COLUMN2019.10.25

瓜生山から見る秋の雲―瓜生山歳時記#38

edited by
  • 尾池和夫
  • 高橋 保世

 このシリーズでは、さまざまな形で瓜生山学園から見る京都の空を紹介してきた。朝焼の空、夕焼の空、望天館からの秋の空などを見ていただいた。今回はさらに瓜生山から秋の雲を見ることにしたい。前回にも秋の雲は巻雲とひと言だけふれた。季語には鰯雲がある。鱗雲、鯖雲が傍題である。気象用語では巻積雲または高積雲で、さざ波のような小さな雲片の集まりが空に広がる。鰯の群のように見える。あるいはこの雲が出るころ鰯が大漁になる。また、鱗のように見え、あるいは鯖の背の斑紋のように見える。これとは別に野分雲という季語もある。台風が運んでくる雲は秋の大きな特徴である。
 雲を詠む季語は四季を通じてたくさんある。春の雲、夏には入道雲、峰雲、雷雲、冬には凍て雲、寒雲などであるが、秋の雲の季語が一番多い。
 羊雲という呼び名もよく知られているが、歳時記に季語としては載っていない。『広辞苑』では、鰯雲、鱗雲、鯖雲のことを羊雲ともいうとあるが、それでも羊雲という季語はないので詠めない。名句が生まれるまでは季語集に入らない。気象現象としては高積雲であって、寒気団上部に暖気が接した際にできる場合が多い。小規模な大気波の影響で帯状や波紋状に発達して広がる。

 

鰯雲人に告ぐべきことならず    加藤楸邨

 

 髙さによる雲の名をあげると、巻雲、巻層雲、巻積雲、高層雲、高積雲、叢雲、乱層雲、層積雲、積雲、層雲、積乱雲などがあり、形による雲の名をあげると、毛状雲、鉤状雲、濃密雲、塔状雲、房状雲、層状雲、レンズ雲、霧状雲、並雲、雄大雲、断片雲、無毛雲、多毛雲などがある。しかし、実際に雲を見上げたとき、これらの名で呼び分けられる人はあまりいない。
 地球の雲の成分は液体か固体の水である。水滴や氷晶の形でできている雲粒の大きさは、半径1μmから10μm程度で、計算上の落下速度は秒速1cm程度であるが、落花速度を上回る上昇気流があるので落ちてこない。
 雲が白に見えるのは雲粒が太陽光を散乱するからである。厚みのある雲は灰色、底の部分は黒に近い暗い色に見える。これは濃度の高い雲粒により雲内で何度も太陽光が散乱、吸収されて光が弱まった結果である。日光が水滴で回折して雲が虹色に輝いて見えるのを彩雲という。

 

鯖雲やハイジの住みし家はどこ     和夫

 

(メインビジュアル:瓜生山キャンパス高原校舎からの景色)

涼しげな空に鱗雲が浮かぶ

 

  • 尾池和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都造形芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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