INTERVIEW2025.12.08
芸大生とひらかたパークのコラボレーションで生み出されたオリジナルグッズが販売中! Z世代ならではの視点でひらパーの魅力を発信する産学連携プロジェクト
- 上村 裕香
京都芸術大学とひらかたパーク(株式会社京阪レジャーサービス)の産学連携プロジェクトで本学の情報デザイン学科4年生が開発したオリジナルグッズが、2025年4月より園内の「ノームショップ」で販売されています。
ひらかたパークは、大阪府枚方市枚方公園町にある、継続して営業する遊園地としては日本最古の遊園地で、「ひらパー」の愛称で親しまれています。関西にお住まいの方なら、一度は訪れたことがあるのではないでしょうか。
京都芸術大学では、開学の理念として「藝術立国」、「京都文藝復興」を掲げ、「社会の変革に役立てる人材の育成」を教育目標に掲げており、その中でアート・デザインの力を活かして、企業や自治体の抱える課題に取り組む「社会実装プロジェクト」を展開しています。既存の概念にとらわれない学生ならではの視点で新たな価値を創出することで、商品開発やまちづくり、イベント創出などの産学公連携を行っています。
今回は、産学連携プロジェクトの一環として「Z世代ならではの視点で、ひらかたパークの魅力を発信する」をテーマにオリジナルグッズのアイデアを提案! 企業へのプレゼンを経て、見事、グッズが商品化された情報デザイン学科4年生の谷島楓奈さん、水馬沙耶香さん、川人玲生さん、森遥香さん、北村彩菜さんの5名にお話をうかがいました。

ひらパーの新たな魅力をデザインの力で創出する

ひらかたパークと本学の産学連携授業では、企業から与えられたいくつかの課題をデザインを使って解決しました。学生たちがはじめに取り組んだのは「ひらかたパークをリブランディングしよう」という課題です。
ひらかたパークの施設の新しい魅力の創出や、認知度向上を目的として「Outdoor BBQ Terrace」と「ローズガーデン」のリブランディングに挑戦しました。学生たちが考えたアイデアの中から、山田萌瑛さん(イラストレーションコース)の企画が選ばれ、「Outdoor BBQ Terrace」の2周年を記念したイベントにて採用アイデア「出張!ドッグキャンプ」を基にしたイベント「出張!わくわく動物村」を実施しました。
次に取り組んだのが、ひらかたパークの新たな魅力を創出する課題です。学生たちは「アトラクションの待ち時間の有効活用」「空きスペースの有効活用」「オリジナルグッズの商品開発」の3つのうち、それぞれ1つ課題を選んで取り組みました。リサーチのために何度もひらかたパークに足を運び、課題をデザインの力で解決する方法を考えていきます。
さっそく、実際に商品化されたオリジナルグッズを見ていきましょう!
水馬沙耶香さんが提案したのは「ひらパーオリジナルヘアバンド」です。

ふわふわとした、耳が痛くなりにくい素材のヘアバンドで、園内で遊ぶときはもちろん、お風呂上がりやメイク中にも「ひらパー」の楽しさを味わえます。ひらかたパークの人気アトラクション「ラウディ」や公式キャラクター「ノームのなかまたち」ポピー・ハーケンとピピン・ハーキンをイメージした5種類のデザインはどれもかわいく、「ノームのなかまたち」のグリーティング参加時に着用するのもおすすめです。



——ヘアバンドを制作しようと思った理由を教えてください。
水馬さん:遊園地で販売されている身につけるタイプのグッズは「園内で着用するもの」というイメージが強いと思うんですが、ヘアバンドであればお家でも使ってもらえると思って、制作しました。お家でも「ひらパー」のことを思い出してもらって、また行きたいなって思ってもらえるグッズを目指しました。デザインは、ワニに齧りつかれているようなユニークなものや、カップルで着用できる色違いのものなど、全5種類。最初にアトラクションの「ラウディ」をイメージしたデザインを提案したんですが、企業の方に色違いを作ったり、キャラクターを使用したりするアイデアをいただいて、ラインナップを考えていきました。
——ひらかたパークの方々とは、他にどんなやりとりがありましたか?
水馬さん:工場で試作品を作ってもらったタイミングで、色味や素材、サイズ感について工場や企業の方とやり取りしながら調整していきました。公式キャラクターのポピーとピピンのデザインは「要素をどう選ぶか」とか「ポピーのキャラクターをどうやって表現するか」とか、難しい点も多くて、企業の方からフィードバックをいただくだけでなく、学科の先生方とも話し合いながら決めていきました。

