COLUMN2018.10.25

西山の秋夕焼-瓜生山歳時記 #26

edited by
  • 尾池 和夫
  • 高橋 保世

 「夕焼」は夏の季語である。夕焼の現象は一年中見られ、季語として歳時記には、「冬夕焼」、「春の夕焼」、「秋夕焼」というように各季節に登場する。それぞれに夕焼の特徴が異なるが、秋の夕焼がもっとも夕焼らしく見られるということになる。「虹」も夏の季語であり同じように「春の虹」「秋の虹」「冬の虹」と言う。9月に取り上げた「月」は「春の月」「夏の月」「月」「冬の月」と歳時記にあって、月は秋こそ月にふさわしい姿であると言われる。それに対して、「日」は「春の日」「夏の日」「秋の日」「冬の日」とあり、季節感の感覚に差がない。ついでながら、「星」の場合は、「春の星」「夏の星」「冬の星」があり、秋には「星月夜」という季語があって月夜と対比されている。一方で「闇」に関しては、「春の闇」「夏闇」「虫の闇」という季語が詠まれ、冬には闇が登場していない。それぞれに歴史の中で整理されてきた日本人の感覚が見事に表現されている。

 

秋夕焼芯はまつくろかもしれぬ     夏井いつき

 

 瓜生山の大階段には夕日を見るための「風の舞台」があるが、学園全体が東山にあるために、自ずから夕日を見る前項の場所がたくさん存在している。学生たちはそれぞれに活動の場所から夕日を見て夕焼の景色を思い出にする。
 

 光の波長が道筋の粒子のよりも大きいと通過しやすいという現象は「レイリー散乱」と呼ばれる。夕方には太陽光の入射角が浅く、大気層を通過する距離が伸びて青色が通過しにくく、赤などの長波長の光が見られる。1883年のクラカタウ火山の巨大噴火の後には世界中で鮮やかな夕焼が見られた。
 

 夕方には「太陽の蜃気楼」と呼ばれる現象もあり、「だるま夕日」が見える場所がある。室戸ジオパークでは夕方の海岸でこの現象を待ってカメラを構える人の姿がよく見られる。私も一度だけ室戸岬の砂岩泥岩互層の岩の上からみごとなだるま夕日を撮影して感動したことがある。

 

秋夕焼準平原の沈みけり    和夫

 

瓜生山キャンパス・テラスからの「秋夕焼」。授業終わりの学生が集う。

 

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  • 尾池 和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。2020年4月大学の名称変更により京都芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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