COLUMN2020.05.25

京都の躑躅と瓜生山登山部の活動ー瓜生山歳時記#45

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  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 躑躅(つつじ)は晩春の季語であり、山躑躅、蓮華躑躅、霧島、深山霧島などとも詠まれる。

 京都の春、あらゆる道ばたに桜の花があり、いろいろの種類の桜を楽しむ。花が散って新緑の5月になるころ、京都盆地にはさらにさまざまな花が見られる。その中に躑躅やその仲間の満天星(どうだん)、杜鵑花(さつき)、石楠花(しゃくなげ)などもある。

 躑躅は、春から夏にかけて漏斗状の花を咲かせるツツジ類の総称である。日本列島の各地に自生し、花の色は真紅、白、淡紅などさまざまである。万葉集の時代から日本人にはなじみの深い花である。

 石楠花は初夏の季語で、ツツジ科の常緑低木である。晩春から初夏にかけて、枝先に鐘の形の花が集まる。日本では高山、亜高山生の種が6月から8月上旬に咲き、栽培されている西洋石楠花は町中でも見られる。こちらは中国雲南省からヒマラヤにかけての野生種を基に作り出された。

 満天星の花は、満天星躑躅(どうだんつつじ)とも詠まれ、仲夏の季語である。ツツジ科の落葉低木の花で、自生するが垣根にもよく用いられる。ドウダンは灯台の転訛(てんか)で、枝の分かれ方が灯台の脚に似ている。杜鵑花は、皐月躑躅(さつきつつじ)とも詠まれて、仲夏の季語である。

 

石楠花や朝の大気は高嶺より  渡辺水巴

 

 通学路の住宅地にも躑躅が咲く。茶山駅近くの居酒屋「づぼら」の女将が、バイトが無くて大変な学生さんにと、今、無償でご飯を提供してくださっている。

 瓜生山の近くでは曼殊院や詩仙堂の霧島躑躅が知られている。曼殊院には、狩野永徳の襖絵があり八窓軒茶室がある。詩仙堂では、門をくぐると正面の大きな霧島躑躅が迎えてくれる

 瓜生山学園には特徴的に部活動もある。例えば「瓜生山養蜂部」は、京都芸術大学の学内に蜜蜂の巣箱を置いていて、facebookやinstagramで情報を発信しながら、蜂蜜の販売も手がける。写真とともに蜜蜂の四季の姿の解説が楽しい。「芸術教養学科登山部」、通称瓜生山登山部もある。2017年からの活動で、メンバーは勝手にチームを組んでは瓜生山の山頂を目指して登山する。とくに装備を必要としない登山部で、学園内のエレベータを利用して学園の「山頂」である「能舞台」を目指す人は、ハイヒールでも登山できる。

 このような活動が伸びやかに行える日が早く来てほしいと願いながら、この文を在宅の仕事で書いている。人類がまだ滅亡しないためには、新型ウイルス対策で「うつる心配より、うつさないこと」を基本に、学生、教職員が協力して、この5月を過ごしたい。

 

躑躅から線路始まる始発駅     和夫

 

瓜生山もすっかり新緑の季節。入構制限が解除されたときには散策にでかけるのも楽しい
白いつつじ
淡紅色のつつじ
環境デザイン学科・プロダクトデザイン学科の研究室がある松麟館(しょうりんかん)にも、たくさんのつつじが咲いている

瓜生山の石楠花(しゃくなげ)

■瓜生山養蜂部:インスタグラム

(文:尾池和夫、撮影:高橋保世)

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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