3月8日から3月15日の8日間、通信教育課程の卒業・修了制作展が開催されました。会場となったのは、本学人間館の1階から4階、ギャルリ・オーブ、至誠館の学生食堂です。全国各地で学ぶ幅広い世代の学生たちが、卒業・修了制作の鑑賞に、本学を訪れました。
今年度、コース設立以来初の卒業生を輩出した文化コンテンツ創造学科 食文化デザインコース、映像コースの展示など、さまざまな分野で盛り上がりを見せた卒業・修了制作展の様子をレポートします!
展示の様子
本学の大階段を上り、人間館へ入ると、さっそく展示されているのは、美術科 染織コースの卒業制作です。人間館の1階カフェラウンジの広い空間や、そこへ差し込む日の光を活かした展示がされていました。

染織コースは、テキスト科目とスクーリング、Webスクーリングを通して学ぶコースです。自宅で染織を行うなど、通信教育課程ならではの形態も特徴のひとつです。
様々なデザイン、手法を用いた作品が並び、人間館の入り口を彩りました。展示された作品の他にも、テキスト作品科目であるポートフォリオも展示されており、作品制作の詳細や、学生たちのこだわりをじっくりと楽しむことができます。
続いての展示は、文化コンテンツ創造学科 書画コースの卒業制作。「書」と「水墨画」を本格的に学ぶ、完全オンラインのコースです。
さまざまな形態で見せられる筆の動きが印象的な展示。カフェを訪れた人も足を止め、展示を眺める様子がうかがえました。

カフェを抜け、NA102、ギャルリ・オーブで展示されたのは、美術科 写真コース、日本画コース、洋画コース、陶芸コースの作品。分野の特性を生かした展示空間や、学生それぞれの作品へのこだわりが光る展示です。



人間館2階を広く使い、展示されていたのは、平面表現を中心とした視覚コミュニケーションとしてのデザインを学ぶ 文化コンテンツ創造学科 グラフィックデザインコースの卒業制作。学生が関心を抱いた社会課題や様々な年代のライフスタイルをテーマにした作品を展示しています。それぞれの学生の社会への眼差しを覗き見ることのできる展示で、多様なテーマの作品が並び、目が離せません。


中でも印象的だったのが、「マイクに話しかける言葉の温度で印刷される文字の解像度が変化する」という体験を伴う村山庸一さんの展示、「距離を通してうつ病を見る」。「うつ病」という視覚的にも、社会的にも理解することの難しい、つかみどころのない病と社会、作者自身、うつ病である作者自身と他者とのそれぞれの距離をさまざまな形態で表現、視覚化した作品です。作品の前で足を止め、実際にマイクに向かって話しかける人もいました。

村山さん「昨年の春から制作を始め、約1年かけて完成させました。自分で取り組むテーマを見つけ、そのテーマに基づき制作するという『自主テーマ研究』課題で取り扱った『うつ病』を引き続き卒業制作のテーマとして深めていきました」
グラフィックデザインコースでの学びを通し、一貫して「うつ病」というテーマを深掘りしていった村山さん。さまざまなアプローチを試み、卒業制作では小説、写真、デバイスの3つの形態で「うつ病」とのあいまいな距離感を表現しました。
ぼかし表現を用いた印象的な写真集は、うつ病が社会の中でどのように“見えなくされてきたか”を表現しているのだそう。家族、友達、同級生と写真を撮影し、千葉県で写真展を開催するなど、大学外の活動へも広がりを見せています。
小説「名前のない休職届」は、通勤中の30分を活かし、半年かけて書き上げた小説。執筆から製本まで、村山さんが手がけました。

ユニークな見た目のこちらの作品。
マイクが拾う「声・言葉」をコンピュータを通し、プリントします。その声の温度により、その文字の解像度が変化するというもの。一部体験型として展示され、印象的な作品です。
うつ病と他者の距離を、言葉の持つ温度という視点から、身体的な感覚を通し可視化するという試みです。
村山さん「卒業制作でもあったので、やりたいことは全部やろうと意気込むと同時に、絶対できるという自信をもって取り組みました」
視覚的に、感覚的に「うつ病」を解釈し伝える、村山さんの学びの集大成です。
至誠館5階、学生食堂にて展示されていたのは、環境デザイン学科 空間演出デザインコース。
インテリアや生活雑貨など、未来のライフスタイルを形づくるデザインを学ぶこのコースでは、空間プロデュース力を実践的に習得することもできます。
展示では、学生たちの発想を活かした生活空間のデザインが並びました。出身地や暮らす環境の違いが作品に表れ、全国各地で学ぶ通信教育課程だからこそ生まれる全国各地に根差した多様な生活へのアプローチを見ることができました。
こちらは、今年度、空間演出デザインコースの学科賞を受賞した黒沼悠里さんの作品「KABURA KIRIKO 切子ガラスの廃棄副産物に伝統と未来を宿す」(写真右端)です。


