REPORT2023.08.30

佐渡島の自然と歴史に触れ、「伝統文化と環境福祉の専門学校」の皆さんと交流する[収穫祭 in 佐渡島]

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  • 京都芸術大学 広報課

7月9日(土)に新潟県佐渡市で、2023年度二回目の収穫祭が開催されました。佐渡市にある伝統文化と環境福祉の専門学校は2019年から京都芸術大学と提携して、宮大工など伝統建築の技能を学びながら通信教育で大学卒業資格が得られる「京都芸術大学併修コース」を開設しており、今回はそのコースで学ぶ学生の皆さんや先生方との交流を兼ねた収穫祭です。

多くの参加者が新潟港から船で佐渡島に入るため、まずは両津港ターミナルに集合しました。そこで京都芸術大学と伝統文化と環境福祉の専門学校からの参加者を紹介し、バスで初めの目的地に移動します。

両津港ターミナル


佐渡島は島の北側に「大佐渡(おおさど)」、南側に「小佐渡(こさど)」と呼ばれる急峻な山並みがあり、それらに挟まれた中央に平地が広がる独特の地形をしています。その中央平地の東端にある両津港から、最初の見学地のある相川地区がある西端を目指して中央平地を走ります。
一昨日から午前中まで降り続いた雨が止み、雲の間から青空が見えてきました。平地を内陸に向かって移動すると、間もなく一面の田んぼに囲まれます。すると、一羽でも遭遇できたらラッキーと言われるトキが7〜8羽の群れで羽を休めている場面に遭遇しました。実は、先頭の車の運転をしていただいていた専門学校副校長の後藤先生が、もしかしたら会えるかも、と急遽ルートを変更してこの地に立ち寄ってくれたそうです。このなんとも奇跡的な光景を、しばし車を停めて観察しました。

水田で羽を休める朱鷺

きらりうむ佐渡

最初の見学地は、世界遺産登録を目指して2019年につくられた佐渡金銀山のガイダンス施設「きらりうむ佐渡」です。

平安時代から採掘されてきた西三河地区の砂金、室町時代に発見された鶴子銀山、江戸初期に発見された相川地区の金銀山で行われていたそれぞれの採掘や精錬の手法と、明治以降に近代化された大規模な採掘・精錬施設など、模型と映像を使って分かりやすく解説してくれました。
ため池をつくって一気に水を流し、軽い土砂と重い金を分離させる西三河の伝統的な採掘手法から、江戸期の鉱脈に沿って人力で坑道を掘り進める手法、明治以降のダイナマイトと電動トロッコ、さらに大規模な浮遊選鉱を利用する近代的手法など時代を追って変化する採掘・精錬の技術を中心に、佐渡の金銀が日本や世界の政治に与えた影響などについて興味深く学ぶことができました。

きらりうむ佐渡

「きらりうむ佐渡」から1kmほど山を登ったところに「北沢浮遊選絋場跡」があります。1937年から1940年にかけて、当時としては最新の技術であった浮遊選鉱を行う施設を中心に整備された選絋場跡で、日中戦争から太平洋戦争に向かう時代に国策として金の増産を目的に建設されたものです。月間5万トンの原鉱を処理する能力があった巨大な施設は、相川の金鉱石採掘が大幅縮小される1952年まで操業していました。山の斜面をそのまま利用して段状に建設された浮遊選絋場や、直径50mの円形のシックナー(濃縮器)など、ヒューマンスケールを超えた巨大な施設群に圧倒されます。廃止された後には空き地を利用してゴルフの練習場になっていた時期もあったそうですが、2010年に広場が整備されグッドデザイン賞も受賞されているそうです。残された鉄筋コンクリートの躯体にはナツヅタが絡み廃墟としての美しさが人気の観光スポットになっており、夜はライトアップもしているそうです。

北沢浮遊選絋場跡

史跡佐渡金山

北沢浮遊選絋場跡をあとに車で10分ほど山に入ると、江戸時代の採掘坑「宗大夫坑(そうだゆうこう)」があります。1601年に発見されて以来、相川地区最大の金鉱脈を掘り進めた坑道です。坑内の気温は常に10℃前後ということで、一歩入ると暑い外気からは想像もつかない涼しさ(寒さ)でした。坑道の各所には江戸時代の採掘の様子を人型ロボットで再現した展示が見られ、どこか懐かしいレトロな味わいがありました。この大規模な坑道が江戸時代初期に手掘りで開削されたということにも驚きですが、硬い地盤を掘り進めるだけではなく酸欠や排水などの問題に対処する知恵と工夫が随所に見られ感心させられます。宗大夫坑(そうだゆうこう)

かつて坑内では、硬い岩盤が少しでも柔らかくなるように「やわらぎ」という神事が行われていたそうで、その様子も再現されていました。神妙な祭礼なのに俄(にわか)面をつけているのが面白いですよね。背景の白黒模様が金鉱脈の特徴です。

神事「やわらぎ」の様子

史跡佐渡奉行書跡

1601年に相川地区の金銀鉱石が発見された2年後には、それまで鶴子地区に置かれていた奉行所が相川に移設され、それ以降幕末までこの奉行所の敷地内で金の精錬から貨幣(小判)の製造まで行われていたそうです。現在見られる建物などは2000年に復元整備されたものです。

史跡佐渡奉行書跡

奉行所の敷地内には金銀の精錬施設である「勝場(せりば)」も復元されています。ここでは採掘した鉱石を細かく砕いて金や銀を選鉱する工程が再現され、体験することもできました。金の小さな一粒まで取り漏らさないように工夫された工程は、当時どれだけ金が重要であったかを実感させてくれます。

奉行所内の精錬施設「勝場(せりば)」

また、寒暖流が沖で交差する佐渡島はさまざまな植物の北限・南限の生息地でもあるそうで、京都や東京では身近にみられるツワブキが自生する北限の地だそうです。

佐渡が自生地北限のツワブキ

伝統文化と環境福祉の専門学校

最後に、今回一緒にまわりながら様々な佐渡の魅力を教えてくれた皆さんが学ぶ「伝統文化と環境福祉の専門学校」を訪ねました。全国でも珍しい宮大工を養成する専門学校で、夢を叶えるために日本各地から集まった生徒たちが日々研鑽を積んでいます。学校の課題で制作している寺社仏閣など伝統建築のスケールモデルを前に、その作り方や工夫や面白さなど実感のこもったプレゼンテーションをしていただきました。参加者からの質問にも丁寧に回答してもらい、帰りのフェリーに間に合わなくなりそうなほど、熱のこもった交流の時間になりました。

課題で制作された寺社のスケールモデル

駆け足でまわった佐渡の収穫祭のメニューも終わり、再び両津港に移動して解散しました。今回はお天気にも恵まれ、提携校で学ぶ若い皆さんも交えて和気あいあいと収穫祭を楽しむことができました。「学びたい」という気持ちを持つもの同士は年齢や住まう地域に関係なくすぐに打ち解け、お互いを尊敬しあえるということをあらためて実感し、佐渡島をあとにしました。

史跡佐渡金山での集合写真

(写真・文:ランドスケープデザインコース 稲田多喜夫)

 

 

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