22歳の現役大学生が描く「ヤクザ社会」 — 文芸表現学科4年生・古谷弦大さんのシナリオが「第35回新人シナリオコンクール 特別賞 大伴昌司賞」を受賞!
- 上村 裕香
本学・文芸表現学科4年生の古谷弦大さん(クリエイティブ・ライティングコース)の長編シナリオ『ヤクザ依存』が、日本シナリオ作家協会主催「第35回(2025年度)新人シナリオコンクール」にて特別賞 大伴昌司賞を受賞しました。
受賞作『ヤクザ依存』は、衰退するヤクザの世界に生きる若き組員を主人公にした物語です。シナリオ作家協会発行の雑誌「月刊シナリオ」2026年5月号に掲載された選評では、審査委員長の加藤正人氏をはじめ多くの審査員がエンターテインメント性や台詞の達者さを評価し、映画化への期待を寄せました。
2026年6月12日(金)には、「第35回(2025年度)新人シナリオコンクール」の授賞式が開催されました。本記事では、授賞式の様子と加藤審査委員長、古谷さんへのインタビューをお届けします!

古谷弦大
2003年生まれ。奈良県出身。京都芸術大学在学中
第35回(2025年度)新人シナリオコンクール 特別賞 大伴昌司賞 受賞
新人シナリオコンクールは、昭和26年に日本で最初のシナリオコンクールとして発足し、のちに「新人映画シナリオコンクール」と「新人テレビシナリオコンクール」が統合され、現在の形となりました。平成23年度にはシナリオ講座の学内コンクールである「大伴昌司賞」が統合され、新たに「特別賞 大伴昌司賞」が設置されています。
授賞式の会場は、立食パーティー形式の華やかな雰囲気に包まれていました。同日に開催された第49回シナリオ功労賞の授賞式が終わると、いよいよ新人シナリオコンクールの授賞式が始まります。

はじめに、加藤正人審査委員長が選考を振り返りました。加藤審査委員長は、古谷さんの作品について「脚本のコンクールに応募される作品では珍しく、エンターテインメント性の高いシナリオでした。とても面白く、『こういう作品にもぜひ賞をあげたい』ということで、審査員の意見もほぼ一致しました。まだ22歳の現役学生でありながら、なぜこんなに面白い作品が書けるのだろうと驚きました」と、そのエンターテインメント性の高さを評価しました。
表彰状を授与された古谷さんは、次のように喜びを語りました。
「このような大きな賞をいただき、本当にうれしく思っています。これまで継続や努力が得意な人生ではなかったのですが、そんな自分が続けてこられたのが脚本でした。……と、言えるほど、脚本を学びはじめてからまだそんなに時間が経っていないので、これからもっと勉強して、さらに面白い作品を書いていきたいと思います」

映画化も期待! 審査委員長が語る『ヤクザ依存』の魅力
古谷さんの受賞作『ヤクザ依存』は、なぜ多くの審査員の心をつかんだのでしょうか。授賞式終了後、審査委員長の加藤正人氏に作品の魅力や評価のポイント、そして文芸を学ぶことの意義について伺いました。
——今回の古谷さんの作品について、評価されたポイントを教えてください。
加藤審査委員長:若い人ならではの感性が評価されたポイントかなと思います。青春の匂いがするような、新鮮な描写が素晴らしかったです。なにより、22歳の学生がここまで面白く、達者に書けることに驚きました。
シナリオのコンクールでエンターテインメント作品が受賞するのは、実は珍しいことなんです。しかし今回は、「これだけ面白いのだから賞をあげよう」と審査員の意見が一致しました。審査会の段階から「ぜひ映画になってほしい」という声も多く上がっていました。実際にスクリーンで観られる日が来るのではないかと期待しています。
——映画化の期待が高い作品として評価されたのですね。

