朝焼も夕焼も夏の終わり、晩夏の季語である。いずれも、太陽の光が大気層を通過する時の散乱現象であるが、朝焼は、日の出の時に東の空が紅黄色に染まる現象で、7月頃が最も色が鮮やかになる。朝焼があると天気が下り坂になるといわれている。朝焼は晩夏のみの季語で他の季節には季語にならない。
朝焼や窓にあまれる穂高岳 小室善弘
夕焼は、夕焼雲、梅雨夕焼などの傍題とともに、夕方、太陽が沈んだ後に、しばらく空が茜色にそまり、なかなか日がくれない現象である。夏の夕焼は大地を焼き尽くすごとく壮大であり、晩夏の季語となっているが、夕焼の場合には、朝焼と異なり、どの季節にも季節感のある夕焼があることから、春夕焼、秋夕焼、冬夕焼、寒夕焼という季語がある。
夕焼の中に危ふく人の立つ 波多野爽波
瓜生山は東山三十六峰の一つであり、大階段の上から夕焼を見るための「風の舞台」もあり、一年中夕焼を見ることができる。朝焼は夏の季語であるから、早起きして真夏の瓜生山の上から見る。大文字の大の字がすぐ目の前にある。
京都市での日の出時刻は、2019年7月1日には4時46分、7月25日になっても、5時1分で、とても早い。日の出の方位は、7月1日では60.6度、7月25日では64.9度である。瓜生山からは大文字の方向に近い。京都市での日の入り時刻と方位は、7月1日で、19時15分、299.3度、7月25日には19時6分、294.9度である。愛宕山の南寄りに沈む。
国立天文台から発表されるこのような日の出時刻は、太陽の上辺が地平線に一致する時刻であるから東山の上に出るのはもっと遅い。方位は北を0度として東回りに測った角度である。夏には地球の北極側が太陽の方を向くので、同じ経度での日の出は、北東へ行くほど早く、日の入りは北西へ行くほど遅い。したがって、例えば札幌は京都よりずっと東にあるが、夏の日の入りは京都と同じような時刻になる。
朝焼や村のモスクの大音声 和夫
西山の剪紙となり梅雨夕焼 和夫
◎メインビジュアル:瓜生山より夕焼を撮影
(文:尾池和夫、写真:高橋保世)
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尾池 和夫Kazuo Oike
1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。
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高橋 保世Yasuyo Takahashi
1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。