サムネイル画像:二十間坂
2025年9月27日(土)に北海道函館市で収穫祭を開催しました。収穫祭は通信教育課程の在学生、卒業生、教職員の交流の場であり、全国各地の芸術文化を現地で学ぶための場として日本各地で毎年実施しています。今回は20名の在学生と卒業生が参加し、函館市における重要伝統的建造物群の保存および継承に関するミニレクチャーを聴講した後に、町中に出て保存活動の現場を見学しました。その様子をご紹介します。
函館市の歴史、地理、重要伝統的建造物群について学ぶ

函館市本町にある函館コミュニティプラザGスクエアにおいて13時から始まったミニレクチャーについて最初にお話ししましょう。レクチャーの担当者は本学通信教育課程芸術学科長の野村朋弘教授です。同地のご出身である野村教授から、まず函館という町の特異性について、古地図やさまざまな映像資料を用いながら歴史的・地理的視点からの説明がありました。

1853年に黒船で浦賀にやって来たアメリカ東インド艦隊司令長官のペリーは翌年にも日本に来航し、江戸幕府との交渉の結果、日米和親条約が締結されました。そして箱館(函館)は外国船に対して薪水と食料の供給地となることを約束させられます。さらに日米修好通商条約が1858年に結ばれ、1859年からは本格的に外国貿易のための港として函館は開港することになりました。

それ以降、同港は主要な外国貿易港として発展し、函館山のあるトンボロ(陸繋砂州)は急激な変化を遂げ、当時の日本において有数の人口を擁する大規模な都市へと変貌します。外国との貿易港であったために、西洋の建築物、文物、風俗が流入し、いち早く近代化が進むことになります。その中心となった函館の元町界隈は、函館山と函館湾に挟まれた狭小な斜面に建物が密集し、また海風を受ける独特な地形でもあることから度々大火災にみまわれますが、この港町はその復興の過程において最新の都市へとその都度生まれかわり、他にはないユニークな姿を形成します。
一階は和風で二階が洋風の和洋折衷住宅、本格的な洋館、コンクリートを用いた近代的な建物や電柱、当時の日本には珍しい大通り、アメリカのものを参考にした三方式地上式消火栓など、こうしたものが長い年月を経た令和の世においても存在することで、それが函館独自の魅力として認められ貴重な観光資源となっています。これらの文化遺産は偶然残ったものではありません。明確な意志によって保存・継承されてきたことが重要です。昭和63年に函館市西部地区歴史的景観条例が制定されて以来、伝統的建造物群だけではなく周辺地域の環境も含めて文化財とみなし、それらを伝統的建造物群保存地区として包括的に保護するさまざまな活動が続けられてきました。
今回のミニレクチャーでは、そうした行政主導による対策というよりも、とくに市民による保存・継承の試みに焦点を絞って事例を紹介していただきました。その特徴は、町中に点在する歴史的な価値をもった古い家屋や商店のような建物をまるでタイムカプセルに閉じ込めたかのようにそのままの姿で後世に残すことではなく、人が住み生活する場としての機能を重視して、時によっては建物等に手を入れることも検討しながら保存・継承するというものです。こうした取り組みにかんする説明をいくつか受けた後で、函館コミュニティプラザGスクエアのある本町から伝統的建造物群保存地区がある元町へと市電で移動し、現地で野村教授から実例を見学しながら保存・継承にかんする解説を聴講しました。

現地見学は旧丸井今井百貨店(函館市地域交流まちづくりセンター)から出発し、途中に八幡坂や二十間坂などを経由しながら秋晴れの爽やかな元町を2時間近く散策しました。




参加学生レポート
暮らす人と歴史が交差する町並み
9月27日「函館市における重要伝統的建造物群の継承を学ぶ」収穫祭に参加した。
講義では函館の美しい街並みができる歴史を「大火」をキーワードに学んだ。それらを実際に目にするべく現地見学では、重要伝統的建造物群地区周辺の石造りの建物や明治・大正期の建築が並ぶ坂道を歩いた。
歴史的建造物の一つ第三坂ビルヂングはブライダルサロンや宿泊施設に再生され、和洋折衷の構造が特徴的な建物はパン屋、理容院がゲストハウス「佐藤理容INN」として蘇るなど、手がけた人々の創意工夫が感じられた。
1934年の大火で市の三分の二が焼失したこの地は、痛みを乗り越え多くの人が訪れたい町となった。
築90年を超える「街角ニューカルチャー」はポップアップストアやイベント会場として人々が交流する場ともなっており、文化と生活が融合する街の再生は現在進行形である。
歴史的建築を現代の用途に生かすことは「守る」だけではなく「使われる」ことで、暮らす人と歴史の関係をデザインし直すことではないかと思った。夜景はかつて文化の中心であった函館山麓の歴史ある町並みよりも、郊外へと灯りが広がった。しかし、歴史ある町並みに一つ一つ灯りはじめた新たな光は函館夜景をさらに美しくしていくだろう。
(櫻井武文 芸術学科アートライティングコース 2022年度生)
(文=リベラルアーツセンター 教員 加藤志織)
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