2025年9月27日、収穫祭の訪問地として広島県安芸郡熊野町を訪れました。
収穫祭とは、全国にいる在校生・卒業生と教職員との交流・学修を目的としたものです。2018年からスタートして、年々、規模が大きくなり、現在では全国8会場で開催しています。
全国様々な地域の特色ある芸術文化をワークショップや特別講義を通して紹介することや、公立私設を問わず美術館や博物館の社会への取り組みや発信、また開催中の展覧会を鑑賞することなどを行っています。
熊野町は「筆の里」として全国的に知られる町で、シンボルである筆の博物館「筆の里工房」や、町に点在する筆屋さんを巡りました。
私は学部時代を京都芸術大学で過ごしましたが、大学院は広島市立大学に通いました。今回訪れた「筆の里工房」には大学院時代の同級生である松村さんが職員として勤務しており、さらに、町の筆屋さんの中にも知り合いがいました。
芸術を支える道具づくりの現場を学生たちに見てほしいという思いと、そうした縁が重なったことが、この企画を提案するきっかけとなりました。
当日は全国各地から、所属コースもさまざまな30名の学生が参加しました。広島駅前に集合後、チャーターバスで「筆の里工房」へ向かいました。現地では筆職人の方のご指導のもと、筆作り体験を行いました。



体験内容は筆づくりの最終段階で、軸に入った穂先に水のりを付け、糸で絞りながら形を整えるという工程でした。短い時間でしたが、筆づくりの奥深さを知ることができました。続いて松村さんによる館内案内と筆の歴史解説があり、展示されている多様な筆や硯などの資料を見学しました。丁寧な解説もあり、大変勉強になる時間でした。

その後、「筆の里工房」を後にし、町内にある筆屋のひとつ「晃祐堂(こうゆうどう)」を訪問しました。こちらは主に化粧筆を扱うメーカーです。

熊野町には数多くの筆屋があり、その名を全国に知らしめた要因の一つが、2011年のFIFA女子ワールドカップで「なでしこジャパン」が優勝した際に贈られた国民栄誉賞の記念品として“熊野筆”が選ばれたことです。
書道筆や画筆など、さまざまな筆がありますが、熊野筆を語る上で化粧筆は欠かせない存在です。そのため今回の訪問先には、ぜひこのお店を加えたいと考えていました。

当初、芸術を志す学生にとって化粧筆は縁遠いかもしれないと思っていましたが、実際にはそんな心配は無用でした。品質の高さと手頃な価格もあってか、特に女性を中心に大盛況。次々と化粧筆を購入する姿に、私も思わず驚きました。並べられていた化粧筆は、普段化粧筆に縁のない私から見てなかなか立派なお値段でしたが、納得の人気ぶりでした。
最後に訪れたのは、書画や日本画向けの画筆を扱う「彷古堂(ほうこどう)」です。

社長の方から製作や歴史についてお話を伺い、併設ギャラリーでは棟方志功をはじめ、この筆屋に縁のある作家の作品を鑑賞しました。

ここでも多くの学生が筆を購入しており、特に書画コースや日本画コースの学生に好評で、両手いっぱいに筆を抱えた学生たちの姿が印象的でした。先ほどの化粧筆とあわせて、まさに「爆買いツアー」という言葉がぴったりの光景でした。バスの出発時、店の方々が笑顔で手を振って見送ってくださり、また来てね!という言葉が聞こえてくるようでした。
この一日はとても充実した時間となり、私自身も大いに楽しむことができました。準備は大変でしたが、学生たちの楽しそうな笑顔を見て、その苦労が報われた思いでした。皆さんも筆をたくさん購入され、満足そうでした。
普段はそれぞれのコースで学ぶ学生たちも、異なる分野の仲間と交流し、学び合う機会となったことが何よりの収穫でした。
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