社会人の「学び直し」の場、通信教育部――グラフィックデザインコース卒業生に、在学中の体験と卒業後のキャリアについて話してもらいました!
- 京都芸術大学 広報課
日々、仕事や家庭、家事が忙しい中で、「このままでいいのだろうか」「もう一度、学びたい」と感じたことはありませんか。
そんな社会人の学び直し(リカレント)の場として注目される通信制大学。本学では、この学びを「やり直し」ではなく、これまでの経験の上に積み重ねていく「学び重ね」として捉えています。そして、本学にも、京都芸術大学通信教育部が設けられており、幅広い世代、様々な分野の学びの機会を提供しています。
通信制大学の最大の特徴は、オンライン学習を活用した柔軟な学習環境です。通学にかかる時間や負担を軽減し、自宅と大学の距離、まとまった学習時間の確保、仕事と家庭の両立など、学習を進める中で生まれる様々な不安を取り除いた、自由度の高い「学び」の形が実現できる点が、大きな魅力のひとつです。
また、「学び直し」だけでなく、「興味のある分野の知識をより深く学びたい」という目的を持つ学生にとっても、それぞれのニーズに適した学びの場となっています。
今回は、本学通信教育部グラフィックデザインコースの卒業生で、現在、株式会社ライツでアートディレクターとして活躍されている角田竜一さん(48歳)、冨永絢子さん(39歳)にお話を伺いました。

入学する決意。そしてそれぞれの「学び直し」
冨永さんは、お子さんが小学校に入学されるタイミングで、本学の通信教育部グラフィックデザインコースに入学されました。未経験の分野へ飛び込み、卒業後は大学で得た知識、経験を生かした職を生業にされている冨永さん。以前は大学で、美術史を学んでいたそう。通信教育学部グラフィックデザインコースへの入学のきっかけは、家族からの強い後押しでした。入学前の不安や決意の理由について話していただきました。

冨永さん「入学前はおもに家事・育児をしていました。子供と過ごす幸せな時間でありながら、社会から切り離されているような不安感もあって、それだけに自分のすべてをかけるのは怖いような気がしていました。一歩外に踏み出して、自分軸を見失わないための「なにか」を持ちたいと考え、入学を決めました」
もともと視覚芸術に興味があった冨永さんは、名刺を制作するといった、エディトリアルの授業とレイアウトと文字組の授業が特に印象に残っているそうです。

冨永さん「どの授業も最後に先生が全員の作品に講評してくれましたが、特に印象的だったのはエディトリアルの授業です。作品の良し悪しは私にとってはぼんやりとした印象でしかとらえられなかったのですが、先生からのフィードバックで、良い作品はどこがどう良いのか、その観点と判断基準を明確に説明してもらえて目から鱗の連続でした。プロの言語表現の豊かさに感銘を受けた記憶があります」
未経験の分野に挑戦した冨永さんならではの「学び」への貪欲さが感じられるエピソードです。
一方で、角田さんは専門学校でグラフィックデザインを学び、現在アートディレクターとして仕事をされています。グラフィックデザイン経験者でありながら通信教育部で「学び直し」を決意し、同じ分野をさらに深く学ぼうと考えたきっかけを聞きました。

角田さん「長年グラフィックデザイナーとしてクライアントワークを続ける中で、仕事に追われる日々になり、絵を描いたり写真を撮ったりといった、自発的な表現をする余裕がなくなっていました。大学という場でもう一度、自分自身の表現に向き合ってみたいと思ったことが、入学のきっかけです」
通信教育部での、課題やレポートの添削で、評価とともに得られる、教員からの指摘(時に厳しいものも)が印象に残っているのだそう。そういった教員からの指摘や評価を何度も読み返すことで、グラフィックデザインへの知識を深めていったそうです。
角田さん「学生としてグラフィックデザインに向き合う中で、課題解決が重要であることは変わらない一方で、デザインそのものが表現としてどうあるべきかを、改めて純粋に考える時間を持つことができました。仕事とは異なる立場でその視点に立ち返ることで、卒業後も大切にしたい考え方が自分の中に加わったと感じています」
新しい知識や発見だけでなく、専門分野をより深く掘り下げ、そして「表現する」ことそのものを改めて見つめ直せるのも、学生として学ぶ「学び直し」の特徴なのかもしれません。
「通信制大学」での人と人との交流
「通信制大学」「オンライン学習」と聞くと、ひとり淡々と授業に取り組むという印象を受けますが、本学ではオンラインでの学習を中心にしながら、必要に応じて「スクーリング」と呼ばれる対面授業も取り入れるなど、自分に合った学びのスタイルを選ぶことができます。「どう学ぶか」を考えながら学習を進められるのも、自由度の高い通信制大学の特徴のひとつです。
こうした環境だからこそ、通信教育部には世代や経歴がまったく異なる学生が集まります。
冨永さん「この年齢から新しい学びにチャレンジするのは不安でしたが、私よりずっと年上の仲間が積極的に学んでいる姿にとても励まされました。まったく違う境遇の学生が集まり学ぶことで仲間意識も芽生えて、とても得難い経験をしたと思います」
同じ分野を学ぶ様々な背景を持つ仲間たちとの交流を通して、自分一人では気づけなかった自分自身の成長を感じることも多かったのだそう。

