踊(をどり)という季語は、盆踊を意味している。踊子、踊笠、踊太鼓、踊唄、踊櫓(どりやぐら)などの副季語でも詠まれる。盆踊は、盆とその前後に、広場や社寺の境内や砂浜などで行われ、先祖の供養のための踊であったものが娯楽になり、浴衣の男女が夜の更けるのを忘れて踊る。町の中を歌い踊りながら練り歩くのもあるが、一般には輪踊である。
中でも「風の盆」は、越中八尾(現富山県富山市)で9月1日から3日まで行われる盆の行事で、二百十日の風よけの風祭と盂蘭盆の納めの行事とが習合したものである。「越中おわら節」を歌いながら踊り明かす。三味線、胡弓、笛太鼓の囃子に乗って辻々を流す踊にしみじみとした情緒がある。
いくたびも月にのけぞる踊かな 加藤三七子
今年、京都造形芸術大学の学生と女優の伊原六花さんが企画した、新しい盆踊りイベントが8月10日(土)19時から大丸京都店で実施された。京都造形芸術大学と大丸京都店との産学公連携授業の一環である。昨年9月より、情報デザイン学科の福井崇人客員教授の指導のもとで、同学科で「京都らしい健康促進イベント」の企画・プロデュースを授業に取り組んだ。超高齢化社会を迎えた日本が抱える「いかに健康寿命を延ばしていくのか」という課題を、イベントの企画の立案を通して解決しようとするものである。
健康面の監修で協力いただくのは東北大学の瀧靖之教授の「親子三世代で取り組める運動は、認知症予防になる」というアドバイスである。学生たちはグループ分かれて、みんなで楽しく継続的に取り組める健康促進企画の立案に挑戦している。
スペシャルパートナーとして女優の伊原六花さんにも参加していただき、バブリーダンスで知られる大阪府立登美丘高校ダンス部出身の伊原さんが得意とする「ダンス」の可能性に着目した企画でもある。今年1月の授業で、大丸京都店と伊原六花さんに企画内容を学生から提案し、審査の結果、実施が決定したのが盆踊りイベント「リカミック」である。大きく手を広げたり背筋を伸ばしたり、して京都タワーや大文字山などの要素が組み合わされている。
「リカミック」:音楽に合わせて体を動かす体操「リトミック」と伊原六花さんの名前を掛け合わせた造語で、学生が企画案とともに考案した。
風の盆一差し舞うて逢ひに行く 和夫
◎「リカミック盆踊り」瓜生通信Webマガジン:https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/541
(文:尾池和夫、撮影:高橋保世)
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尾池 和夫Kazuo Oike
1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。