INTERVIEW2026.05.01

アートデザイン

人生の数だけ、表現がある-2025年度 京都芸術大学 通信教育課程 卒業生インタビュー

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  • 京都芸術大学 広報課

18歳から90歳まで、あらゆる立場や年代の方が通う、本学の通信教育課程。彼らの学びの集大成となる「2025年度京都芸術大学 通信教育課程 卒業・修了制作展」が、2026年3月8日(日)から3月31日(火)まで、瓜生山キャンパスにて開催されました。

展示作品のアーカイブは、Webサイトからご覧いただけます。
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/graduationworks/


今回は、食文化デザインコース、写真コース、グラフィックデザインコースの3名にお話を伺いました。卒業制作に込めた思いと、そこに至るまでの学びの過程、そしてこれからについて話を伺いました。

 

漁師の世界を皆に知ってほしいと思った ── 食文化デザインコース 佐々木久美さん

佐々木さんの作品「RE:FISHプロジェクト」は、海と向き合う漁師の声や仕事を、味とデザインで翻訳し、生活者、特にZ世代との関係を再構築する試みです。

漁師は魚を獲るだけの存在ではありません。同じ海域に日々身を置くことで海況の変化や異常をいち早く察知し、海難救助・災害対応・海上監視・赤潮や磯焼けの観察など、海と地域の安全保障を支える多面的な役割を担っています。しかし、その役割は社会からは殆ど認知されていません。また、日本の沿岸には多様な魚が水揚げされている一方で、規格や需要の制約から市場に流通しづらい魚が「未利用魚」とされてしまうという現状があります。このプロジェクトでは、これらの課題解決のために、未利用魚とされている「シイラ」を缶詰に加工し(味のデザイン)、そこに漁師の言葉を添えることで(言葉のデザイン)、新しいコミュニケーションの形を提案するとともに、海を身近に感じられる食卓をデザインしています。

このテーマにたどり着くまでには、佐々木さん自身の原体験と、大学での学びが深く関わっています。
2023年、国立科学博物館で行われていた和食展で、和食の芸術性や壮大さに心打たれたという佐々木さん。
展示の監修をしていたのが、京都芸術大学食文化デザインコース教授の佐藤洋一郎先生でした。それをきっかけに、佐藤先生から学びたい、と入学を決意しました。

まずは、仕事や家庭と両立しながら学びを続けた日々について伺いました。

 

──仕事や生活と学びは、どのように両立されていましたか?
仕事や家庭と学びの両立は、とても大変でした。そこでまず入学に際して「2年間で卒業しよう」と決めました。

できない理由を考えるよりも、どうすればできるかを考えるようにして、「ここまでにこれをやる」と短期的な目標を決めて、カレンダーに書き込んでいました。もし予定通りにできなくても、その週の中で目標をクリアすることで、翌週に持ち越さない工夫をしていました。

限られた時間の中でも、確実にステップを進めることを考えた佐々木さん。その姿勢が、学びを支える大きな力になっていたことがわかります。

そうした日々の中で、卒業制作のテーマはどのようにできあがっていったのでしょうか。

 

──この卒業制作に至ったきっかけを教えてください。
祖父が捕鯨船の船長をしていて、幼いころからいつも海の話を聞いていました。祖母は日常的に魚を捌き、食卓には常に魚がありました。また、知り合いからは市場に出回らない魚が家に届き、海が日常にありました。ルーツというか、自分のDNAには海や魚があるのだと思います。
現在は海の近くに住んでおり、日ごろから漁師さんとの接点もあります。漁師さん達の話や自分のルーツをカリキュラムに重ねていく中で、この卒業制作のテーマに至りました。漁師や海が抱える課題は、ぜひ世の中の人たちに認知してもらわなければならないと思って。

 