それぞれの学生の授業を受ける場所が全く異なるのも通信教育部の特徴です。
角田さん「オンラインスクーリングのグループディスカッションでは、同じ授業を受けている仲間が東北にいることもありました。物事の捉え方や考え方が、置かれている環境によって異なることを実感し、自分とは違う視点を持つ人と議論できたことは、とても新鮮で面白かったです」
授業外での学生同士のつながりについても話してもらいました。オンラインを活用したコミュニケーションが、対面での交流を円滑にする土台となったそうです。
角田さん「初回のスクーリング前に、学生の中でメッセージアプリのグループを作ってくれた方がいて、スクーリングで実際に会ったときも、すんなりと会話ができました。孤独感を感じることはなかったですね。入学前は、ひとりで仕事と両立しながら学び続けられるか不安もありましたが、同じことを学ぶ仲間がいることで、楽しく学びを進めることができました」
冨永さん「私は最初、メッセージアプリのグループに入るのを少し警戒していたんですが……スクーリングで同じテーブルになった仲間が最初から仲良くしてくれて、その学生たちがきっかけでグループに入りました。みなさんフレンドリーで、授業以外での交流もとても楽しかったです。授業の後に飲み会に行って、先生とも打ち解けることができました。学生同士はもちろん、先生との距離も近く、とても心地よい関係性が築けました」
角田さんと冨永さんは、スクーリングでの全体講評をきっかけに出会い、その後の制作活動や交流を通じて親交を深めました。学生時代からのつながりは卒業後も続き、現在では、角田さんの事務所である株式会社ライツに冨永さんが加わり、ともに仕事をしています。
授業で得た知識だけではなく、「学生生活」を通して得た新たな視点、出会いをその後のキャリアに活かせる。社会人だからこそ、未来につながる人間関係が生まれるのも、通信制大学の大きな魅力の一つです。
学びの集大成、卒業制作
そんなおふたりの2年間の通信教育部グラフィックデザインコースでの学びの集大成、卒業制作がこちら!


冨永さんの作品:20代の頃にずっと働いていて、冨永さんご自身も大好きな新宿のジャズ のライブハウスPIT INNのスタッフのインタビューをアーカイブした作品。


完成した際には、それまでの頑張りも相まって、達成感、安心感とともに寂しさも感じたそう。2年間の大学生活で学んだ技術や、表現ということへの向き合い方が、惜しみなく披露された卒業制作です。
卒業後のキャリアについて

卒業後、角田さんからのスカウトで、グラフィックデザイナーとしてのキャリアをスタートした冨永さん。現在の仕事のなかで、大学での学びが存分に生かされているといいます。
冨永さん「仕事としてグラフィックデザインに関われるとは思っていなかったので、角田さんにお声掛けいただいて、とてもありがたかったです。もし通信教育部に通わなかったらこの仕事に出会うこともなかったと思います。大学で学び吸収したことを生かして毎日精いっぱい仕事をしています」
未経験から「学び直し」、大学で得た知識や経験、そして角田さんとの出会いが、冨永さんにとっての新たなキャリアへの第一歩になりました。
一方、ご自身の営む事務所に冨永さんを迎えた角田さんも、大学での学びが現在の仕事に生きていると話します。長年、グラフィックデザインの現場で働いてきた角田さんですが、大学での新たな学びや学習スタイル、習慣が、仕事への向き合い方に変化をもたらしたそうです。
角田さん「授業やそこでの課題に取り組む中で、文章や物事をどう深掘りして考えるかを、あらためて意識するようになりました。その意識の変化が、クライアントに対する姿勢や仕事への向き合い方にもつながっていると感じています」
広告やブランディングを題材にした課題を通して、物事の学び方や考え方をあらためて整理できたことが、今の仕事にも生かされているという。
未経験でも、既に経験していた分野だとしても、それぞれの形で新たなキャリアへとつながる学びがある通信教育部での学生生活。社会人だからこその「学び直し」の場です。
「学び直し」を通して

