ついに1年で最後の月「師走」です。「師が走る」文字をみているだけで慌ただしさが伝わってきます。師走は挑戦する季節。今月は、盛りだくさんの1か月間でした。日々の保育で創作活動を行うこども芸術大学では、その成果を「こども造形展」で発表したり、親と子どもが一緒に制作して学ぶ「創作の時間」や、音の響きによって感性や表現力を高める「音育」ワークショップを行いました。
子どもと先生たちのパワーが花開く「こども造形展」
「こども造形展」を11月29日~12月2日に開催しました。子どもたちが日々の保育の中で創ったり、描いたりした作品が展示されました。「こども造形展」を見に来てくださった京都芸術大学 空間演出デザイン学科教授の大野木先生からは、「ホールに入ったとたんに、子どもたちのパワーと先生方の“子どもたちの作品をどうぞみてください!”という熱い思いが飛びこんできた」との感想をいただきました。どのクラスも子どもたちの作品をよりよく観ていただけるようにと時間をかけて準備していました。その成果が表れたのだと思います。
固定概念は打ち捨てて。「創作の時間」
12月7日(水)は今年度最後の「創作の時間」でした。今回の講師は、アートディレクター、グラフィックデザイナーをされている京都芸術大学 芸術教養センターの教授・丸井栄二先生です。テーマは、『 ー「あ」のおえかきー 』。まず、「あ」を文字としてではなく図形やカタチとして捉えるところから始まりました。丸井先生は、いろいろな字体の「あ」を紹介すると共に、文字を部分的に詳しく分析してお話されました。次は、子どもたちが「あ」を自分の好きなように自由にデザインしていくことに。お母さんやお父さんにはアートディレクターとなって、デザイナーである子どもたちを応援する役割が与えられました。子どもたちの作品には、それぞれの想いがしっかりと表現されていました。
保護者との「気づきの時間」では、「あ」を含むそれぞれの文字にたくさんの書体があるのは、人それぞれに声の違いがあるのと同じなんだというお話が丸井先生からありました。固定観念で「もの」をみないことなど、多くを学ぶ有意義な時間になりました。
“静”の中で音を聴く「音育」
吉川左紀子学長のご提案で、文明哲学研究所の客員教授・小松正史先生に「音育」のワークショップを開催していただきました。参加したのは5歳児さくら組さんです。「音育」とは、音楽を身体と心の両方で楽しみ、感性や表現力を高めることです。普段聞き逃しがちな生活環境音や自然音の存在を自覚し、それらの音の聴き方を学びました。
小松先生は、まず、子どもたちに「ティンシャ」というネパールやチベットで使用される仏具打楽器の音を紹介してくださいました。ティンシャは、とても余韻のあるリンです。この音色に耳を傾け、消えたと思ったら手を挙げるという簡単なゲームでした。この音色が消えるまで聴くには、耳を澄ましてしっかりと聴かねばなりません。普段、静かな環境で過ごすことが少ない子どもたちですが、「静」の中でいつもは聞こえていても聴いていない音の存在に気づきました。
そして、次に紙を破る音に注目しました。破る音をなるべく大きくすること、なるべく長くすることを経験しました。ホールでこのようなワークショップをした後、今度は畑までの道を自然の音(足元の音、鳥の鳴き声、木々の音等)に気を付けて、耳を澄ませて歩きました。園舎に戻ってきてから、山で聴いてきた音を絵で表現しました。
最後に小松先生に、今日子どもたちと過ごした時間を即興的にピアノで表現していただきました。1歳児くり組さんから5歳児さくら組さんまで、子どもたち全員で美しい音色に浸りました。印象的だったのは、1歳児くり組の子どもたちが食い入るように耳を傾けていた姿でした。本物の音には、人を引き付ける魅力があると改めて感じました。
瓜生山も、素敵な音色に耳をかたむけ、幸せな気持ちになったことでしょう。
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西井 薫Kaoru Nishii
1978年京都教育大学音楽科卒業。京都市立小学校4校(20年間)京都教育大学附属京都小学校(8年間)附属桃山小学校(8年間)。市立と国立(独立行政法人)合わせて36年間小学校勤務。その後、教育実習生の指導に長年携わってきたことから京都教育大学教職キャリア高度化センタ―に籍を置いた。実地教育運営委員会の委員長として、大学と附属学校園のパイプ役にという思いで勤務した。大学の授業では、教員を目指し入学してきたかつての教え子たちに再度関われる幸せな機会を得られた。また、日英の教員養成を比較研究するプロジェクトに参加することができ、大きな成果があった。
音楽教育では、伝統文化を継承していくことの重要性を実感し、附属桃山小学校の音楽科では、伝統音楽(筝、三味線、六斎、祇園ばやし)が教科カリキュラムに組み込まれている。