REPORT2022.09.08

創設5年目のジャグリングサークルRelish。創設者から繋ぐバトン- 文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信

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  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会Ⅴ」は、学生が視て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。

本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。

(取材·文:文芸表現学科 3年 山本莉子)


創設5年目をむかえた京都芸術大学のジャグリングサークルRelish(読み:レリッシュ)。『大瓜生山祭2021』や2021年度卒業公演『Overture』では素晴らしいパフォーマンスを魅せ、見事大盛況に終わりました。
そんなRelishは、2021年度に文芸表現学科を卒業した永尾祐人さんを中心に創設されました。Relishの魅力とこれからについて、永尾さんと現・代表の加藤美月さん(映画学科・4年)にお話をうかがいました。

『大瓜生山祭2021』でパフォーマンスをする、創設者の永尾祐人さん。
2021年度 卒業公演 『Overture』でパフォーマンスをする、 現代表の加藤さん。


ジャグリングとは、動力のない道具を人力で動かす曲芸の一つです。その歴史は非常に古く、3000年前のエジプトの壁画にもジャグリングをする人の絵が描かれているほどです。
本来は、複数のものを空中に投げ続ける技を指していましたが、現在ではその意味が拡大されており明確な定義はありません。近年はスポーツとして愛好する人が増え、一種の芸術と捉える見方もでてきており、考え方はさまざまです。

 

Relishのはじまり

夕方に大学の望天館の屋上付近を通ると、道具を操る気持ちいい音が聞こえます。Relishは、さまざまな道具を使い日々練習しています。
2018年に当時の1年生を中心に始動し、今では部員数20人を超える大所帯となりました。

道具はディアボロ。空中で高速に繰り出されるコマの動きは、見ごたえがあります。
道具はシガーボックス。箱のぶつかる音は、軽快なリズムを刻みます。


(永尾さん)僕は、高校時代の部活動でジャグリングを始めました。高校生からジャグリングをしている人は稀で、大学が決まってから、ほかの大学のサークルに一緒にやろうと声をかけていただくこともありました。でも僕は、せっかく芸大に行くんだったら、サークルをつくりたいなと思って、勧誘を断らせていただきました。
サークル創設当初、Relishに興味をもって話しかけてくれた1年生に先輩と間違えられることもありました(笑)

(加藤さん)1期生はよく、2期生も創設メンバーだと言ってくれています。大学のサークルは、事務作業も全て学生たちでします。最初はみんな手探りでしたね。

『大瓜生山祭2021』でディアボロをパフォーマンスをする、1期生の藤田桂さん(2021年度 文芸表現学科卒業)。
2021年度卒業公演『Overture』でクラブをパフォーマンスをする、1期生の藍奕勛(Lan YI Hsun)さん(舞台芸術学科・3年)。

 

9割がジャグリング初心者

Relishのサークル活動を見学させていただいたところ、後輩にアドバイスをする先輩の姿がありました。サークルのメンバーは9割がジャグリング未経験です。

後輩にアドバイスをする永尾さん(写真右)


(永尾さん)Relishは、ほとんどが大学1年生からジャグリングを始めたメンバーです。
今年入った1年生のなかには、2021年度卒業公演『Overture』を観たことをきっかけに入ってくれた人もいると聞いています。

(加藤さん)私は、大学に入学してからジャグリングを始めました。卒業した高校にジャグリング部があったのですが、当時は演劇部に入りました。ジャグリングを見るのがずっと好きだったので、せっかくならやってみようと思いRelishに入りました。
ジャグリングは自分の成長に上限がありません。技が成功したら、次は別のことに挑戦します。「達成できた」という行為に終わりがないというのは、ジャグリングの一つの魅力じゃないかなと思います。

 

毎年YouTubeにアップする新歓PVをきっかけに、Relishに興味をもつ人は多いそうです。

 

パフォーマンスは三者三様

(永尾さん)同じ道具を使っていても、技の系統が違えば、雰囲気は当然変わります。技を丁寧に見せたり、ダイナミックな動きをしたり、一人ひとり違います。

(加藤さん)メンバーのパフォーマンスが似ることは、あまりないです。
同じディアボロでも、私は永尾さんがするような速い技は得意じゃなくて、どちらかと言うとゆったりとした技が好きです。ジャグリングは一人ひとりの個性がでます。

左から、リング、デビルスティック、クラブ、ポイ、ボール
道具の説明をする加藤さん


Relishは、英語で「楽しむ」や「味わう」を意味します。サークル活動やさまざまな公演でのパフォーマンスを観ていると、観客はもちろん、サークルメンバーもとても楽しそうです。
全国のジャグリングサークルのなかでも、さまざまなジャグラー(ジャグリングをする人の総称)がいるそうです。

(永尾さん)大会に出る競技系のジャグラーさん、出演や依頼を受けて人前でパフォーマンスをするジャグラーさん、個人で楽しむジャグラーさん、いろんな方がいます。大学のジャグリングサークルのなかでも、活動の方向性が決まっていることがあります。
ジャグリングが好きという根底にある気持ちと、観て楽しむことも含め、どの方向からも楽しみたいという思いで、Relishと名付けました。

(加藤さん)Relishは、何でもありです。大会を目指す人もいれば、人前でパフォーマンスすることに尽くす人もいるし、制作の合間をぬってジャグリングをしにくる人もいます。
連絡さえしてもらえれば、制作のためにサークルを休むことも前向きに捉えています。