通信制大学でのキーワードでもある「学び直し」。
実際に経験されたおふたりに、「学び直し」を通して生まれた変化について話してもらいました。
冨永さんは、クラスメイトや教員からのリアクションを次の制作に活かすことを繰り返すうちに、人に作品を見せることへの抵抗がなくなったのだそう。
冨永さん「様々な学生と作品を見せ合っていくなかで、デザインの正解はひとつではなく、作る人の数だけ答えがあるということを目の当たりにしました。上手い/下手という尺度はあると思いますが、それ以上に『その人らしさ』をまとった作品は心を惹きつける魅力があると感じました。なので、私もあれこれ難しく頭でこねくり回していないで、自分らしくのびのび制作を楽しもうという意識に変わっていきました」
「学び直し」を通して生まれた、作品への眼差しの変化。その気づきは、冨永さん自身の創作活動や、現在まで続くキャリアにも生かされているようです。
「学び直し」をすることで、今まで携わってきたグラフィックデザインの仕事の答え合わせができたという角田さん。大学での学びを通じて、実務の中で培ってきた考え方や判断を整理し直すことができ、仕事としてのグラフィックデザインの捉え方にも変化があったそうです。
角田さん「卒業後も同じ仕事をする中で、今までにない挑戦的な仕事に取り組む際にも、以前とは違う視点で、堂々と挑むことができるようになり、『仕事としてのデザイン』が楽しくなりました」
同じデザインの分野で仕事をしながら「学び直し」をするからこそ、知識の進化、純粋な「表現」への挑戦ができるのかもしれません。
これから入学を考えている方へ
最後に、おふたりから、これから通信教育部への入学を検討している方にメッセージをもらいました!

冨永さん「何歳であっても、新しい学びに飛び込んでみれば自分の可能性を広げられるのだと実感して、前より自信を持てるようになった気がします。入学前の、家事育児に集中しすぎるあまり視野が狭くなってしまっていた状況から、私自身が助けられたと思っています。知らなかった世界を知ると、日常の風景も違ったものに見えるようになりました。私の在学中は対面授業があったので、学生や先生と交流しやすい環境で楽しい学生生活を送りましたが、2025年度からグラフィックデザインコースは完全オンラインでの学習になりました。私個人としては、交流が生まれずらいのではないか、授業としての緊張感がなくなるのではという懸念も正直なところあります。また、制作物の質感や発色やサイズ感など、すべて実物ではなく画面上で共有しなければならない難しさもあるかと思います。そうした懸念点を乗り越えて、誰にでも開かれた学びの場として、通信ならではの強みを活かしたデザイン教育に期待しています」
角田さん「少しでも興味があるのであれば、その時に挑戦してみた方がいいと思います。以前から『大学で学び直す』ことに不安や迷いもありましたが、今振り返ると、必要以上に構えていた部分もあったのかもしれません。学生生活を送る中で、学生としてデザインに向き合っている自分が好きだと思える感覚がありました。一人でひたすら学ぶことに不安を覚える方もいるかもしれませんが、通信教育部には一緒に学ぶ仲間がたくさんいて、心強い先生もいます。興味を持ったその時に『学び直し』するのがおすすめです」
「学び直し」の環境が整えられている京都芸術大学通信教育部。忙しい社会人でも、初心者でも、安心して「学び」を深められる場として多くの方に開かれています。18歳から90代まで、1.7万人以上が学ぶ、日本最大の総合芸術大学です。オンライン学習や選べるキャンパス、学び方の多様さに加え、延べ1000名以上の教員による丁寧な添削も特徴です。
それぞれのニーズやライフスタイルに合った学習の空間と時間、そして未来に繋がる学びがきっと見つかるはず。学びのスタイルの選択肢のひとつとして、検討してみてはいかがでしょうか!
(文=文芸表現学科4年 愛知はな 撮影=山出高士)
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