REPORT2023.12.21

アート

月を見上げる。あなたとつながる。 — イルミネーションプロジェクト2023

edited by
  • 上村 裕香

日ごとに寒さのつのる12月中旬のこの時期、白川通に面した瓜生山キャンパスの玄関口・大階段を華やかに彩るイルミネーションが毎年点灯されています。本年も、12月15日(金)18時半から、京都芸術大学・瓜生山キャンパスで「イルミネーションプロジェクト2023」の点灯式が行われました。
大階段に集まった学生たちのカウントダウンに合わせて灯された電飾には、「寒い冬の時期、遅くまで制作に励む学生を元気づけたい」という思いが込められています。今年の点灯式はステッカー配布やフード提供もあり、大盛況となりました。
今回は点灯式の様子と、「イルミネーションによって暗闇を照らし、人と人とのつながりをつくりたい」と奔走した「イルミネーションプロジェクト2023」のメンバーからうかがったお話をお届けします!

 

2005年から始まり、今年で16年目を迎えた「イルミネーションプロジェクト」(未実施の年度も有り)。学生が実際の社会のなかで学び、芸術による社会貢献ができる人材の育成を目的として行われているリアルワークプロジェクト(社会実装プロジェクト)のひとつです。人間館入り口を、灯りによってアートな空間に演出します。
今年のイルミネーションのタイトルは「月灯り」。人工的な照明ではなく、温かみのある光によって人を照らしたいという思いから、「灯り」の文字をあてたそうです。月を見たときの大切なひとが見守ってくれているイメージや、物理的に遠く離れた人とも同じ月を見るという行為でつながっている感覚を「月」というモチーフに込め、プロジェクトのテーマ「人とのつながり」を表現しました。

京都芸術大学 イルミネーションプロジェクト2023「月灯り」

月を見ると、人とのつながりを感じる。
月はどんな時も私たちを見守ってくれている。
それはまるで、普段私たちを想ってくれている大切な誰かのようだ。
そして、大切な人と遠く離れてしまっても、同じ月を共に見ることで、その距離も忘れてあたたかさを感じることができる。
私たちはこのイルミネーションを通してあたりまえにある人とのつながりの大切さ、あたたかさを伝えたい。

「パワー!」 掛け声の響く点灯式

点灯式には多くの学生・教職員が訪れ、あっという間に大階段はイルミネーションを楽しみにする人でいっぱいになりました。点灯式の司会を務めたのは映画学科・俳優コース1年の服部ほのかさんと、情報デザイン学科・ビジュアルコミュニケーションデザインコース1年の笹岸芽生さん。イルミネーションプロジェクトの歴史、そして今年のイルミネーションのコンセプトを発表しました。

たくさんの学生が大階段に集まりました

大階段に駆けつけた学生たちも巻き込んでカウントダウンは行われ、「5、4、3、2、1……点灯!」の合図で、一気に学舎が煌びやかにライトアップされました。しかし、肝心の満月がぽっかりと暗いまま……。
「あれ、一部が光ってないですね。みなさんのパワーが足りないのかも! みなさんで『パワー』と叫んで、ぜんぶ光らせてみましょう!」という司会の二人の言葉に応えて、大階段の学生たちが声をそろえて「パワー!」と叫ぶと、満月が現れました! 「おおーっ」と歓声があがり、あちこちでシャッター音が鳴り響きます。
しかもなんとこの月、ライトのつけかたによって三日月、半月、満月など5種類の月の形を表現できるんです。切り替わっていく月の姿に、集まった学生たちは釘付けに。白川通を通る方々も、足を止めてイルミネーションに見入っていました。

点灯式後は、イルミネーションを盛り上げるイベントが実施されました。昨年度までは新型コロナウイルス感染症対策のため実施できなかったフード提供が今年度から復活し、サプライズイベントも行われ、多くの学生が参加しました。

提供されたフードは「わたがし」。空に浮かぶ雲と星をイメージして、白いわたがしにカラースプレーとトッピングシュガーを乗せています。イルミネーションの月に、わたがしをかざして写真を撮る人も。「インスタ映え」が狙えるかわいらしいフードでした。

もうひとつ、サプライズフード「満月まん」も学生食堂の協力を借りて提供されました。ほかほかとあたたかい、満月をイメージしたカレーまんで、寒い夜にぴったり! 中にはチーズが入っていて、カレーの辛さをマイルドにしてくれます。こちらのサプライズフードは、SNSで「#キミと見たい月灯り」というハッシュタグをつけて投稿してくれた学生限定で配布されました。

あたたかい満月まんで心もほかほかに

全員が本プロジェクト未経験からスタート

イベント当日 開始直前のミーティング

「イルミネーションプロジェクト2023」は、学科・コースの垣根を越えて集まった1~2年生の計34名で、9月末よりプロジェクト活動を開始しました。約2か月半という短い時間でこのイルミネーションをつくりあげたそうです。なんと、今年のプロジェクトメンバーは全員が本プロジェクト未経験。すべてが手探りで進んでいきました。
はじめの1か月はリサーチや、講義室を電飾で装飾ワークショップ、メンバー内でのプレゼンテーションなどを行い、その後、OB・OGに対するプレゼンや、芸術教養センタープレゼン、最大の難関である理事長プレゼンなどを乗り越え、テーマやデザインが決定しました。

