2025年10月19日、福岡県北九州市にて収穫祭が開催されました。収穫祭は通信教育課程の在学生・卒業生、教職員の交流の場であると同時に、全国各地の芸術文化を学ぶ機会ともなっています。今回は在校生・卒業生30名が集い、門司港レトロ地区の散策と出光美術館の見学を行いました。見どころ満載だった散策・見学の一部をご紹介します。
門司港散策
門司港散策では、歴史的建造物を中心にめぐります。散策のガイドとサポートを務めてくださったのは、門司港の街に詳しいお二人です。まずは関門海峡ミュージアムの展望デッキにて、門司港についてのお話をお聞きするところから散策が始まりました。展望デッキからは関門海峡とここを行き来する船、関門橋、対岸の下関(山口県)などが見渡せます。


門司港は1889(明治22)年に国の特別輸出港に指定され、三大貿易港の1つとして栄えました。この時建てられた建造物が、解体の危機に晒されながらも保存され、1995(平成7)年に「門司港レトロ」として整備されます。

門司港レトロ地区では、貿易港として栄えた明治から昭和初期の近代建築を多く目にすることができます(下)。


また、今回特別に、現在北九州を拠点に活動する画家・イラストレーターの黒田征太郎氏のアトリエを見学させていただきました。有志の手で改装したアトリエには、内外のいたるところに黒田氏によって絵が描かれています。創作のエネルギー溢れる空間に、参加者も興味津々です。



続いて、プレミアホテル門司港(旧門司港ホテル)を見学しました。こちらはイタリアの建築家、アルド・ロッシ氏が最後に手がけた作品と言われています。建築当時のデザインのまま残された一室を、特別に見学させていただきました。外観や内装の一部に使われている色は、門司港から採取された「門司港の色」なのだそうです。



散策の最後に大正13年に建てられた逓信建築である門司港レトロ通信館内部をご案内いただきました。京都タワーや日本武道館などの設計で知られる山田守氏による設計で、山田氏の設計した現存する建築物の中では最も古いそうです。

通信を守る重要な建物のため、火災が起きてもすぐに鎮火できるよう防火装置を備えていただけでなく、防火の観点から水が流れやすいように柱の形状も工夫されています。室内は角や尖ったところを作らないように意識されているそうで、壁面や柱はもちろん、階段の手すりも丸みを帯びています。


出光美術館(門司)「琳派の系譜」展見学
後半は出光美術館(門司)を見学しました。「琳派の系譜」展の見学に先立ち、学芸員の方にレクチャーを行っていただきました。琳派とは何かという基本事項から作品の特徴まで、実際に見学する前に鑑賞のポイントについて学びます。

レクチャーを踏まえて、「琳派の系譜」展を見学しました。画像で見るのと、実際の作品を前にするのとでは、印象も大きく異なります。平面作品はサイズや色彩、描線を、やきものや屏風などは立体的な特徴や見え方を意識しながら鑑賞します。
さらに、作品を前にして解説いただき、作品の特徴を一つひとつ確認することができました。経年変化を考慮しながら鑑賞すべき作品や、漢詩などの知識と照らし合わせることで読み解ける作品など、参加者もレクチャーや列品解説の内容を踏まえることで、作品の理解が一層深まったようです。
散策開始地点の関門海峡ミュージアムと終着地点の出光美術館(門司)までの距離はおよそ1km。距離にすると短いですが、歩を進めるごとに歴史、文化との出会いがあり、予定していた時間が足りないと感じるほど充実した散策・見学でした。門司港は毎週末、何かしらのイベントが開かれているそうです。機会があれば、ぜひ門司港を訪れてみてください。
(文=芸術学コース 教員 江本紫織)
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