REPORT2020.06.12

歴史

東大阪から始まる多文化共生 ― 東大阪国際交流フェスティバルレポート

edited by
  • 原田 美菜
  • 水原 優

(取材・文:文芸表現学科4年生 原田美菜、水原優)

 京都芸術大学 文芸表現学科 中村純ゼミ(編集・取材執筆)では、「ことばと芸術で社会を変革する - SDGs(※)の実践」をテーマに取材執筆をして、発信する活動を行っています。
※SDGs(Sustainable Development Goals)

 2015年9月の国連サミットで採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」において記載されている2016年から2030年までの国際目標。地球上の誰一人として取り残さない(leave no one behind)持続可能な世界を実現するための17のゴール・169のターゲットからその目標は構成されています。
※京都芸術大学SDGs推進室:https://www.kyoto-art.ac.jp/info/research/sdgs/

 2019年度後期は、多文化共生に美術・文芸の力でアプローチしています。今回は、2019年11月3日、東大阪にある布施三ノ瀬公園にて開催された第24回東大阪国際交流フェスティバルの様子をレポートします。今回、私たちの取材の焦点は「食・衣装」です。
 

ちがいを豊かさに!~多民族共生のまちづくりは東大阪から~

 このフェスティバルは毎年11月3日の「文化の日」に、「わたしのまちはアジアのまち わたしのまちは世界のまち」を合言葉に開催されています。

テーマは、「ちがいを豊かさに!~多民族共生のまちづくりは東大阪から~」。根本にあるのは多文化共生への意識です。実際に、沖縄、朝鮮半島、中国、ベトナム、フィリピンなどの東アジア各国の歌や踊り、民芸品、料理などがたくさん出展されていて、たくさんの在日外国人の方が交流を求めて参加していました。

 そもそもこの祭りが始まった目的は、外国人労働者の人権の向上、そして民族同士の交流によって誇りを見失わないようにすることだったそうです。
 

食文化にみる、ハレ(非日常)とケ(日常生活)

 日本のお祭りでも、チーズドックやナンやインドカレーなど、各国の屋台料理を見かけることが多くなりましたが、東大阪国際交流フェスティバルでは、私たちも初めて目にする珍しい屋台料理もありました。

サモサ2個入り(400円) 出展者:インド料理ガンガジ

 サモサはインド料理の軽食のひとつ。現地では屋台で売られていることが多く、小腹がすいたときにおやつ感覚で食べられているとのこと。

 ジャガイモ、タマネギ、えんどう豆、羊の挽肉などを茹でて潰し、クミンやターメリック等の香辛料で味付けします。それを小麦粉と食塩、水で作った薄い皮で三角形に包んだあと、食用油でサクッと揚げます。
生地のモチモチ感とカレー風味の具は、日本のカレーパンとも違う面白い食感と味です。

タンの炭火焼き(400円) 出展者:東大阪朝鮮高級学校オモニ会

 タン(ホルモン)や焼肉は今では日本人も好んで食しますが、明治時代以降までは日本の食習慣にはありませんでした。しかし、戦前・戦後で在日コリアンの方が焼肉の魅力を広めたことにより、今のホルモン・焼肉が存在します。

 厚めに切った牛の舌を炭火でじっくり焼き上げ、タレで味付けした一品。お肉自体に炭火の香りが焼き付いており、口に入れるとふわりと鼻から抜けていき、肉も厚く食べ応えが充分ありました。牛タンは日本のお祭りでも定番と言ってもいいほどよく見かける食材ですが、この量でたったの400円というのに驚きました。
 こちらの屋台ではタレと塩の二種類があり、塩の場合は、レモンをかけていただきます。

羊肉の串焼き(200円) 出展者:焼肉艾(あい)ちゃん

 こちらは、中国屋台で人気の一品。中国では、羊肉は大変メジャーなものだそう。

 一口サイズにカットされた羊肉にクミン、一味唐辛子、山椒などのスパイスで味付けされています。羊肉は味にクセがありますが、スパイスによって、誰でも楽しむことができるようになっています。肉自体の味もスパイスの味もとても濃く、旨みが溢れているので、お酒のあてにも丁度いい一品です。

 例にあげた三品以外にも、韓国の焼肉〈ハラミ・カルビ〉(300円)、メキシコのタコス(500円)、日本のコロッケ(100円)やおでん(200円)など、参加者たちは楽しそうに食事をしていました。

