨の月  山口青邨


 梅雨空の蒸し暑い京都盆地の気候と感染症対策の重なりにも負けずに、学生たちが工夫して活動している。キャンパスに登校可能な日を設定し、登校することのできる学生たちを受け入れるための安全策を、教職員が分析しながら導入している。

 そのような状況の中でも、学生たちの自主的な活動がある。例えば「ぼくらのみらい」と題する素晴らしいアニメーション作品を完成した。アマビエに導かれ、新型コロナの終息を願う内容で、Zoomで開催された大学主催のオンラインお茶会で連絡先を交換し、いくつかのコースの学生が参加した。

 同窓会や学外からの支援も多い。例えば、映画学科の活動である映画「のさりの島」は、京都芸術大学と天草市の協力により完成し、今年7月に天草での完成披露試写会が予定されていた。これも延期されたが、この映画を宣伝するための見事な案山子が天草にできている。現地の方々が公開を待ち望んでくれているのが伝わる。

 野外でも、屋内でも、学生たちが安全に活動できる日が、1日でも早く来てほしいと願っている。


魔除獅子梅雨の礎を遠目して    和夫

 

「高原校舎」の野外手洗い場
映画「のさりの島」の舞台、天草の宮地岳(かかし村)に設けられた映画の宣伝掲示小屋
登場人物を模した案山子
山本起也監督に届いた、かかし村の村長・碓井氏からの手紙


4月に入学した新入生の有志11名がリモートで制作したアニメーション『ぼくらのみらい』。疫病よけに効くとされる妖怪アマビエをテーマとした作品で新型コロナウイルスの終息を願った。


(文:尾池和夫、撮影:高橋保世)

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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