ディアボロに取り付け、凧のようにして使用するドラゴンフラッグ

 

先輩も後輩も刺激し合える関係

『大瓜生山祭2021』でのパフォーマンス後のメンバー


サークルの雰囲気について伺うと、お二人は「仲がいい」と口を揃えて言いました。
RelishのSNSでは、個性あふれるメンバー紹介や誕生日を祝う投稿があり、アットホームな印象を受けます。

(永尾さん)Relishには、あまり厳しい上下関係がありません。そのおかげで、一人の演者として対等にアドバイスできるのかなと思います。
僕はもう、ジャグリングを始めて7年以上経ちます。なので、後輩から技や構成について、始めたてのころ特有の突飛な発想を聞くと、自分もこんなことを考えた時期があったなと思い出します(笑)

(加藤さん)私は、ジャグリングに対して複雑に考えて悩むことがあるんでこす。でも、始めて1年目の後輩がただ純粋に楽しんでいる姿を見ると、初心を思い出します。そんなに考えなくても楽しめばいいじゃんって、大事なことに気付かされることがあります。

2021年度 卒業公演『Overture』では、チームワークの光るパフォーマンスがされました。

 

Relishならではのジャグリング

Relishは、大会でルーティン(演技の流れ)の「構成」を高く評価されています。演劇やバレエの経験者が多く、表現をする芸術大学の学生であるということは、評価される理由の一つかもしれません。

(永尾さん)Relishは楽曲や衣装にとてもこだわっています。楽曲のもつイメージや世界観を演者が作り上げて、それに合った衣装をそれぞれセレクトします。
観客を飽きさせないよう、同じ技を繰り返さないようにしたり、サビに派手な技をして緩急をつけたり、楽曲に合わせた工夫もしていますね。

(加藤さん)衣装については、ルーティンとセットで悩むくらい真剣に考えていますね。
演劇は与えられた役割がある反面、ジャグリングは全て自分で考えます。私は演劇部のころ役者をメインにしていたので、演出には今も苦戦しています(笑)

2021年度 卒業公演『Overture』では、約120分の公演で 平均4回の衣装替えがされました。


Relishの各公演では、司会が観客を巻き込んで盛り上げます。ジャグリングを観るのが初めての方でも、安心して楽しむことができます。

(永尾さん)司会は、パフォーマンス前に集客できるかを決める、重要な役目です。なので、話し方や声のトーンも工夫しますし、練習もたくさんします。

(加藤さん)司会に限らず、パフォーマンスのときは「ここは拍手煽れるね」とかアドバイスをすることもあります。

『大瓜生山祭2021』でのパフォーマンス前、司会と相方の2人が盛り上げます。

 

ジャグリングを味わう

創設メンバーである1期生が卒業した、2021年度卒業公演『Overture』。このタイトルには、序章・開幕という意味があります。
創設してからサークルが軌道に乗ったのも束の間、新型コロナウイルス蔓延の影響により、人前でパフォーマンスをする機会を失ったRelish。しかし、「観客に笑顔を届けるため」、試行錯誤を繰り返しました。
その想いは、京都芸術劇場 春秋座という大舞台で輝きました。

公演は配信も行われ、Relishのパフォーマンスは遠く離れた人のもとにも届きました。


(永尾さん) 練習とか公演終わりに、みんなが笑顔で「楽しかった」と言ってくれて、本当に嬉しかったんです。できる技が増えるのも嬉しいけど、何よりジャグリングを「楽しい」、「おもしろい」って思ってくれていたら、それ以上は望みません。
これからのRelishがどういう姿を見せてくれるのか、とても楽しみです。

(加藤さん)もっと、いろんな人にRelishを見てほしいなと思います。2期生のみんなとは、“どんな立場の人でも楽しめる“という、Relishの根本を大事にしたいと話し合いました。卒業した1期生のつくってくれた土台を基に、さらにできることの幅を広げていきたいです。
一人ひとりのメンバーが、やりたいことを実現していけるような場所にしたいです。

4年間Relishを支えた1期生が卒業し、新たに5期生が加わった新生Relish。秋の『大瓜生山祭2022』では、どんなパフォーマンスを見せてくれるのでしょうか。これからの活躍に目が離せません。

 

京都芸術大学ジャグリングサークルRelish
公式Twitter:https://twitter.com/Relish_juggling
公式Instagram:https://www.instagram.com/relish_juggling/
公式YouTubeチャンネル:https://onl.tw/3w8yfQ3
 

 

インタビュイー
永尾祐人 ステージ名:GAO
 (写真左)
1999年生まれ。2022年3月、京都芸術大学 文芸表現学科卒業。
高校1年生からジャグリングを始める。
2018年、京都造形芸術大学(現・京都芸術大学)にジャグリングサークルRelishを創設。

加藤美月 ステージ名:れん (写真右)
1999年生まれ。京都芸術大学 映画学科4年生。
ジャグリングサークルRelish2代目代表。
ディアボロをメインに、日々パフォーマンスを磨いている。

 

インタビュアー
山本莉子

2002年生まれ。文芸表現学科3年生。
ゼミでは、雑誌編集や記事の執筆に取り組む。
『大瓜生山祭2021』をきっかけにRelishに興味をもつ。

撮影協力:情報デザイン学科3年 赤星侑太

 

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