 私たちが一番に感じたことは、その値段の安さです。日本のお祭りでは、屋台料理は決して安いものではありません。それでも、「お祭り」という場の雰囲気に、私たちはお金を出してしまいます。ここには、日本の「お祭り(ハレ=非日常)」とは違った「日常(ケ=日常生活)」があるように思いました。

 ここにあるのも、日本と他の国との文化の違い・多様性なのでしょう。


踊りを引き立てる衣装と小道具

 東大阪国際交流フェスティバルでは、様々な国や地域の民族衣装と踊りを実際にステージで見ることのできる機会がありました。

中華人民共和国の少数民族のひとつ、チャン族の民族衣装を模した衣装で踊る在日中国人の方たち。

 チャン族の民族衣装は主に普段着として使われていたもの。現在ではチャン族も服装の漢化が進んでおり、女子就学児童は学校に行くときだけ伝統服を着用するそうです。衣装に施されている刺繍は、チャン族女性の賢さ・知恵を示しています。

 シルクファンベールと呼ばれる、扇にシルクの布が付いたダンス用のファンベール(舞扇)を持っている人や、日本では水の入った桶を運ぶために使用される天秤棒のようなものを持った人たちが列を成していました。

 日本でも浴衣で盆踊りをすることはありますが、チャン族の踊りでは、衣装と小道具とが同じだけの存在感を放っており、とても新鮮でした。


多文化が共に生きるということ

 会場にしつらえられたステージでは、チャン族のほか様々な民族の衣装や踊りを見ることができましたが、朝鮮民謡『阿李蘭(アリラン)』を歌っていたのは、朝鮮学校の生徒の方たち。民族衣装のチマチョゴリでの踊りや歌のほか、朝鮮学校の無償化除外の問題や(注1)、特別永住外国人(注2)としての在日コリアンの選挙権などを呼びかけていました。また、会場には、ヘイトスピーチ(注3)に反対するポスターもありました。

 会場では、実に多様な文化と、そこから生じる問題を垣間見ることができましたが、参加した実感は、私たち自身が日本で生きている「普段の日常」となんら変わりが無いということ。なぜなら日本の文化はすでに多文化的であり、私たち一人ひとりが気づかないうちに、それが当たり前の日常になっていたからです。

 特に今回それがよく分かったのは「食」でした。例えばチヂミは、普段から食べているものですが、会場で見たことによって改めて韓国の食であることを再認識したのです。それくらい、チヂミは私たちになじみのある食文化になっていたのです。

 しかし日本にはいまだに、多文化を否定するようなヘイトスピーチなどの差別や暴力が存在します。何故なのでしょうか。

 多文化を否定する人には、否定する人なりの思いがあるのかもしれません、しかしそういう気持ちを持つ人にこそ、こうした多文化をテーマとしたイベントに参加し他者の意見に触れ、考え直す機会にしてほしいと切に願います。

 私たち自身もこのイベントに参加したことによって、たくさんの国の人や文化に触れることができ、文化は違えども同じものを見て笑い、同じものを食べて喜べる、私たちと変わらない存在なのだと感じました。

 これからは、それぞれの文化や人それぞれの個性を隠すことなく生きていけるようになってほしい。そのようなことを思いながら、楽しいフェスティバルでの一日を終えました。

 

第24回東大阪国際交流フェスティバルwebサイト
http://www.e-sora.net/shimin/festa4.html
 

1)日本の学校教育法の第一条に定められる教育施設のことを一条校といい、朝鮮学校はこの一条校と認められていないため、日本の教育制度において公立高等学校などの授業料の無償化や、私立高等学校などに就学支援金を支給して授業料を低減するなどといった制度を受けることができない問題。
2)「特別永住者」とは、1991年(平成3年)11月1日に執行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」によって定められた在留資格を持つ外国人のこと。

  • 原田 美菜Mina Harada

    1998年大阪生まれ。文芸表現学科2017年入学。話すことが好きで、よく長電話をして夜更かしをしている。趣味は友達とのドライブとショッピング。

  • 水原 優Yu Mizuhara

    1998年大阪生まれ、大阪育ち。文芸表現学科2017年度入学。
    毎日ラーメン生活。ロングスリーパー。

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