INTERVIEW2021.12.01

アート

仕事人間から、日常の趣きを味わう人生へ。 ― 社会人学生の「わたしが学びつづける理由」

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  • 京都芸術大学 広報課

18歳-90歳代の社会人が学ぶ芸術大学

「なぜ、そんなに多くの人が学んでいるのか」。この通信教育課程には、18歳から90歳代まで、多地域・多世代の方々が集い、仕事や家事など日々のくらしと、芸術の学びを両立させています。その数は、大学で約10,000名、大学院で約270名(2021年12月現在)。

今回は、オンラインで学べる学士課程(通称:手のひら芸大)の芸術教養学科を卒業後、同じく完全オンラインの修士課程「学際デザイン研究領域」に進学し、MFA修得をめざす真殿修治さんにお話を伺いました。「通信で芸術を学んで変わったこと」。そして、「なぜ、学びつづけるのか」。

 

完全オンラインだから、通勤や出張の間も学べる

― どうして「芸術教養学科」に入学を?

日々の仕事のなかで、「これからの時代、ビジネスパーソンにも芸術的教養が必要だ」と感じることがあり、まずは自分から実践してみようと思ったんです。多忙な身でしたが、オンラインだけで学べる通信制なので、「まあ、なんとかなるだろう」と気軽に入学しました。

学びはじめて、社会人学生にとって何より重要なのは、「いかにして学習時間をつくり出すか」だと実感しました。そこで有効だったのが、スキマ時間を活用できるオンライン学習です。出張の移動中や滞在先でもしっかり学べるよう、画面サイズの大きなスマホに買い替え、動画授業に見入っていました。


見方を変えれば、感じ方がまるで変わる

― どんな授業が心に残りましたか?

動画授業はどれも面白く、期待以上に「ためになる」ものばかり。たとえば、日本と西洋の美術史を学んだことで、これまでの何十倍も美術館を楽しめるようになりましたし、歴史的空間のとらえ方を学ぶ「芸術教養講義8」では、伝統的な空間美意識について教わり、日本庭園の感じ方が大きく変わりました。

どれも、本で読むなどして断片的に知っていても、本当はよくわかっていなかったこと。それを基礎からしっかり学ぶことで、こんなにも理解が深まり、見える世界が広がるのか、と感心しました。専門科目だけでなく、「哲学」「宗教学」「古典日本語」が学べる教養科目も充実でしたね。

 

“デザイン思考”を学んで感じた、大きな可能性

― とくに深めたいと思った学びは?

やはり、“デザイン思考”です。これまでずっと、センス次第だと思っていた「デザイン」が、じつは構想から着地までを通して成果を得るための思考のプロセスなのだと教わり、ぐっと引き込まれました。さらに「芸術教養講義4」で情報をどう整理・編集するかを学び、「これはいろいろな場面で応用できる」と実社会での可能性を感じたんです。

これまでお堅い仕事人間で、考え方が凝り固まっていたこともあり、学科長である早川克美先生をはじめ、様々な先生から講評などで厳しいご指摘をいただきました。けれど、歳を重ねて「叱られる」という経験が減ったいま、厳しくも客観的に評価してもらうことが自分の成長につながると感じ、大学院への進学を決めたんです。

デザイン思考の成立した背景とそのプロセスを理解する「学際デザイン特講Ⅰ-1」動画講義。
「学際デザイン特講Ⅰ-1」を担当する、早川克美教授。

 

学習ペースを保つ秘訣は、楽しんで学ぶこと

― ところで、学びのスケジュールは?

私の場合、日付を軸にして、大まかなスケジュールを立てていました。たとえば、この日までに動画を2回見て、テキストを2回読むとか、レポートを1回書いてみるとか。たとえレポートが不合格でも、いただいた講評をもとに何度でも出し直せますし、「とにかく出してみること」が肝心だと思いました。

社会人にもなってレポートなど面倒くさい、と思う人もおられるでしょうが、義務だと思わず「楽しみ」だと思えば、やる気もわきます。自分さえ「好奇心」を持って取り組めば、どの課題もおのずと楽しく感じられるはずですよ。

真殿さんの一日(大学時代/平日)。平日のスキマ時間を利用して、テキストや動画を講読・視聴。休日にまとまった時間をとって、レポート作成に集中しました。

 

大学院で“デザイン思考”の実践力を鍛える

― 大学院ではどんなことを学んでいますか?

学びの中心となるのは、先生やクラスメイトとのディスカッション。年齢も職業もさまざまなうえ、ユニークな研究対象を抱える方ばかりで、とても面白く刺激になります。たとえば「プロバスケットボール」や「昆虫食」など。決して自分からは目を向けないテーマについても、深く観察する眼が養われたと感じます。

私自身が大学院に来た目的は、ビジネス研修などの人材育成に、“デザイン思考”を活用できるようになること。私にとって“デザイン思考”とは、とても実務的なスキルなんです。まずは自分自身がそれを使いこなせるよう、実践力を鍛える研究に取り組んでいるところです。

クローズドなSNS「Workplace by Facebook」で教員や学友とコミュニケーションを行っている。

 

オンラインなのに、リアルな世界との関係が深まる

― 本学で学んでから、自身にどんな変化がありましたか?

花や風景、ものの陰影や建物など、日常のひとつひとつを見る目が変わった気がします。たとえば、ちょっと退屈に思えていたお寺での法要も、仏像の姿や表情、読経の響きやお香のかおりなど、こちらの感じ方が変わることで、すべてが一新されたように新鮮で。学ぶスタイルはオンラインでも、リアルな世界との関わりが深まる学びなんですよね。

入学前から美術館や寺社仏閣めぐりをしてきましたが、もっぱら妻のお付き合い。けれどいまは私がガイド役として、芸術面を充実させた旅行プランを立てて、妻を喜ばせることができています。

野村朋弘先生と函館での大学院のゼミ合宿にて。
時代背景や意味を学んだ後は旅行先で色々な側面から楽しめるようになりました。

 

活力がある限り、一生、学びつづけたい

― いま、そして、これからの目標は?

まずは大学院での研究をやり遂げ、MFAを取得すること。そして、ここで得た学びをビジネスの世界で広め、それぞれの仕事で発揮してもらえたら。私自身、まだまだ入り口に立ったところですが、ビジネスとアートは相反するものではなく、組み合わせて効果を生むハイブリッドな関係だと感じています。
もちろん大学院を修了しても、まだ学び足りないことはたくさんありますし、もっともっと学びつづけたい。“永遠に生きるかのように学ぶ”という偉人の言葉どおり、私も元気あるかぎり、学びつづけたいと願っています。

 

芸術教養学科|学科・コース紹介
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/course/tenohira/

学際デザイン研究領域|通信制大学院
https://www.kyoto-art.ac.jp/tg/field/Interdisciplinary-design/

 

 

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