REPORT2024.11.12

教育

人生が続く限り芸術の学びは続いていく ― 2024年度 京都芸術大学 秋季 学位授与式・卒業式のご報告

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  • 上村 裕香

秋晴れの陽気が心地よいこの頃、2024年10月14日(月・祝)京都・瓜生山キャンパスにて、大学院・学部通学課程および通信教育課程の秋季卒業式が執り行われました。大学院課程からは修士1名、通学課程からは学士23名、通信教育課程からは学士106名がそれぞれ学位を授与されました。

本学の通信教育課程 芸術教養学科は完全オンラインでどこでも学べるのが特徴。この秋季卒業式には、全国各地や海外など様々な地域からオンライン授業を受講し学位を取得された方が参列されました。
卒業式は対面とオンラインのハイブリッド型で行われ、全国・全世界の卒業生やご家族のみなさまに向けてライブ配信されました。

アーカイブ動画はこちら(https://www.youtube.com/live/U4LxQu5klGo)。


芸術を学び続ける

まずはじめに、学位記・卒業証書の授与が行われました。大学院からは芸術研究科 芸術専攻の高橋順平さんが登壇し、通学部からはマンガ学科のタケダヤスノリさん、通信教育部からは芸術教養学科の谷賢史さんが卒業生代表として学位記・卒業証書を授与されました。

吉川左紀子学長の式辞では、「みなさんの大学生活はコロナの影響を受けて不自由なこともあったと思います。しかし、これから社会に出て歩まれていくうちに『喜怒哀楽』のすべての感情が、みなさんの人生を豊かにする経験として思い起こされると確信しています。人間は、いま生きているときに感じる感情と、未来で過去を振り返るときの感情の二つの時間を生きている。これは、わたしが心理学を学ぶ中で知ったことです。ネガティブな感情を経験することで、いま辛い思いをしている人や苦しんでいる人に共感することができます。楽しいことばかり、うれしいことばかりの人生であれば、そうした人々に共感し協働することは難しいかもしれません。ですので、みなさんは大学生活の中で経験したいろんな感情を大切に過ごしていただきたいと思います」と話されました。

通信教育部の卒業生たちには、「今年度の卒業研究で学長賞を受賞されたのは谷賢史さん、学科長賞を受賞されたのはカワムラテイジさんです。谷さんの卒業研究はアートで景観を美しくすることと、防災を両立するデザインについての大都市圏でのプロジェクト。カワムラさんの論文は、都市の祭礼の観点からコミュニティの持続性という問題を考察する論文でした。いま挙げたお二人以外の卒業論文も、みなさんの芸術教養学科での時間と苦労を感じさせる素晴らしいものばかりでした」と卒業研究についての所感を述べ、
「通信教育部のみなさんは、仕事をしながら、あるいは子育てをしたり、ご両親のケアをしたりと、二刀流どころか、三刀流、四刀流で、この学びの時間を過ごしてこられたと思います」と通信教育部での学びについて思いを馳せ、労りの言葉をかけられました。

最後に、卒業生全員へのはなむけとして、「本学は、『芸術の学びは人生が続く限り続いていく』というのが、芸術の学びのあり方だと考え、色々な仕組みを用意しています。卒業生・修了生の方々が卒業後も作品を発表し続けられる展覧会や、アートマルシェ、同窓会など、芸術に触れ続けるイベントがいくつもあります。卒業する大学は『母校』という言葉の通り、いつでも戻ってこられる場所として存在しています。卒業式は大学を離れる一つの区切りの日ではありますが、これからも学び続けていっていただきたいと思います。本学で過ごした時間が、これからの心の糧になり、みなさんの人生を豊かなものにすることを願っております」と、卒業後のみなさんの学びの、益々の発展を祈念されました。


社会の変化の中で

続いて、卒業生代表からの「卒業の辞」が読まれました。卒業生代表を務められたのは、芸術教養学科の谷賢史さんです。

卒業の辞
本日は、このような素晴らしい卒業式を開催していただき、卒業生を代表して、心より感謝申し上げます。10月中旬といえば、本来ならば「秋が深まり、季節の移ろいを感じるこの頃」という言葉がしっくりくるものですが、今年の長引く猛暑を振り返ると、その季節を表す言葉が今も適切かどうか、少し考えさせられるところです。近年、気候に限らず、さまざまな変化によって、かつての常識や通例が揺らいでいるように感じます。

