REPORT2024.06.18

京都教育

教員の研究成果と京都文化の淵源を知る「松尾大社展」[収穫祭in京都文化博物館]

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  • 京都芸術大学 広報課

今年もまた通信教育課程の恒例のイベントである収穫祭がはじまりました。収穫祭とは全国にいる在校生・卒業生と教職員との交流・学修を目的としたものです。2018年からスタートして、年々、規模が大きくなり、現在では全国8会場で開催しています。

昨年度、全国各地で開催していたとき、吉川 左紀子学長より本学のある京都でも実施してはどうかとお話があり、今年度の第一回目として京都で開催されました。

今回のメインイベントは、中京区にある京都文化博物館での特別展「松尾大社展 みやこの西の守護神(まもりがみ)」を見学するというものです。松尾大社は701年に現在の西京区嵐山宮町に建立された平安京よりも歴史のある古社です。現在ではお酒の神様としても有名ですね。 この松尾大社には国の重要文化財に指定されている最古級の御神像三体をはじめ、多くの社宝が所蔵されています。 特に古文書は、源頼朝・足利尊氏・足利義満・織田信長・豊臣秀吉・徳川家康といった歴史の教科書でみる将軍や天下人が出したものをはじめ、古代から近現代までのものが多岐にわたって遺されています。
この松尾大社の史資料について、芸術学科 和の伝統文化コースの野村朋弘教員が長年にわたって調査・研究をしてきました。その成果の一部ということで、4月27日から京都文化博物館でこの特別展が催されており、野村教員は展示の監修を行っています。そこで監修者から展示内容についてレクチャーしてもらい、京都文化をより深く知ろうとこの「収穫祭」が企画されました。

今年度一回目の収穫祭ということと、京都で開催されるということもあってか、とても多くの参加希望者がおり、当日は抽選に当選した48名の在校生・卒業生が午前に文化博物館近くの京都市男女共同参画センター「ウィングス京都」に集合しました。まずは展示前の特別講義です。野村教員から10年来の調査・研究成果についてレクチャーがありました。芸術大学のなかでも、研究系の教員の成果は論文や一般書を執筆することが多いですが、一般の方々、特に京都市民の氏子の方々などに研究・調査成果をどう伝えるべきかを考え、特別展を企画するに至った経緯を説明いただきました。
特に今日遺されている史資料をどう保存・維持し、さらには次の世代へパスするのか。それは「過去との対話ではなく、現代の対話」であると話ががあり、いまある歴史資料は遺す「想い」と「努力」がなければ次の世代へ伝えることは出来ません。「調査 → 分析・研究 → 研究成果の公開 → 保存・活用の対話」というのは、歴史資料のみならず、美術品にも通じるという指摘がありました。
1時間ほどのレクチャーは、真摯な学問的な話から、笑いもあるもので、参加された在校生・卒業生の皆さんも愉しまれていました。

「特別講義の様子」

そしてお昼休みを挟んでの展示見学です。但し会場は貸し切りという訳ではありませんので、16人ずつ3グループに分けて、1時間ずつの展示見学を実施しました。
展示会場では京都文化博物館のご協力を得て、解説用のイヤホンガイドをお借りしての見学です。

「京都文化博物館の二階でイヤホンガイドを付けて、いざ特別展の会場へ」

こうした特別展のときには、通常、古代・中世・近世・近代・現代と、時代順に展示されるものですが、松尾大社には多くの氏子がおり、4月と5月に催行されている松尾祭に関わっているということから、近世・近代から時代を遡る形で松尾大社のことを理解してもらう流れになっていると説明がありました。

また「洛中洛外図屏風」などの絵画資料とともに注目されたのが、建築や土木工事で用いられる3D測量の技術を用いて社殿や磐座までをも記録したものがありました。これは文化資産のデータ化という新しい試みとのことです。

「洛外図屏風」を前に説明に聞き入る参加者の皆さん」

続いて、今回の展示で販売されているおちょこやお銚子等のグッズにも用いられている「亀の牛王宝印(ごおうほういん)」について説明がありました。織田信長が明智光秀に討たれた本能寺の変からはじまる松尾大社に関わる事件について、研究者というよりは講談のようにも語る野村教員。参加者からは「おぉ」といった声が上がっていました。

「参加者の皆さんは熱心にメモを取られていました」

更にお酒の神様として有名な松尾大社が、昭和に作ったお酒の銘柄ラベルの屏風でお酒の文化についても説明がありました。今回、公式のイヤホンガイドは俳優の佐々木蔵之介さんが担当されており、ご実家の佐々木酒造や、大学院の栗本徳子先生のご実家である英勲のラベルの前で皆さん盛り上がりました。

「銘酒ラベル屏風を説明する野村教員」

そして展示の最後には重要文化財の松尾社一切経と御神像三体との対面です。
厳かに居並ぶ御神像には、とても迫力があり受講生の皆さんは熱心に見入っていました。
こうした展示解説を3回行い、それぞれのグループは解説を聞き終えて解散となりましたが、会場に残って展示を熱心に見学されている方も多くいらっしゃいました。

「解説後も残って御神像を見学される参加者の皆さん」

研究成果の発表の一つとして、こうした博物館展示があります。開催期間は約2ヶ月ほどですが開催に至るまでの準備は、数年規模となります。
地域特有の歴史といった「文脈」を踏まえ、何が地域の特色なのかを考え、さらにはどんな地域課題があるのかを探ること。また、そうした課題に対応するため、文化資産の意義や価値を分かりやすく伝えることも社会実装の一つだと知らされる収穫祭となりました。
なお京都文化博物館での特別展は6月23日までで、続いて巡回展という形ではないですが、7月20日から9月16日まで鳥取市歴史博物館でも同様の特別展が開催されるとのことです。
ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。

(本文中にある展示会場内の写真はすべて特別に許可を得て撮影させていただきました。)

 

(文=野村朋弘、加藤志織)
(写真=作山朋之)

 

 

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