——商品化されたグッズについて、周囲や企業の方の反応は?
水馬さん:ひらかたパークの社員さんには、アトラクションの「ラウディ」をモチーフにしたヘアバンドについて「オリジナリティがある」と評価していただけました。やっぱり「ひらパー」といえばユーモアのイメージがあったので、「アイラブひらパー」のデザインをいいねと言っていただけてうれしかったです。「『アイラブひらパー』のヘアバンドをひらパーの園内でつけるって面白いね」と評価してもらいました。
企業との協働で生まれる新しいアイデア
続いて、こちらの「HIRAPA Tattoo Seal」は、谷島楓奈さんのアイデアです。アトラクション「ドルフィンパラダイス」やひらかたパークのロゴをモチーフにした、ひらかたパークらしい親しみやすいデザインが特徴です。

——タトゥーシールを選んだ理由は?
谷島さん:ひらかたパークに来園されるお客さんはファミリー層が多いので、子どもから大人まで楽しめるグッズを考えました。遊園地の園内で身につけるアイテムとして定番なのはカチューシャですが、子どもの場合、走っているときに落としてしまったり、外してしまったりすることがあるのではないかと考えて、すぐに貼れて落とすリスクもないタトゥーシールを提案しました。
——デザインのこだわりは?
谷島さん:ひらかたパークのロゴが手描きっぽいというか、ポップでやさしい雰囲気なので、ロゴに合わせて明るいイメージでデザインしました。イラストのイルカはアトラクションの「ドルフィンパラダイス」をモチーフにしています。2つの線対称なイラストをくっつけたらハートになる仕組みです。友達や恋人とおそろいでつけて、ほっぺや手などをくっつけたらハートが作れるようにデザインしました。ひらかたパークのロゴに含まれているバラやギザギザ模様の要素を取り入れています。

——ひらかたパークの方々からはどんなフィードバックがありましたか?
谷島さん:プレゼンの段階では、文字だけのシンプルなデザインだったんですが、「アトラクションをモチーフにしたものを作ってほしい」という要望をいただいて、アトラクションの「ドルフィンパラダイス」をモチーフにしたシールを追加しました。

Z世代ならではの視点を活かしたアイデア
「ひらパーシャカシャカキーホルダー」は、川人玲生さん、森遥香さんの共同制作で、中に入れるパーツを自由に選べるキーホルダーです。世界に一つだけのグッズを作ることができます。本体の色やパーツを好きなアイドルや推しのキャラクターのメンバーカラーにできるので、「推し活」にもおすすめのグッズです。

キーホルダー本体は、ひらかたパークの観覧車をモチーフにしています。アトラクションや公式キャラクター、ハートマークや星など、色とりどりのパーツに、売り場でも来園者から「かわいい!」と声が上がっていました。
——こちらのキーホルダーは共同で制作されたんですね。経緯から教えてください。
川人さん:実は、ひらパーの社員さんにプレゼンするときまでは別々のグッズのアイデアを考えていて、商品化にあたって2つのアイデアを合体させたんです。森さんは「ぬいぐるみを入れられる観覧車型のポーチ」を、わたしは「パーツを選んでカスタマイズできるシャカシャカスマホケース」を考えていました。ひらかたパークの場内には推し活ができるスポットがいくつもあるので、特にドアのフォトスポットを参考にしました。ホワイト、ピンク、オレンジ、イエロー、グリーン、ブルー、パープル、レッドの8色に彩られたドアのフォトスポットで、ドアと一緒に写真を撮ったり、アイテムの背景として使用したりできます。今回のシャカシャカキーホルダーも、その色に合わせて展開しています。
——森さんの「観覧車型ポーチ」はどんなきっかけで生まれたんですか?
森さん:リサーチで園内に推し活スポットがたくさんあることを知って、実際に自分で写真を撮ってみたときに、指が写ってしまったり、上手く撮れなかったりしたんです。それを解決するにはどうしたらいいかを考えたときに、「観覧車」というモチーフがとてもいいんじゃないかなと思いました。観覧車型のポーチに「推し」のぬいぐるみを入れることで、吊り下げて写真を撮れるので、上手く撮影できたり、ひらかたパークで撮影したという思い出を残せたりするんじゃないかと考えて、このデザインになりました。ただ、ぬいぐるみが入るサイズのポーチはコストがかかってしまうという課題があったので、キーホルダーにしてはどうかという提案をいただいて、率直に「とてもいいな!」と思いました。
——デザインのこだわりをそれぞれ教えてください。
川人さん:推し活を楽しんでもらえるように、カラーバリエーションを豊富にしました。自分の推しの色で揃えてもらってもいいし、その日に乗って一番楽しかったアトラクションのパーツを思い出として持って帰ってもらうのもいいんじゃないかなと思います。


森さん:一般的な遊園地の観覧車は丸い形なんですが、ひらかたパークの観覧車は長方形なので、その特徴的な形を活かしたデザインにしました。また、パーツが入ったときにかわいく見えるように工夫したり、外側のデザインがパーツの邪魔にならないようにしたりといった点に気をつけました。

提案を受け入れてもらえるという成功体験
最後にご紹介するのが、北村彩菜さんの「ラウディといつもいっしょ! おでかけポーチ」。ひらかたパークで遊び疲れたときや怪我をしてしまったときなどの「もしも」に備えた、ポケットティッシュ・ハンカチ・絆創膏の3点セットを、クリアポーチにぎゅっと詰め込みました。

