INTERVIEW2022.12.08

いつもの通勤路が、新しい発見の宝庫に。 ―社会人学生たちの「人生を変えた学び重ね」

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  • 京都芸術大学 広報課

何歳でも、どこからでも学べる芸術大学

「ずっと、学びたかった」「ここなら、自分でも学べる」。そんな想いから、この通信教育課程にやってきた、1.3万人以上(2022年5月現在)の社会人学生たち。18歳から90歳代、日本全国から海外まで、ひとりひとりが仕事や生活を持ちながら、芸術を学ぶことで、新しい人生のドラマを紡いでいます。

今回の主人公は、オンラインで学べる学士課程(通称:手のひら芸大)の芸術教養学科を経て、完全オンラインの社会人大学院「学際デザイン研究領域」でMFA(Master of Fine Arts:芸術修士)取得をめざす大川友成さん。社会人としての経験に、芸術を「学び重ねる」ことで得られた、自身の変化などについて伺いました。
 

MFA取得をめざし、まずは大学からスタート

―なぜ、「芸術教養学科」で学ぶことに?

歯科技工士マイスターをめざして20代からドイツに渡り、ひたすら技術を磨いてきました。おかげで日本人では数少ないマイスターとなり、学会や講演会で発言する立場に。そのなかで、「自分は大学教育を受けていない」ということが、いつも心のどこかに引っかかっていて。50歳を過ぎてから意を決して、ドイツにいながら学べる本学に出願しました。

じつは最初は、大学院の「学際デザイン研究領域」の方に出願したんです。ドイツのマイスターは学士相当の資格なので、どうせならその先へと。ところが力及ばず、あっさり不合格に。いくら専門分野に精通していても、その視野や思考は限られた範囲のものです。足元を見れば、まだ靴ヒモさえ結べない自分が、一体どこへ踏みだそうというのか。素直に「大学からはじめよう」と出直して、たちまち学びの面白さに心を奪われました。
 

日常を輝かせるのは、ほかでもない自分の視点

―とくに面白かった授業は?

早川克美先生の「デザイン思考」についての授業ですね。「日常のなかにこそ新しい気づきがある」と教わり、日々の通勤路で感じたことを、学生交流用のSNSで発信することに。顔も知らないクラスメイトたちのコメントに支えられ、卒業まで欠かさずつづけたこの日記で、自身の意識が大きく変わりました。

なにしろ毎日書くわけですから、最初はネタを探すのにひと苦労。不審者かと思われるほど、キョロキョロしながら歩いていました。けれど、いろんな授業を受けて思考の幅が広がるにつれ、気になることが自然と目に飛び込んでくるようになったんです。長年ぼんやりと歩いてきた通勤路が、じつは発見の宝庫だった。そう気づいたときに、わかりました。「まわりがどうとかは関係ない。世の中を、より魅力的で価値あるものに変えていくのは、自分自身なんだ」って。

「デザイン思考」の講義を担当する、早川克美教授。

 

海の向こうでも距離を感じない、オンラインの学び

― 通信という点で、難しかったことは?

僕の場合、オンラインで完結することが必須条件だったので、違和感はなかったですね。それどころか、難解な哲学などもわかりやすく学べるテキストや動画教材は、評判以上だと感じました。最初はおそるおそる書き込んだSNSのなかでも、卒業生がさりげなく新入生をナビゲートしてくれて。「細かな仕組みまで、よくできている」と、社会人の目線で感心させられました。

そして、最も予期せぬ喜びを味わえたのは、学生どうしのつながりです。SNSを通して出会えた学友たちは、私にとって人生の新しい宝物。それぞれが自分のペースで学び、思い思いのタイミングでコメントしているので、時差もそれほど気にならず。履修の相談をしたり、やる気の出る言葉をもらったり、通信だからこその支えあいが心にしみました。

芸術教養学科専用の交流用SNS 、通称《ピンク》。
ちなみに、学習用SNSは通称《ブルー》。
 

習慣にすることで、読書も学習も自分の一部に

― ところで、学びのスケジュールは?

基本的に平日は仕事に専念し、週末に集中して学習していました。ただ、レポートの提出期限が迫ると、平日でも机に向かう日々が増えてきます。仕事終わりは集中力が落ちるので、自分を含めて夜型の学生も、だんだん朝型の学習スタイルへ…。5時起きで勉強するひとを「ゴジラー」、ときどき出現する4時起きを「ヨジラー」など、おどけた呼び名をつけて、SNSで楽しく励ましあっていました。

もちろん、まとまった時間がとれなくても、動画講義など、短いスキマ時間を活かせる学びはたくさんあります。たとえば読書もそのひとつ。「本を毎日読む」と聞くと、いかにも大変そうですが、いったん習慣にしてしまえば、通勤途中や休憩中も本を手にする方が落ち着くように。「生活を大きく変えなくても、考え方ひとつで自分を変えられる」。そんな嬉しい気づきを得られました。

「図書館で文献探し」をできない海外生活をバネに、直接いろいろな大学の論文を検索する情報収集力がアップ。
スキマ時間を活かしてレポート課題に取り組みます。

 

“デザイン思考”の幅を広げられる大学院

―いまは、どんな学びを?

学部で培った“デザイン思考”やノウハウをもとに、いまは大学院に進学し、「学際デザイン研究領域」でMFAの取得に向けて研究をすすめています。さすが探究志向が強い方ばかりなので、グループワークに参加するだけでもいろんな刺激に。大学院といえば、専門分野をさらに絞って突き詰めるイメージが強いですが、この「学際デザイン研究領域」は、いろんな視点を学び、逆に視界を広げられるのが魅力だと感じています。

MFAの取得は、あくまでも学業のゴール。僕が最終的にめざしているのは、国家資格でありながら離職率の高い「歯科技工士」の大切さ、やりがいを、後進のみなさんに強く伝えていくことです。そのために、「従来のモノの見方を変えて、人々に新たな気づきを与える」本領域の学びが活かせるはず。だからこそ、まずは僕自身がしっかりと“デザイン思考”を養っていかなくては、と考えています。

学部の卒業研究テーマに選んだのは、自宅があるハンブルグの堤防施設。

 

仕事や人生が、豊かになる学びをこれからも

―生活やお仕事のなかで、学びによる変化は?

そういえば入学してから、患者さんとの雑談が増えましたね。美術史、文化、哲学など…いろんな教養を身につけたおかげだと思います。また、これらを学んでから、仕事で赴いた土地の文化や歴史も気にかかり、現地の方々と多彩なコミュニケーションをとれるようになりました。これまでは、歯の話ばっかりだったのに。ささいなことだけど、人間として豊かになるって、こういうことかもしれないと思います。これからも自分のなかの引き出しを増やし、対話力や発信力を高めることで、歯科技工士としても、人間としても、成長しつづけていきたいです。


芸術教養学科|学科・コース紹介
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/course/tenohira/

学際デザイン研究領域|通信制大学院
https://www.kyoto-art.ac.jp/tg/field/Interdisciplinary-design/

エルププロムナードの歩行空間におけるデザインの有用性について(大川友成)|芸術教養学科WEB卒業研究展
http://g.kyoto-art.ac.jp/reports/3931/

YouTubeインタビュー映像

 

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