INTERVIEW2022.03.10

教育

働きながら、好きな建築に関わっていける人生を。 ― 社会人学生の「わたしが学びつづける理由」

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  • 京都芸術大学 広報課

18歳-90歳代の社会人が学ぶ芸術大学

「なぜ、そんなに多くの人が学んでいるのか」。この通信教育課程には、18歳から90歳代まで、多地域・多世代の方々が集い、仕事や家事など日々のくらしと、芸術の学びを両立させています。その数は、大学で約10,700名、大学院で約270名(2022年2月現在)。

今回は、忙しい仕事に就いていながら、卒業に必要な修得単位数がとくに多い(3年次編入学の場合)建築デザインコースに入学。卒業後、さらに建築デザイン領域の大学院への進学を決断した、藤本英樹さんにお話を伺いました。「通信で芸術を学んで変わったこと」。そして、「なぜ、学びつづけるのか」。


通信で学べると知り、あきらめかけた想いが再燃

― 働きながら学ぶことを決めた理由は?

文系の大学に進学したものの、事情があって中退。IT系のエンジニアとして働きだしてから、家具や建築のデザインに興味を持つようになりました。社会人になって初めて、純粋に「学びたい」と思えるものに出会えた。けれど、「年齢的に遅すぎるだろう」と、そのままあきらめていました。

とはいえ建築への想いは消えず、多忙な仕事の気晴らしに別荘建築に関する本を眺めては、「いつか小さな別荘をつくれたら…」と妄想する日々。そんなとき、ふと目に止まったのが、本学のネット広告でした。「通信で建築を学べる」という想像もしなかった内容に驚き、すぐ資料を取り寄せて説明会に参加。その勢いで入学を決めました。


仲間がいるから、自分もがんばれる

― 実際に通信制で学んでみて、いかがでしたか?

正直、「通信教育だから、楽にこなせるだろう」と、すこし甘くみていたんです。もちろん、テキストは初学者にも取り付きやすく、久しぶりに「仕事ぬきで学ぶ」新鮮な気分を味わえました。けれど、学びが高度になるにつれ、ひとつひとつの課題について、生半可では通用しない手ごたえとプレッシャーが。

そんな楽しくも苦しい学生生活の励みとなったのは、なんといっても仲間の存在です。通信ならではの多彩なクラスメイトのなかには、建築関係で働く方もいて、リアルな業界話を聞けました。その道のプロから、子育てママまで。それぞれに仕事や生活を抱えて学ぶ仲間たちを前にすると、「自分もがんばらないと!」という気持ちにさせられます。

スクーリング授業の後に、講師のゲストハウスを訪問。

 

学べば学ぶほど、深みにはまる建築デザイン

― 建築デザインのどこに魅力を感じますか?

とにかく奥が深いんです。それまでは、ただ「カッコイイ」「美しい」「心地いい」と感じていたカタチや空間に、じつはすべて理由があるんだと教わって。「なぜ、自分はそう感じるんだろう?」と、建築だけでなく、自分の身のまわりのさまざまな物事について、より深く考えるようになりました。

深く考えるということは、制作への悩みも深くなるということ。たとえば、図面の線をひとつ引くにも、「なぜ、その位置なのか、そのカタチなのか」はっきりとした意図が要ります。「なんとなく」では済まされないのです。他にも、建築デザインによってつくりだされる「風景」や「世界観」を、どう自分のなかにイメージしていくかなど…学ぶことは数限りなくあります。

休日には、せっせと模型制作。

 

平日はアイデアを出し、週末にまとめきる

― ところで、学びのスケジュールは?

平日はあまり頑張りすぎず、土日のスクーリングに向けて体力を温存していましたね。通勤などのスキマ時間を活かして、本を読んだり、課題の調べ物やアイデアを出したりするぐらい。そうやって平日にあたためておいたものを、週末にまとめきる、という学習スタイルをルーティンとして習慣づけました。

入学当初は、「最短で卒業」をめざしていたんです。でも、途中からあえてペースダウンして、建築にまつわる他領域も学んでみることに。おかげで、思考やアイデアの引き出しが増えた、と感じます。これから入学を考えている方にも「多少の寄り道」は、ぜひおすすめしたいですね。

藝術学舎の講座でのデッサン課題。

 

身についたのは、論理的思考、細やかな目線

―学びはじめて、自身にどんな変化がありましたか?

一般的な「芸術の大学」のイメージとは正反対かもしれませんが…論理的な考え方や、客観的に物事をとらえる力が鍛えられました。とくに建築の分野では、「自分がいいと思うから」といった、一人よがりの感性や主張は通用しません。相手にわかってもらえる理由を積み重ね、説得する。こうしたプロセスは、本業のプロジェクトをすすめる上でも役立っています。

あとは、身の回りの細かなところに目がいくようになりましたね。たとえば、よく通っている喫茶店で、窓辺の明るさにハッとして、「ああ、椅子の高さがちょうどいいんだな」と思ったり。いままで見過ごしていた空間や風景の、ちょっとした良さに気づけるようになりました。

休日は、建築探訪(書写山 圓教寺にて)。

 

一級建築士資格をとり、長い目で建築と関わりたい

― いま、そして、これからの目標は?

大学院で学びながら、建築士の資格取得にチャレンジ。現在は、一級建築士の受験資格を得るため、週末だけのインターンシップを受けています。もちろん、いまの仕事にもやりがいを感じているし、「すぐに転職を」と考えているわけではありません。けれど、長い人生のどこかで、建築と関われる準備をしておきたくて。

ここで学んで、建築というものの懐の広さを知ったからこそ、「これからも気長に付き合っていきたい」という気持ちが生まれたのだと思います。資格の取得も、そんな学びの一歩に過ぎません。なにしろ、やっとの思いでドアを開けたら、はるか向こうにまた次のドアが見えるんですから。すごい世界に入り込んでしまったな、と泣き笑いしながら、日々勉強をつづけています。

週末芸大|学科・コース紹介
https://shumatsu.kyoto-art.ac.jp/

説明会・相談会 | 京都芸術大学 通信教育部
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/briefing/

 

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