──日本の漁業には、具体的にどのような課題があるのでしょうか?
日本は、海に囲まれた国なのに、漁業に携わる人は減っています。漁師さんが集まる会合に参加したときも、「次の世代には引き継がない」という方が多くて。
これは、海の安全という意味でも問題なんです。漁師さんは災害時などに海上保安庁などと協力して海を守る役割も担っています。海上保安庁だけでは対応しきれない場面でも、漁師さんが動けることがたくさんあると聞いています。また、日常的に海に身を置くことで、海の変化をいち早く察知し、その情報が様々な形で活かされているんです。
漁師さんは単に魚を獲るだけではなく、そうした多様な役割を持っています。まさに「海守」です。
ただ、そのような重要な役割を担っている一方で、収入面では厳しい現状もあります。特に沿岸漁業は厳しくて。魚は小さすぎても大きすぎても適正価格で買い取ってもらえません。また、特定の魚が一度に大量に獲れると価格が下がってしまいます。
じゃあ養殖で補えばいいかというと、そう単純でもありません。天然の魚が多く出回ると養殖の魚が売れにくくなるんです。漁業は本当に難しい世界だと感じました。

今回の卒業制作では、漁師の多面的な役割を認知してもらうために、未利用魚を活用した「缶詰」と「漁師の言葉カード」という媒体で表現することを考えました。

 

──今回の缶詰には、「シイラ」というあまり聞き慣れない魚が使われていますね。
この魚は、1メートル以上になると高級魚として海外に輸出されますが、それ以下のサイズは価格がつきにくく、市場にほとんど出回りません。日本では脂ののった魚が評価されがちですが、この魚は脂質が低く、タンパク質が多い、いわばサラダチキンのような魚なんです。
この特徴は、今の若い人たちの食の嗜好にも合っているんじゃないかなと思っています。

 

──卒業制作の過程で、フランスにも調査に行かれたのですね。
フランスはワイン同様に缶詰にもビンテージという概念があるなど、缶詰文化が盛んなので、調査に行ってきました。
フランスの缶詰にはパッケージがとてもカラフルで、画家とコラボしたデザインなどがあります。中には缶の上が透明なフィルムになっているものもあり、驚きました。
一方で日本の缶詰は中身の表記はわかりやすいもののデザイン性のあるものは少ないので、日本の缶詰売り場も同じように手に取ってもらえる工夫が必要だと感じました。

※佐々木さんから提供 フランスの缶詰


──缶に使われているキャラクターのデザインは、ご自身で行われたのですか?
私は絵が大の苦手で、子どもに自分の描いた絵を見せても、犬とうさぎの区別がつかないこともありました(笑)。
ただ、『およげ!たいやきくん』のような親しみやすいキャラクターがあったらいいな、とは思っていました。
イラストの制作は、藝術学舎(注釈1)でPhotoshopなどを学びながら、一からデザインしました。
実はデザイナーさんにも相談をしたのですが、やっぱり自分の手で全て最後までやりきりたくて。デザイナーさんにはやり方を教えてもらいながら、キャラクターを完成させました。

ジャマイカ
中国
イタリア
アメリカ

完成したキャラクターは、シイラの特徴から着想を得て名付けられました。シイラは英語で「ドルフィンフィッシュ」と呼ばれますが、その響きに違和感を覚え、泳ぐ姿がサーフィンの動きに似ていることから「サーフィンフィッシュ(キャラクター名:Bluuu)」と名付けたと佐々木さんは笑顔で話してくれました。
キャラクターを作ったことで、いろいろなバリエーションを展開できるようにもなったとのことです。

※注釈1 藝術学舎
藝術学舎は「すべての人の学びたい」に応えるため、京都芸術大学がプロデュースする社会人のための新型アートカレッジ(公開講座)です。満15歳(中学生を除く)以上の方ならだれでも受けることができ、知識から実践まで幅広い講座が開講されています。通信教育部の学生は、藝術学舎で受講した講座の単位連携が可能です。
藝術学舎:https://air-u.kyoto-art.ac.jp/gakusha/top

キャラクターに加えて、この作品にはもうひとつの特徴があります。それが、缶詰に添えられた「漁師の言葉カード」です。


──漁師の言葉カードも、印象深いものが多いですね
漁師さんって、本当にぽろっとこういう言葉をおっしゃるんです。それをカードという形にしました。
試食会のときにも、「このカードがあることで海を身近に感じられた」という声や、「これを見て漁業の現場を見てみたくなった」という方がいらっしゃいました。

 