——園内で使えるポーチセットというアイデアが新しいなと思いました。思いついたきっかけは?
北村さん:リサーチで園内を見て回ったときに、坂道が多いことと、親子連れが多く来場していることに着目して、衛生グッズがショップ内にあれば「怪我してしまっても買いに行ける」という安心感があっていいかなと思って、このグッズを提案しました。家に持って帰っても使えるし、使うたびにひらかたパークのことを思い出せるということも意識しました。
——絆創膏、ティッシュ、ハンカチの3つを選んだ理由は?
北村さん:アトラクションの「ラウディ」をモチーフにしたいというのは最初から思っていたんです。ハンカチや絆創膏は口周りや手が汚れたり、怪我してしまったりしても、キャラクターが慰めてくれるイメージで、お守りみたいなものとして使ってもらえたらいいなと思います。衛生用品は怪我したときに使うものというイメージが強くて、ポジティブなイメージがあまり強くないので、ポップに手に取ってもらえるように工夫しました。
——デザインする上で考えたことを教えてください。
北村さん:乗り物はツルツルとした質感なので、紙や布に印刷するときには手描きっぽい、温かい印象のイラストにしました。本来の「ラウディ」は表情が変わらないですが、デザインするときには表情豊かなイラストになるので、顔立ちやイメージを崩さないことを意識しました。でも、ひらかたパークの方は表情を変えることについて快く受け入れてくださって、「やりたいことを提案したら受け入れてもらえるんだ」という成功体験になりましたし、完成品を見て「自分が考えたものが世に出てる」といううれしさを感じました。


産学連携プロジェクトで、社会の中で役立つ能力を手に入れる
今回の産学連携プロジェクトのキーワードの1つが「Z世代ならではの視点」。デジタルネイティブで、「映える」写真を重視したり、「推し活」を楽しんだりするZ世代に向けて、同世代だからこそリーチできる商品を考えました。推し活をテーマに「シャカシャカキーホルダー」を提案した川人さんと森さんは、推し活エリアを来場者がどのように使っているかリサーチしたと話します。
森さん:リサーチのとき、来場者がどういう風に推し活エリアを使っているのか見たり、SNSでタグを検索して、実際にどんな写真が投稿されているかチェックしたりして、どんなグッズを制作したらZ世代にリーチできるのか考えました。

最後に、今回の産学連携プロジェクトを通して学んだことを聞いてみると、「コストやロットなどグッズを制作するにあたって気にするべきポイントを知ることができた」、「常に新しい流行を取り入れるひらかたパークの柔軟さを感じたからこそ、提案しやすかった」、「そのグッズを『ひらパーで売る意味』をきちんと考えなきゃいけない、というアドバイスをもらった」など、学生それぞれに新たな学びがあったことを聞かせてくれました。
川人さん:プレゼン能力を高められたなと感じています。リサーチを通して企業が抱えている課題を発見して、その課題に合致したアプローチができる企画を提案して、その企画のメリットやコストを順序立てて説明して、企業の方にいかにアイデアを「刺す」か、ということを考えてグッズをデザイン・提案してみて、その過程がすごくためになったと感じています。

水馬さん:この授業を通して、やっぱり「どうやってひらかたパークの魅力を伝えるか」を考えているときが一番ワクワクしました。アイデアを柔軟に考えることや、企業に向けたプレゼンテーションの仕方を実地で学べて、思考力や社会で働く中で役に立つ能力を得られたなと感じます。あとは、シンプルに「ひらパー」のことをめっちゃ好きになりました! テレビでひらかたパークのCMを見かけたらうれしくなったり。すごく楽しいプロジェクトでした。

※商品は売り切れまたは販売を終了している場合があります。
学生たちの自由な発想と企業の柔軟な受け入れ姿勢が生み出した、Z世代ならではの商品開発。実際の商品化を通じて、デザインやプレゼンテーション、コスト管理など、社会に出てからも役立つ多くのことを学んだ貴重な経験となったようです。
取材日には、情報デザイン学科の3年生に向けたレクチャーが行われ、学生たちは園内を見て回ってリサーチしていました。商品化された4年生たちのグッズを購入している学生も。
ひらかたパークの社員の方から、ひらかたパークの歴史や来場者の年齢層、オリジナルグッズ開発の目的、オリジナルグッズを考える上での注意点などの説明を受け、学生たちは熱心にメモを取りながら聞いていました。



学生たちが開発したオリジナルグッズはひらかたパーク園内の「ノームショップ」で絶賛販売中です。そして、来年もコラボプロジェクトで生み出された商品やイベントがみなさんを楽しませてくれるはず。ぜひ、お近くにお立ち寄りの際はひらかたパークに足を運んでみてください!
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上村 裕香Yuuka Kamimura
2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。