振り返ると、私が入学した2020年も大きな変化の年でした。新型コロナウイルスの蔓延により緊急事態宣言が発令され、それまでの生活が一変しました。このパンデミックにより、私たちは多くの悲しい出来事と、急速な変化に向き合うことになりました。
私が入学を決めたのは、こうした社会の変化を前にし、自らに少しでもポジティブな変化を起こしたいという思いからでした。そして、オンラインで学べる環境が整った京都芸術大学を知り、入学を決めました。長らく、体系的に造形作品の美しさ、優れた芸能や音楽を構成する要素を理解したいという思いがありながら、日常に追われ、その機会を先延ばしにしていた私にとって、自分自身を変える良い機会だと感じました。
思えば、この4年間は、知れば知るほど、ものを知らぬことを知るという連続でした。それは時に苦しく、楽しい日々でした。大学で学んだ芸術活動の歴史や伝統との向き合い方は、私の今後の学びの基礎となり、また社会との関わり方をより深く考えるきっかけになったと感じています。何より、単に知識を得るだけでなく、学びが習慣となり、より深く調査し、探求する姿勢が体に染みついたことが嬉しく思います。今後も歴史や伝統から学び、変化し続ける社会に対して創造性をもって柔軟に向き合っていきたいと思います。

最後になりましたが、ここまで導いてくださった先生方、学習を支援してくださった職員や卒業生コーチの皆様、共に学びを分かち合った学友たち、そして最も近くで私の健康を気遣い支えてくれた妻に、あらためて感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました。皆様のご健康と、京都芸術大学の更なる発展をお祈りし、卒業の辞とさせていただきます。

2024年10月14日
秋季卒業生代表 芸術教養学科 谷賢史


芸術で世界を平和にする

卒業生からの芸術への真摯な思いを受け取り、徳山豊理事長から歓送の辞が贈られました。「本学園は1977年に京都芸術短期大学として産声を上げました。開学当初から『藝術立国』を標榜し、芸術で世界を平和にするその一助になればという思いで、本日まで学園は成長してきました。世界中で戦争が起こり、自然災害が発生している現在だからこそ、これからも芸術を学び、芸術の力で平和を求めることが必要だと改めて確信しています。自然に対して、わたしたち一人一人は本当に小さな存在です。しかし、決して諦めることなく、平和を望みながら創作・制作を続けることが、わたしたちの次の世代、あるいはもっと先の世代の力になるはずです。それを信じて、本学はこれからも芸術を通した活動を続けます。卒業生・修了生のみなさんも、それぞれの職場や日常生活で、平和を望みながら、ご自身の活動を続けてください」と、本学の理念と、卒業生へのはなむけの言葉を述べられました。

卒業式の終わりには、学園歌『59段の架け橋』を斉唱しました。卒業生と列席された先生方や卒業生・修了生のご家族がともに声をそろえて歌い、学生生活の思い出を振り返る時間となりました。

 

宿題を胸に学び続ける

卒業式閉式後には、通信教育部 芸術教養学科の分科会が行われました。下村泰史学科長より、卒業式に出席された卒業生お一人ずつに証書を授与しました。各賞の受賞者の発表、賞状授与も行われ、互いに拍手で同志を讃え、門出を祝い合う時間となりました。

分科会の最後には、芸術教養学科の教員一人一人から卒業生へのはなむけの言葉が贈られました。
下村学科長は「卒業研究へのコメントを宿題として、これからも学びを続けてください」と、卒業生のみなさんの芸術との向き合い方について話されました。
「実はわたしは今回、卒業研究のレポートに厳しい点をつけたんです。これは宿題だと思ってほしいです。研究添削に書かれているコメントを心のどこかに置いて、アップデートするつもりで周りのものを観察して、これからも芸術に取り組んでいただけたらなと思っています。いま現在も、みなさん職場やご家庭、地域社会でご活躍されていると思いますが、今後もそうした大学の外で、芸術教養学科で学んだことを生かしていってください。そして、その経験をわたしたち教職員や在学生に伝えていただけたらうれしいです」

授賞式後には会場のあちこちで記念撮影が行われていました。これまではオンラインで繋がって切磋琢磨してきた通信教育部のみなさんも、集合写真のときには互いに声をかけ合い、卒業を祝い合っていました。通学部の学生にとっても、列席した学科の先生方と学生生活の思い出を振り返る時間となりました。卒業生のみなさんの笑顔は誇らしく輝いていました。

卒業生のみなさんが今後も地域社会や職場、家庭で芸術活動を続けられることを祈念して——。卒業生・修了生のみなさん、この度はご卒業・修了、誠におめでとうございます。

 

 

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  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学 文芸表現学科卒業。2024年 京都芸術大学大学院入学。

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