生産の過程で排出される副次的な廃棄物「廃棄副産物」と、一つ一つ手作業で作り上げられる切子ガラスに焦点をあてた作品です。本来であれば捨てられてしまう切子ガラスの廃棄副産物「カブ」を活用し、生活をより豊かに彩る工夫が凝らされています。日本の伝統である切子ガラスの「カブ」を、廃棄副産物の再構築という観点から再利用した作品が展示されていました。
食を「ライフデザイン(文化・社会)」、「ビジネスデザイン(プランニング・プロデュース)」「体験デザイン(理論・感性)」の3つの側面から領域横断的に学ぶ、文化コンテンツ創造学科 食文化デザインコースは、今年度の展示がコース初の卒業制作展示となりました。パネルでの研究紹介のほかに、ポートフォリオが展示され、じっくりと研究や活動の過程を知ることができます。


今年度、学科賞を受賞したのは佐々木久美さんによる「RE:FISH」。食べ物としての「魚」の背景として見えなくなってしまっている漁師の役割に着目し、缶詰のデザインなどを通して、その役割を可視化するためのデザインの提示です。
完全オンラインで自由な学習体制だからこそ生まれる、学生の暮らす環境の特性や、こだわりを活かした作品となりました。
同学科の映像コースも、今年度、コース初の卒業生を輩出しました。スマートフォンでの映像制作を入口とした、初心者でも映像制作を「楽しく」「深く」学ぶことのできるコースです。
学長賞を受賞したのは、小野寺あゆみさんの「沈黙の中の聲」。

本作品は、今年度の学科賞受賞作でもあります。会場では、多くの人が足を止めたり、設置された椅子に座ったりして、映像をじっくりと楽しんでいました。
通信教育学部の卒業制作展示と共に、本学大学院(通信教育)のコミュニケーションデザイン領域、メディアコンテンツ領域、美術工芸領域など、さまざまな領域の修了制作も展示されました。

学際デザイン研究領域は社会を観察し、浮かび上がる問いに対し、文化、歴史、制度、生活など様々な分野を横断する学際的研究に基づき、社会構成のためのデザイン、課題解決を目指す領域です。それぞれの学生が一つの作品の制作や研究をするのではなく、何人かの学生がグループになり、それぞれの得意を活かし、混ぜ合わせながら取り組んだ研究が展示されます。
「旧友との再接続を促す行動介入のデザインと評価」(写真右から3案目)は、愛甲香織さん、岡本雄太郎さん、片岡龍之さん、僧野大介さん、三星安澄さんの研究。
社会問題としての孤独・孤立の解決の糸口として「旧友」に着目した研究です。「旧友との再接続」を促す「I-NOTEgE(アイ・ノート)」の制作、そしてそれを実際に使用した際の結果を示していきます。
研究をする学生たちの持つ、社会問題への挑戦の眼差しがうかがえる、見ごたえのある展示でした。
芸術学科では、人間館4階の教室を使ったパネル展示が行われました。設置された椅子に座り、研究を熟読するお客さんも。学生たちの好奇心、日々の研究の成果が披露された展示です。


本年度学長賞受賞作
映像コース:小野寺あゆみさん「沈黙の中の聲」
和の伝統文化コース:杉村由里さん「茶の湯における掛物表装の裂地構成とその美的・階層「的意義ー織豊期から江戸時代中期の茶会記を手がかりにー」
日本画コース:金子光世さん「巡り往く(めぐりゆく)」


入学以来、数年かけて学び、日々経験を積んだ学生たちの集大成が披露された京都芸術大学通信教育課程 卒業・修了制作展。
それぞれの背景や分野は異なるものの、全力で取り組み、完成させた作品や研究は、現代社会に潜む問題の解決の新たな糸口を見せるとともに、物を生み出すことの楽しさを再確認させる場となりました。
(文=愛知はな、撮影=白井茜 ※★印は広報課撮影)
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