COLUMN2019.09.25

望天館から見渡す秋の空-瓜生山歳時記#37

edited by
  • 尾池和夫
  • 高橋 保世

 秋の空は、秋空、秋天(しゅうてん)とも詠まれる。澄みきった秋空のことである。秋は長雨に見舞われることもあるが、一方、からりとした晴天に恵まれることも多い。台風の去った後には、まぶしい青空が広がる。
 秋の空模様は変わりやすいことでも知られており、「男心と秋の空」とも「女心と秋の空」とも言われる。微妙にニュアンスは異なるかも知れないが、どちらも正しい。尾崎紅葉の小説『三人妻』には「男心と秋の空」が出てくる。ヴェルディの歌劇『リゴレット』第3幕の「風の中の羽のようにいつも変わる女心」という『女心の歌』もかつてヒットした。
 夏から秋にかけて空の透明度が増す。秋には大陸から移動してくる高気圧に覆われて晴れる日が多く、海から来る高気圧とちがって、空気中の水蒸気が少なく、そらの青さが濃くなる。春の高気圧には黄砂が載ってくるが、秋にはそれがないことも関係している。
 秋の雲の代表は巻雲である。鳥の羽のような雲で、高さは5キロから13キロである。

 

去るものは去りまた充ちて秋の空  飯田龍太

 

 1977年、京都芸術短期大学の初めての入学式が行われた望天館に別れを惜しむ会が2017年に行われたが、その初代望天館の赤煉瓦の壁を取り付けて、新しく望天館第2世が誕生した。1階の入り口横には3Dプリンタ用のカメラが今おいてある。
 入り口を入ったロビーに入った途端に、正面の2階の壁一杯に「燦」の書が掲げられている。書家の杭迫柏樹さんの書である。四川省から取り寄せた紙に墨黒々と書かれた一字である。
 望天館2階には国際会議ができる円卓の会議場がある。大型の精密なプロジェクタが大型スクリーン2面に鮮明な映像を映すことができる。天井から下がるカーテンには京都盆地の風物が描かれている。
 3階には秘書室、副学長、学部長の部屋、そして学長室がある。学長室にはチンパンジーのアイが描いた絵がある。またタイムドメインのスピーカで「本物の音」を聞いてもらえるように設備が整えられている。音源を持参して訪ねてきていただければ試聴してもらえる。
 4階から屋上へ出ると京都盆地の秋の空を見渡すことができる。そこは学生たちの広場である。さまざまな利用の仕方があり得る広場である。

 

♂は武器♀は手鏡秋の空   和夫

 

◎メインビジュアル:9/14(土)・15(日)に開催された大瓜生山祭(学園祭)の様子。望天館屋上テラスは学科対抗フードコロシアム(模擬店)会場となり、日中は多くの人でにぎわった。夕暮れ時には、学生たちがそれぞれに楽しむ様子が見られた。

望天館2階に掲げられた「燦」の文字。
望天館屋内からも、吹き抜けのまどから秋空を眺められる
望天館屋上の様子

(文:尾池和夫、撮影:高橋保世)

  • 尾池和夫Kazuo Oike

    1940年東京で生まれ高知で育った。1963年京都大学理学部地球物理学科卒業後、京都大学防災研究所助手、助教授を経て88年理学部教授。理学研究科長、副学長を歴任、2003年12月から2008年9月まで第24代京都大学総長、2009年から2013年まで国際高等研究所所長を勤めた。2008年から2018年3月まで日本ジオパーク委員会委員長。2013年4月から京都造形芸術大学学長。著書に、新版活動期に入った地震列島(岩波科学ライブラリー)、日本列島の巨大地震(岩波科学ライブラリー)、変動帯の文化(京都大学学術出版会)、日本のジオパーク(ナカニシヤ出版)、四季の地球科学(岩波新書)、句集に、大地(角川)、瓢鮎図(角川)などがある。

  • 高橋 保世Yasuyo Takahashi

    1996年山口県生まれ。2018年京都造形芸術大学美術工芸学科 現代美術・写真コース卒業後、京都造形芸術大学臨時職員として勤務。その傍らフリーカメラマンとして活動中。

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