何歳でも、どこからでも学べる芸術大学
「ずっと、学びたかった」「ここなら、自分でも学べる」。そんな想いから、この通信教育課程にやってきた、1.3万人以上(2022年5月現在)の社会人学生たち。18歳から90歳代、日本全国から海外まで、ひとりひとりが仕事や生活を持ちながら、芸術を学ぶことで、新しい人生のドラマを紡いでいます。
今回の主人公は、「アグロフォレストリー」という持続可能な農法に惚れ込み、自力で森づくりに挑戦。より専門的なスキル・知識を求めてランドスケープデザインコースに入学した佐野香織さん。社会人としての経験に、芸術を「学び重ねる」ことで得られた、自身の変化などについて伺いました。
“食べられる森”を、この手で育てたくて
― なぜ、「ランドスケープデザインコース」へ?
大手機器メーカーのエンジニアとして製品開発に取り組んでいたものの、「もっと大きな視野で、ものづくりがしたい」という思いが抑えきれなくなって。そんなときに出会ったのが、「アグロフォレストリー」という持続可能な農法です。実のなる木や食用の草花を植えた“食べられる森”をつくることで、ひとも虫も鳥もその恵みを受けられる。話を聞いたとたん、パァッと理想郷のイメージが頭に広がって、「これだ!」と直感しました。
「アグロフォレストリー」という概念は、まだ日本であまり知られていません。けれどフキやサンショウなど、日本の植物も活かせると教わり、「じゃあ、自分が広めよう」と。まずは岡山県新見市の「地域おこし協力隊」として森づくりの活動をはじめることになり、専門的な知識や学歴をつけておこうと本コースへの入学を決めたんです。
植物を通して、自分の視野が広がっていく
― とくに面白かった授業は?
毎回いろいろな専門家の先生から話を聞けるので、すべてのスクーリングが楽しみでした。日本庭園やガーデンデザインはもちろん、多種多様な樹木の性質、設計用CADソフトの使い方、地域の観光事業やまちづくりの実際、日本独自の美的感性など。一見、ランドスケープデザインとは関係ないように思えることでも、学んでみると、すべてが植物を通して私たちの身近につながっているんだとわかります。
植物をいろんな方向から見つめる学びは、自分の視点や考え方を広げてくれます。私の場合、最初は草木を“食べる”“役立つ”という機能面でしか見ていませんでした。けれど、ある授業で「施主の想いをくみとった」庭を設計したとき、心理面にも大きく作用する植物のチカラを再認識。自分がつくる森にも、美しさや心地よさが大切なんだと気づかされました。
手を動かすことで、見えてくることがある
― 学びのなかで、難しかったことは?
スクーリング中に発表するプレゼンの準備も、自宅での課題制作も、つねに時間との闘いです。とことん練りあげたつもりだったのに、「やっぱり考えが足りなかったか」という部分を指摘されてガックリすることも。それでも取り組むごとに自分の成長を感じられるし、新しい技術を教わるたびに「つぎの課題で活かしてみよう」とチャレンジ心をそそられます。
大学で教わるのは、単なる知識やノウハウだけでなく、学ぶ姿勢そのものでもあります。ある授業で、「アイデアはいきなり出てこないから、ひたすら手を動かそう」と言われたことがあって。「手を真っ黒にして描きまくるから、一本、線が見えてくるんだ!」という先生の力強い言葉が、いまも迷って立ちどまりかけたときに背中を押してくれます。
クラスメイトの「いいね!」が心の支えに
― コースには、どんなクラスメイトがいましたか?
業界のプロもいれば、7回転職した猛者もいる…多彩なクラスメイトからは、たくさんの刺激をもらえました。とくに大きな励みとなったのは、課題を通して“食べられる森”の話をしたとき。みんなが想像以上に興味を持ってくれて、「自分のやっていることは、こんな幅広い人たちに受け入れられるんだ」と感動。それまでの悩みや不安が、がんばる気持ちへと変わりました。
また、森づくりの活動をカミングアウトすることで、思わぬ方向からの助け舟も。先生が、自ら支援している「みかん農園」で体得した、草刈りのノウハウを教えてくださったんです。一流の庭師や設計士、地域創生など、さまざまな現場で活躍している先生方だけに、その教えも実践で役立つものばかりです。
学びが詰まった森、ただいま成長中
― いまの活動状況は?
草ぼうぼうの荒地を切り開いた土地に、さまざまなナッツの木や食用になるエルダーフラワーを植え、まわりに防風林をめぐらせています。森として完成するには十年以上かかりますが、エルダーフラワーは来年初収穫できるので、とっても楽しみ。CADを使って木の配置を検証したり、見た目に魅力ある花を道路側に植えたりと、コースのさまざまな学びを詰め込んだ森になりました。
なによりも、こうした長期的な森づくりには、たくさんの方々の理解や協力が不可欠です。「どんなイベントをすれば、この森に興味を持ってもらえるか」「活動成果をどのように報告するか」など。より効果的な発信のしかたを考えるうえでも、芸大ならではの表現力やプレゼン経験が役立っています。
より広い領域へ、より大きくひとを包む森へ
― これからの目標は?
エンジニア、地域おこし協力隊、そして本学での学びなど、これまでの経験を活かして、自分ならではの「アグロフォレストリー」を広めていけたら。そのステップアップとして、森林再生に関わる企業にコンサルタント職として就職を決めました。入学時には思ってもみなかった新展開ですが、仕事を通して大きな規模で森と関われることにワクワクしています。
知識をつけるだけなら、きっとひとりでも学べるはず。けれど、他者の考えや視点を取り入れ、新たな世界に踏み出せるのが、大学ならではの良さだと実感できました。これからもライフワークとして、私の夢、みんなの“食べられる森”を育てつづけていきたいです。
ランドスケープデザインコース|学科・コース紹介
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/course/landscape/
卒業生の声|京都芸術大学 通信教育部
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/student_voice/
説明会・相談会 | 京都芸術大学 通信教育部
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/briefing/
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