──今後の展開については、どのように考えていますか?
この取り組みをワークショップの開催やマルシェなどでの販売という形で展開できたらと思っています。また、ECサイトや漁師さんの直売所などでの販売も検討中です。
特に直売所では、生ものや冷凍の商品が多く、すぐに持ち帰らない方にはなかなか販売できない、という課題を漁師さんが抱えていました。
その課題に対して、缶詰は常温で保存できるので、漁師さんのニーズに合うものを作れたと感じています。
今後、海と食卓をつなぐ新しい形として広がっていく可能性を感じています。

海から遠ざかりつつある食卓と、海の現場をつなぐ一缶。
佐々木さんの「RE:FISHプロジェクト」は、小さな缶詰から、海との新しい関係を問いかけています。


挫折しながら、何度も何度も立ち上がる ── 写真コース 森遼太さん

森さんの作品は、自身の遠い記憶をかたちとして残すことを試みた「遠い記憶の中に」です。抽象的なオブジェクトの中から、過去に見た風景が淡く浮かび上がる表現が印象的です。
森さんは元々建築を学び、本学主催の建築コンペでも入賞された経験があります。建築の道に進んだものの、一度その道を離れ、一般企業へと転職しました。作品づくりから離れたことに物足りなさを感じる中で、表現の手段として写真に出会い、本学への入学を決めました。

仕事と学業の両立について触れると、森さんは当時の忙しさをこう振り返ります。

 

──仕事と課題の両立で、大変だったことはありますか?
1年目はレポート課題が多く、仕事の休み時間を使って3,000字のレポートを書いていました。
卒業制作では模型を写真に収める作品に取り組みましたが、1枚の写真を撮るのに2、3週間かかることもありました。残業のあと、寝るまでの時間を使って制作を進める日々でした。
大変ではありましたが、充実した3年間だったと思います。

限られた時間の中でも制作に向き合い続けた経験が、森さんの表現の土台となっていることがうかがえます。

本学での学びは、作品に対する向き合い方にも変化をもたらしました。

 

──本学で学んで、特に印象に残っていることはありますか?
SNSで作品を発信しても、反応は「いいね」で終わることが多いですが、この大学では、写真家として活躍する先生方から具体的な指摘をもらえます。「そういう見方もあるんだ!」と気づきを多く得ることができました。
こうした環境がなければ、自分の作品の何が良くて、何が足りないのか分からなかったと思うので、それがありがたかったです。

 

──写真コースでは、どのようなことを学ばれましたか?
撮る対象に対して、どのように撮っていくかという考え方や、技術的な部分はもちろん教えていただきました。
卒業制作では特に、どのように自分を表現するかという点について指導を受け、自分の「好き」に改めて向き合うことができました。
昔、建築家になるために海外で建築を学んでいたのですが、それを建築物としてアウトプットできなかったという後悔があることに気づきました。
そこで、その記憶をもとに建築をスケッチし、寸法を与えて模型を制作しました。自分の中にある理想も込めながら、記憶の曖昧さも含めて写し取ろうと考え、制作を進めました。周りから「作品が様変わりしたね」と言われるようになったのも入学して学べたからだと思います。

過去の経験と向き合い直すことで、表現として昇華していったことがうかがえます。

 

──この卒業制作には、どのような思いを込められましたか?
一度建築の分野で挫折しましたが、こうして作家として活動できているので、作家人生のリスタートを切ることができたのかなと思っています。
また、通信教育課程にはさまざまなバックグラウンドを持つ方がいて、そうした方々と関わる中で、写真以外にも多くのことを学べました。

挫折を経て再び表現に向き合う姿勢は、森さんにとって大きな転機となっているようです。制作の中でも、特に印象に残っている作品についても伺いました。


──特にお気に入りの作品はありますか?
「教会」の作品です。

ヨーロッパを旅していたときに、一日に何時間も歩くことが多く、教会に立ち寄って休憩することがありました。そのとき見た光の感じがとても神秘的で、その光景をどうしても再現したいと思い制作しました。
記憶の中のイメージも大切にしながら、「こうあってほしい」という思いを込めて図面を描き、模型を作りました。この作品は上から光を当てて撮影しています。

 

──展示されている四枚は、どのような基準で選ばれたのでしょうか?
記憶の深さや曖昧さのバランスができるだけ均一になるように選びました。
「教会」のほかにニューヨークの街並みや、パリで滞在したホテルの写真などを展示しています。