加藤審査委員長:そうですね。作品として優れていることと、商業映画として成立していることはやはり違います。素晴らしい作品でも、映像化や商品化が難しいものもあります。
その点、『ヤクザ依存』は映像がすぐに思い浮かぶ作品でした。シーンが自然と頭に浮かび、「映像化したら面白いだろうな」と思わせてくれる力があったんです。
——古谷さんが本学の文芸表現学科で学んでいることも影響しているのでしょうか?
加藤審査委員長:大いに影響していると思いますよ。脚本を書くうえでは、構成力や描写力がとても重要です。どう人物を描写していくかという力も含めて、文芸表現学科で学んだことが大きく生かされているのだと思います。
——文芸を学ぶ在学生や、広くクリエイティブを志す学生・高校生へのメッセージをお願いします。

加藤審査委員長:文芸というと、小説だけのイメージがあるけど、文芸で学ぶ「文章を書く力・構成する力」は、脚本にも、ものすごく役に立っていると思います。
現代はSNSやYouTubeなど映像コンテンツが発達した時代ですが、映画も最初は文字から始まります。企画を考え、構成し、形にする。その出発点はすべて文章です。どんな業界に進んだとしても、自分の考えを伝えるときは、まず言葉から始まります。文章による表現を学ぶことは、一生役立つスキルになるはずです。だれでもスマートフォンで手軽に映像を撮れる時代だからこそ、発想の原点となる「言葉で考える力」の価値は、むしろ大きくなっているんじゃないかと思います。
「ヤクザを辞めるまでの物語を書きたかった」 古谷弦大さんインタビュー

若くして全国規模のコンクールで評価された古谷さん。そもそもなぜヤクザを題材に選んだのか。どのように作品を生み出したのか。受賞の裏側や創作への思い、これからの目標について話を聞きました。
——『ヤクザ依存』をとても面白く読ませていただきました。大学生の古谷さんからすると、ヤクザの世界というのは少しご自身と距離があるのかなとも感じたのですが、まずこの作品を書こうと思ったきっかけはなんだったのでしょうか?
古谷さん:もともと、好きな映画にヤクザものが多かったんです。北野武監督の『アウトレイジ』や『ソナチネ』、西川美和監督の『すばらしき世界』などが好きで、去年の春頃から「ヤクザものを書いてみたい」という気持ちがありました。
最初に考えていた企画は今とはまったく違ったのですが、ゼミの演習授業で担当教員の山田隆道先生(文芸表現学科 学科長)と話す中で、「ヤクザを辞めた後の物語は『すばらしき世界』などの先行作品があるけど、ヤクザを辞めるまでの物語は意外と描かれてないよね」という話になったんです。
現代では、暴対法の改正などもあって、多くの人が組織を離れているはずなのに、彼らはどこに消えていくんやろう。どうやって辞めてるんやろう。それって想像つかんよな。そんな話をする中で、じゃあ、そこに物語があるんじゃないか、と思い、『ヤクザ依存』を書き始めました。
——いわゆる「ヤクザ映画」の脚本の中でも異色作ですよね。現代社会の中で見過ごされている存在を描こう、というような意識はあったんでしょうか。
古谷さん:そういった社会的な眼差しよりは、エンターテインメントを描きたいという意識の方が強かったですね。選評でも書いていただいていたんですが、社会性や問題提起を前面に出した作品ではないと思っています。
初稿を書いたときには、最終的に提出した120分の映画サイズの脚本じゃなくて、1時間ドラマのサイズだったんです。ゼミで同級生や山田先生に意見をもらう中で、「これは120分の企画やろ」と言われて、物語の軸を「ヤクザの辞め方」にシフトして……結構、紆余曲折あって完成した作品です。
——その作品で、見事、新人シナリオコンクールの特別賞を受賞されました。受賞を知ったときのお気持ちは?
古谷さん:受賞の知らせがあった日はたまたま寝ていて、起きたらシナリオ作家協会からメールが来てたんです。でも、「入選」という言葉の意味がよくわからなくて、とりあえず山田先生に連絡しました。混乱してたんですね(笑) 山田先生から「夜中やから、翌朝もう一回確認しよう」と言われたので、一晩寝て、翌朝、改めてメールを見ました。それで、どうやら夢ではなさそうだとわかって。
正直、もっと厳しい講評をいただくと思っていたんです。でも、(「月刊シナリオ」に掲載された)選評で「面白かった」「セリフが良かった」と、自分ではあまり意識していなかった部分を褒めていただけて、本当にうれしかったですね。

