日本の入学式は4月の初めという習慣がすっかり定着している。欧米などでは秋入学の習慣が多い。日本の入学式にいつも登場するのが桜の花である。式辞を書き直すことがよくある。「満開の桜の花のもと・・」、という表現を、「今年は桜も散り始めて・・」と書き直したり、その逆だったり。
桜は、日本の文化や伝統の中で馴染みの深い植物である。日本五大桜が、1922年10月12日に国の天然記念物に指定された。三春滝桜(福島県)、石戸蒲ザクラ(埼玉県)、山高神代桜(山梨県)、狩宿の下馬ザクラ(静岡県)、根尾谷の淡墨桜(岐阜県)の5つである。
俳句では単に「花」といえば桜のことを指す。秋の月、冬の雪とともに「三大季語(雪月花)で、花吹雪、花散る、花筏、花明かり、花篝など、花の付く季語が多い。桜の花は日本独特の文化であるが、桜の実は、サクランボ(チェリー)で、世界中で食用とされている。桜の花言葉は「精神の美」「優美な女性」、西洋では「優れた教育」というのもある。この花言葉は入学式に合うかもしれない。
入学の吾子人前に押し出だす 石川桂郎
桜の野生種も多いが古来山桜が人気である。花が咲くと同時に葉が出て、少なめの花との彩りがいい。逆に八重桜もあって、こちらは華やかな好みに合う。花びらが多くても、裏を見ると萼は5枚しかないのが興味深い。染井吉野が出現して以来、花見の対象が集中する傾向があるが、京都の桜は実に多様で、2月から5月までさまざまな桜が見られる。
瓜生山学園ではさまざまな入学式が次つぎと挙行される。4月1日、認可保育園こども芸術大学の入園式である。1歳児10人、2歳児12人、3-5歳児38人の定員である。2日、京都芸術デザイン専門学校、3日、京都造形芸術大学通学部、5日、姉妹大学の東北芸術工科大学入学式、7日、大学の通信教育部入学式と続く。それらに出席し、式辞や祝辞を述べる。
今年は3月下旬に急に暖かくなったので、紅枝垂は早くから花見客が集まっている。毎日の通勤の道を選びながら、しばらく花見の毎日である。
教へ子の子の入学へ我が式辞 和夫
●2019年度 京都造形芸術大学/大学院(通学部)入学式の様子
【瓜生通信Webマガジン】 https://uryu-tsushin.kyoto-art.ac.jp/detail/494
(文:尾池和夫、撮影:高橋保世)
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尾池 和夫Kazuo Oike
1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。