ニューヨークの街並み
パリのホテル    

この窓の作品は少し暗いのですが、この作品だけは内側から光を当てて撮影しています。このような新しい表現にも挑戦していきたいと思い、展示に加えました。

作品ごとの違いの中にも、テーマの一貫性が意識されています。
また、学びの中で得たつながりが、新たな活動へと広がっていると話してくれました。

 

──グループ展「Monologues」について教えてください。
16人で活動する写真サークルがあり、そのうち半数のメンバーで展示を行います。3月21日から22日に渋谷で開催予定です。
通信教育課程では、ひとりで学ぶのではなく、他の学習者との交流が盛んで、それがきっかけで、自分でもそういう場所を作りたいと思い、独自にサークルを立ち上げました。

 

──今後の活動について教えてください
建築の経験と写真を掛け合わせながら、制作を深めていきたいと考えています。
ゲルハルト・リヒターのような抽象表現にも関心があり今後の制作の参考にしていきたいと思ってます。
来年度はKYOTOGRAPHIEにも出品も視野に入れ準備を進めているところです。

写真表現を軸にしながら、今後さらに活動の幅を広げていく展望が語られました。

 

──これから入学を検討している方にメッセージをお願いします
一度挫折を経験しているからこそ、「生きているだけでいい」というくらいの気持ちでやっています。だからこそ失敗しても前向きにチャレンジすることが大事だと思います。
この大学にもチャレンジのつもりで入学しました。この大学での学びは何度でも立ち上がっていくことの大切に改めて気づけたと思います。

建築の挫折から始まった森さんの制作は、写真という表現によって新たな形を得ることができました。
記憶の奥にある風景をすくい上げながら、森さんの「作家人生」は、これからも続いていきます。

 

漠然とした芸大への憧れが、現実に ── グラフィックデザインコース 高橋千尋さん

高橋さんの作品「FUKUNOKA 服野花」は、「自然とファッションをつなぐ」ことをテーマにした作品です。野山の植物とファッションを結びつけた作品には色とりどりの植物が凛と咲いています。
高橋さんは新卒で地域情報誌を制作する企業に入社し、記事の執筆や編集を担当していました。その中でSNS運用や動画の制作といったビジュアル表現を伴う業務が増え、次第にデザインへの関心が高まったといいます。そこで、通信教育でデザインを学べる本学への入学を決めました。

まずは、仕事と学びをどのように両立していたのかについて伺いました。

 

──生活と学業の両立はどのようにしていましたか?
入学にあたって、仕事は正社員からパートタイマーに切り替えました。週3日ほど働きながら、その合間に制作や勉強を進めていました。

学びの時間を確保するために働き方そのものを見直したことからも、高橋さんの学習の本気度がうかがえます。
本学での学びは、日々のものの見方にも少しずつ変化をもたらしていきました。

 

──学びを通じて感じた変化はありますか?
デザインのスキルは、入学した頃と比べると確実に上がったと思います。それだけでなく、身の回りのものの見方も変わりました。街を歩いていても、看板やポスターなど、デザインされたさまざまなものが目に留まり、意識的に観察する習慣が身に付いたように思います。ロゴデザインひとつを取っても、そこに込められた意味を考えるようになりました。


デザインを学ぶことで、日常の風景そのものが以前とは違って見えるようになった高橋さん。そもそも、高橋さんの中には以前から「芸大」で学ぶことへの憧れがあったといいます。


──大学に入学するとなったとき、周りから驚かれましたか?
高校卒業後に別の大学を卒業していたので、「もう一回、大学で学びたい」と周囲に話した時は驚かれました(笑)。
漠然と芸術大学への憧れのようなものは持っていたんです。そこでこの大学のことを知って、「社会人が芸大で学べるのか。しかも通信で」と、その可能性に心が惹かれたことを覚えています。それならチャレンジしてみよう、と思いました。

 

──学ぶ際は対面かオンラインか選べますが、どちらでしたか?
8、9割ほどはオンラインでした。京都のキャンパスには一度行ったくらいですね。
初めはオンライン授業にハードルを感じていましたが、すぐに慣れてコミュニケーションもスムーズに取れるようになりました。不便さを感じることなく学ぶことができたと思います。
この大学を通じて出会った方もたくさんいるので、これからも関係が続いていったらいいなと思います。