——読んでいてすごくいいなと思った台詞が「社会の誰も、俺らが堅気になることなんて望んでない。俺の人生の一番の間違いはヤクザになったことで、二番目は辞めたことや」という台詞です。本質を突いた、非常にアフォリズム的な台詞ですよね。
古谷さん:そういう台詞は、楽しんで書けたかなと思います。ゼミの授業で「名言構文」を教えてもらったので、それを応用してます。名言構文というのは、例えば『踊る大捜査線』の青島警部が言う「事件は会議室で起きてるんじゃない。事件は、現場で起きてるんだ」とか、『3年B組金八先生』の金八先生の台詞である「我々はミカンや機械を作っているんじゃないんです。我々は毎日、人間を作っているんです」とか。上の句で振って、本当に言いたいことは下の句で言うような台詞ですね。いつも山田先生が一人芝居というか、落語みたいな感じで教えてくれて、大変だなーと思いながら見てます(笑)
——脚本を書くことを、すごく楽しんでいるんですね。今後はどんな作品を書いていきたいですか?
古谷さん:今後はドラマにも挑戦したいですね。映画の尺は自分に合っている感覚があるんですが、テレビドラマはまた違う難しさがあるので、挑戦していきたい。せっかくこうして評価をいただけたので、もっと上を目指したいですし、将来的には仕事として続けていきたいと思っています。
すでに小説原作の脚本依頼をいただいているので、まずは目の前の仕事をがんばっていきたいです。『ヤクザ依存』についても、映画化のオファーをいただきました。映画公開に向けて、できることをしていきたいと思っています。
ぼくの強みは「勉強が上手」なところだと思うんですよ。いろんな方に言われたことや授業で学んだ内容を吸収して、なんでも書くし、なんでも活かす。「こだわりがない」と言い換えてもいいかもしれません。いろんな作品から吸収して、換骨奪胎して、自分のものにしていくスキルは高い方だと思います。「なんでも書きます!」というのが強みですね。
——瓜生通信を読んでいる在学生や、本学を目指す高校生にメッセージをお願いします。
古谷さん:公募のコンクールには、絶対に出した方がいいと思います。だれが評価してくれるか分からないですし、単純に作品を見てもらえる機会が増えるので。それに、社会経験にもなります。授賞式の今日一日だけでも、二年分くらいの人生経験をした感覚があります。業界のさまざまな方とお話しすることができましたし、大学の中だけでは見えなかった世界も知ることができました。ぜひ、外へ出て挑戦してみてほしいですね。

自分が好きな映画への憧れから生まれたという『ヤクザ依存』。その作品は、多くの審査員を驚かせ、映画化への期待まで集めることになりました。
インタビューを通して印象的だったのは、古谷さんの「脚本を書くのが楽しい」という言葉。そして、ゼミで同級生や担当教員から投げかけられる意見やアドバイスを素直に吸収しながら、自分の作品へ昇華している姿でした。これからどんな物語を生み出していくのか。脚本家としての今後の活躍がますます楽しみです。
古谷さんの「第35回(2025年度)新人シナリオコンクール」特別賞・大伴昌司賞受賞シナリオ『ヤクザ依存』は、シナリオ作家協会発行の雑誌「月刊シナリオ」2026年6月号に掲載されています。映画や脚本、小説など物語づくりに興味のある方は、ぜひ手に取ってみてください!
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上村 裕香Yuuka Kamimura
2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。京都芸術大学大学院 芸術教育領域 メディアコンテンツ分野修了。