大リーダー(統括)をつとめた情報デザイン学科・クロステックデザインコース1年の井上広叡さんは、なかでも理事長プレゼンのときが一番苦労したと話します。

大リーダー(総括)をつとめた井上広叡さん(中央)

「理事長プレゼンでは2つのデザイン案を提出したのですが、実は1度目のプレゼンでは、どちらも採用されないということになってしまったんです。急遽『次週、理事長に再プレゼンをしなければいけない』となって、急いで準備をしました。無事、2度目のプレゼンで通過することができたのですが、その後の蒼山会(保護者会)へのプレゼンに向けて、数日でデザイン案をブラッシュアップする必要があり、そのときはタイトなスケジュールでしたね」。

叡山電鉄の茶山・京都芸術大学駅に掲示したポスター 写真提供:LEE YUCHANさん

プロジェクトメンバーは、実際にイルミネーションの電飾をつけるなどの制作をする「制作部門」、SNSやポスターを担当する「広報部門」、点灯式当日のイベントを取り仕切る「運営部門」にわかれて活動しました。

広報部門でポスターの制作・掲示を担当したLEE YUCHANさん(右)

広報部門で、ポスターの制作・掲示を担当した情報デザイン学科・ビジュアルコミュニケーションデザインコース2年のLEE YUCHANさんは叡山電鉄の茶山・京都芸術大学駅に横幅3メートル、縦80センチメートルのポスターを掲示したり、ホログラム技術をつかったステッカーをデザインし、点灯式イベントで配布したりといった取り組みが大変だったといいます。

ステッカーはこちら。紙幣の偽造防止などにも用いられるホログラム技術を持つクルツジャパン株式会社、株式会社ジェイ・エスの協賛で制作されました。中央に印刷された満月と、光の加減によって七色に輝くホログラムが目を惹きます。

今年の見どころは?

MSの森本双葉さん(左)

MS(マネジメント・スチューデント)の舞台芸術学科・演技・演出コース2年の森本双葉さんは大階段を登って中央に設置されたアーチが見どころだといいます。横幅180センチメートル、縦幅360センチメートルの巨大なアーチは、組み合わせた9本のアーチに電飾をつけたもの。オーガンジーという透け感のある生地をカーテンのように巻くことで、学生たちを迎え入れる柔らかな雰囲気を演出しています。

柔らかな雰囲気のアーチ 
7種類ある星のオブジェ

大階段には数々の星を模したオブジェと電飾が散りばめられた道が広がり、柱には街並みを描いた看板が。上に視線を移すと、青々とした電飾で表現された夜空の中心に満月が浮かんでいます。大リーダー(統括)の井上さんは、イルミネーションの制作過程やこめた想いについてこう話します。
「実は、このくらい大規模に階段を装飾したのは前例がないことなんですね。寸法を計算したり、固定したりするときに苦労しました。アーチに向かう道に設置している星のオブジェは7種類あります。この星は『個人』を表していて、ひとつひとつの星の形がちがうんです。ひとりひとりちがう個性をもっているということを表現したいと思って、形にはこだわりました」

大リーダー(統括)をつとめた向井華音さん(中央)

大リーダー(統括)をつとめた空間演出デザイン学科・ファッションデザインコースの向井華音さんは「はじめは、いまアーチを設置している場所に月を置きたいと考えていました。でも、理事長プレゼンで『君たちならもっとできるよ』と言ってもらって、いまの吊り下げる形に変更したんです。鉄芯を曲げて溶接して半球をつくり、そこに電飾を巻き付けています。作業は急ピッチで。溶接から吊り上げまでの工程を3日間くらいでやりました。『月』はやっぱり、一番見てほしいところです」と制作の過程と、イルミネーションの見所を説明しました。

こだわりの詰まった『月』

「『月』は鉄芯を5本溶接して、そこにストリングライト(電飾)を巻くことで月の満ち欠けが表現できるようにしました。ライトアップ期間中は日替わりで三日月や半月など、いろいろな姿の月を見ていただけます。遅くまで制作している学生さんが帰りにふらっと寄って、このイルミネーションで暖かくなってくれたらうれしいです。イルミネーションを見るというのは非日常の体験なので、楽しんでもらえたらと思います」

 

イルミネーションは12月25日(月)まで、毎日18時30分から20時30分のあいだ点灯しています(土日祝は18時から20時に点灯)。ぜひ制作に疲れた夜にはお立ち寄りください!

(文:上村裕香)

 

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  • 上村 裕香Yuuka Kamimura

    2000年佐賀県生まれ。京都芸術大学文芸表現学科2020年度入学。

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