場所に縛られず学べる環境の中でも、人とのつながりを実感できたことが印象的だったそう。そうした学びの中で、制作の考え方にも大きな影響を与えた授業があったと教えてくれました。

 

──グラフィックデザインコースの学びの中で、印象深いものはありますか?
広告デザインの授業で、商品やサービスのポスターを作る課題がありました。ひと目見ただけで内容や印象が伝わること、さらに興味のない人にも「これは何だろう」と足を止めてもらえること。ひとつのビジュアルでそのような役割を果たすことができると知り、デザインに対する意識が大きく変わったタイミングでした。この卒業制作にもその学びが活かされたと思います。

ひと目で伝える力を意識した学びが、今回の作品にもつながっているようです。
では、卒業制作「FUKUNOKA 服野花」はどのように生まれたのでしょうか。

 

──作品について教えてください

日本の野山に咲く花をモチーフに、それを生活の中で感じられるような架空のファッションブランドを立ち上げ、ブランディングデザインに取り組みました。「FUKUNOKA 服野花」というブランド名には、「服から生まれた野に咲く花」という意味を込めています。ダイレクトに伝わる名前にしたいと思っていました。
制作期間は半年から1年ほどですが、自然に対する関心は以前から持っていました。きっかけは、高校生の頃に写真家の星野道夫さんの作品に出会い、自然の豊かさに感銘を受けたことです。大学も農学部に進み、環境教育を学んでいました。

今回の作品は、卒業制作のために急に生まれたものではなく、高橋さんの中で長く育まれてきた関心が形になったものだとわかります。
その関心が、なぜ「ファッション」という表現につながったのかも伺いました。


──ファッションに至った経緯は何ですか?
自然の魅力を伝えたい、という思いが出発点にありました。アイデアのヒントとなったのは、「かさねの色目」という日本独自の色彩文化です。これは自然の風景や植物から写し取った配色を、着物のコーディネートに取り入れ、季節の移ろいを表現するという考え方です。平安時代の貴族が、和歌を詠む習慣の中で、常に自然に思いを馳せていたことから生まれたといわれています。
そのような文化を現代に再現できないかと思い、今回の作品ではファッションという形を選びました。
制作する過程で、「かさねの色目」をテーマにしたネイルポリッシュブランドや、ファッション雑誌を作ることも検討しました。
私はファッションに特別詳しいわけではありませんが、野山の植物に関心のない同年代の人にも知ってもらいたいという思いから、最終的にファッションという表現に行き着いたのだと思います。

自然の魅力をどうすれば身近に届けられるか。その問いへの答えとしてたどり着いたのが、「身にまとう」というアプローチだったようです。
制作を通じて、高橋さん自身もあらためて野山の植物の魅力を見つめ直したといいます。


──この制作を通じて、改めて野山の植物の魅力は何だと思いますか?
今回の制作を通して、野山の植物の豊かな個性を改めて感じました。日本の野山に咲く植物は、約7000種類といわれており、色合いや形もさまざまです。
花屋に並ぶ花もとてもきれいですが、野山に咲く花にはまた違った魅力があるような気がします。力強く、かつ繊細に咲く花の姿には、制作中も勇気づけられました。

高橋さんの自然に対する思いが、芸大での学びを通して、形となったことを感じさせる作品でした。
そのまなざしはこれからも、さまざまな形へと広がっていきそうです。

 

いつでも、だれでも、芸大で学べるということ

さまざまな方が学びを深める通信教育課程。今回話を伺った3名の方にも、それぞれに異なるバックストーリーがありました。これまで培ってきた経験を活かしながら、新たな学びへと足を踏み入れていく──そうしたこれからの「生涯学習」の在り方が、個々人の制作にも強く反映されているように感じます。

 

そんな学びのひとつの集大成ともいえる作品が一堂に会するのが、「京都芸術大学通信教育課程 卒業・修了制作展」。作品に至るまでの経緯や努力に思いを馳せながら、ぜひアーカイブサイトで、一つひとつの表現に触れてみてください。
その作品の向こうに、それぞれの人生と学びの物語が広がっています。

通信教育課程 卒業・修了制作展アーカイブサイト
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/graduationworks/

 

(文=文芸表現学科4年 千葉美沙希)

 

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