INTERVIEW2026.05.11

文芸

好きを究めてたどり着いた場所 京都芸術大学文芸表現学科卒業生・市川光希さんインタビュー

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  • 京都芸術大学 広報課

京都芸術大学 文芸表現学科 社会実装科目「文芸と社会3」は、学生が視て経験した活動や作品をWebマガジン「瓜生通信」に大学広報記事として執筆するエディター・ライターの授業です。

本授業を受講した学生による記事を「文芸表現学科の学生が届ける瓜生通信」と題し、みなさまにお届けします。

就職。それは多くの大学生が一度は抱える不安ではないでしょうか。芸大生も例外ではなく、かくいう私も、この問題に悩み続けています。世の中にはどんな仕事があるのか。大学で学んだことは、どのように活かせるのか。そう考えるだけで胸がズンと重くなり、動けなくなってしまいます。
この不安の先には、「好き」を武器に働く卒業生がいます。そこで、今回は本学の卒業生の方にインタビューし、就職にまつわる経験や学びについて話を伺いました。

取材相手の紹介

市川光希(いちかわこうき)さんは2017年に京都芸術大学文芸表現学科に入学し、2021年に卒業しました。現在は株式会社わかさ生活のオウンドメディア『DEKIRU!』で、さまざまな挑戦者の取材・執筆を担当しています。

大学時代から年間100冊以上の読書を続け、現在も小説執筆や文芸イベントの企画など創作活動を行っていて、本を心から愛している方です。
市川さんは、今の仕事に就くまでにどんなことを経験されたのでしょうか。さっそくお話しを伺っていきましょう。

就職活動の後悔と苦難

学生時代、市川さんはあまり就職活動やそれに関する授業に意欲的ではなかったと言います。さらに、3年生のときに受けた企業の採用面接で挫折を味わいました。

市川さん「それで、就職に対する心が完全にポッキリと折れてしまって……もう就活なんて知ったもんか! と逃げるように小説ばかり書いていました」

卒業後に企業に就職するも、そこで待ち受けていたのは想像していなかった苦難でした。

「当時の生活を振り返るとゾッとする」と市川さんは語ります。

市川さん「大学では好きなことをしていた時間がすべて仕事に置き換わってしまったのが、なによりもしんどかったですね。なんとかぎりぎり卒業間際に決めたというのもあって、自分の好きな職種ではなかったですし、休みの日や帰ってからも次の日の準備や、それがなくても仕事のことが常に頭にあって、好きなことをする時間も余裕も全くありませんでした。もちろん自分がちゃんと就活していなかったのが悪いのですが、小説で読んできた、嫌な人や出来事って本当にあるんだと実感する毎日で、心は常に悲鳴を上げていましたね」

その環境で好きな創作活動もままならなくなった市川さんは、本格的に就職活動に向き合い始めました。就活サイトを利用し、片端から本に関わる仕事を探したといいます。そこで出会ったのが、現在勤めているわかさ生活でした。背水の陣の覚悟で挑んだ面接ではとにかく本に対する熱量を語ったところ、その思いが伝わり、見事入社を決めることができました。
現在の仕事では、記事の取材で小説家の方に会う機会があるそうです。学生時代に本をたくさん読み、感想を言葉にしてきた経験が活きているのだとか。授業で積み重ねた時間は決して裏切らないのだと感じました。

自分の武器

市川さんは、就職活動での経験を振り返りながら、最後まで手放さなかった「本」について語りました。
「僕の武器は本を読んでいること、本への愛が強いことしかなかったんです。だからそれがなるべく大きく強く見えるように、とりあえず振り回していましたね」
本を「自分の武器」と表現する市川さん。その本に対する熱はどこから来るのでしょう。

「本を読めなくなることはあっても嫌いになることはないですね。本を読めないときは書いたり、直したり、本以外のもので文章や物語に触れていますし、僕にとって一番好きなものが本なので、結局はそこに戻ってきます。働いてみて実感したことなんですが、世の中にはそれまでの自分の常識ではありえないような、理解できない人や、分かり合えない人は少なからずいます。そういう人のことを知ったり、想像する力をつけるのに本は最強だと思うんです。それに僕は言葉によって救われてきた人なので、そういう言葉に出会う、再会するために読んでいるところもあります。そうしたら自然と、本の優先順位が1位になっていました」
市川さんにとって本は、単なる趣味ではない。人と向き合うための手段であり、自分の一部になっているのだと思いました。生活の中に組み込まれ、切り離せない存在になっていると強く感じたのです。

後輩へのメッセージ

インタビューの最後に、受験生や在学生の皆さんにメッセージをいただきました。
市川さん「就職活動は、自分でやりすぎって思うくらいやりましょう。そして、どんなときも『自分はこういう仕事がしたい!』って言い続けてください。それを貫いたから今の自分があると思ってます
さらに続けて、かつて、市川さんが人からもらって、救われた言葉を紹介してくれました。

「今の時代、本を読んでいるだけで十分なステータスになります。出版物に関わる業界において、本に対してたくさんの愛と熱量を持っていることは、必要不可欠ですが、今そのような人材は多くありません。だからあなたを求めている会社はきっとある。めげずに頑張ってください」

「この言葉を思い出すたびに、現在勤めるわかさ生活での日々を振り返ってこの言葉が本当だったなと感じることが多いです」と語る市川さん。自分の“好き”を信じ、諦めずに挑戦することの大切さを熱く語ってくれました。

市川さん「好きを信じて挑戦していく先で、もしお会いできた日には、あなたの人生も――ぜひ、取材させてくださいね!」このように語る市川さんのまっすぐ見つめる眼差しがとても印象的でした。

最後に

インタビューを通じ、好きなものを持ち続けることの大切さをあらためて感じました。市川さんにとっての本のように、誰もがきっと自分だけの武器を持っていることでしょう。それを諦めず磨き続けることが、いつか皆さんの未来を開くきっかけになるかもしれません。

『DEKIRU!』HP
https://media.wakasa.jp/
『「本」の挑戦者たち』
https://media.wakasa.jp/articles/book/

(構成・執筆 文芸表現学科 3年 山滝みのり)

 

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