INTERVIEW2023.03.03

染織

出産後、子育てしながら学びつづけて娘と成長。 ― 社会人学生たちの「人生を変えた学び重ね」

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  • 京都芸術大学 広報課

何歳でも、どこからでも学べる芸術大学

「ずっと、学びたかった」「ここなら、自分でも学べる」。そんな想いから、この通信教育課程にやってきた、1.3万人以上(2022年5月現在)の社会人学生たち。18歳から90歳代、日本全国から海外まで、ひとりひとりが仕事や生活を持ちながら、芸術を学ぶことで、新しい人生のドラマを紡いでいます。

今回の主人公は、仕事を持ちながら本学の染織コースに入学。その後、転職、結婚、出産という大きな人生の転機を乗り越え、無事に卒業を果たした髙橋実幸さん。社会人としての経験に、芸術を「学び重ねる」ことで得られた、自身の変化などについて伺いました。
 

気軽に入学してみたところ、予想外の事態に

― なぜ、「染織コース」へ?

着物が好きで、仕事しながら着付け教室に通っていたんです。それがひと段落したときに、「素人でもいちから着物づくりを学べる」という本コースの存在を知って。「私もつくってみたい」と習いごとの延長のような気分で、気軽に飛び込んでしまいました。もともと絵を描くのが好きで、高校時代に一時は本気で考えた「芸大で学ぶこと」への憧れも、心のどこかに残っていたのだと思います。

結局、一般大学に進学して営業職に就いたものの、自分には合わないと悩む日々が続いていて。本学に入ったのをきっかけに、「もっとプライベートを大切にしたい」という気持ちが強まり、思いきって事務職に転職したんです。そうしてようやく心身にゆとりが生まれ、「さあ、学びに集中できる」と思った矢先に、結婚、出産で生活が激変してしまったんです。
 

先生に勢いづけられ、リビングでの制作に挑戦

― 学びをつづけられた理由は?

正直なところ、「このまま学びつづけるのはムリ」と思う時期もありました。初めての子育てなのに、出産して半年で仕事に復帰。しかも、自宅の手狭なマンションで、どう大型の作品をつくればいいかわからず、課題制作も滞りがちに。そんなとき、コースの先生とzoomで面談する機会があり、「これ以上、うちでは制作できそうにありません」と悩みを打ち明けてみたんです。

すると先生から、ビックリするほどシンプルな答えが返ってきたんです。「できるできる、やってみよう!」って。その勢いに押され、言われるままにリビングへ板を敷き、おそるおそる布を染めてみたら、「あ、本当にできるもんだ」と。ちょうどその頃、遠隔授業でクラスメイトとも画面ごしに自宅制作のようすを共有。「みんな、それぞれの環境で工夫しているんだな」とわかったことも、大きな励みになりました。

はじめて自宅で制作した作品「朝顔」。

 

悩むより工夫することで、一歩ずつ前へ

― 育児と学びの両立で、難しかったことは?

なんとかリビングを制作の場にできたものの、そこは子育てや家事の主戦場でもあります。「作品を出しっぱなしにできない」「集中して一気に制作できない」ことには、つねに悩まされました。ただ、悩んでいても仕方ないので、「部分的にシラバス(科目概要)を読みすすめる」「つねに頭の片隅で課題を考える」など自分なりに工夫。朝に布を染めて、仕事に出ている間に乾かすなど、少しずつ作業効率を高めていきました。

子どもが幼いうちは、つくりかけの作品を蹴散らされ、締め切り前にぐずられ、「自分は何をやっているんだろう」と、ため息をつくこともありました。けれど、誕生直後の“おくるみ”から“子ども服”へ、ぐんぐん成長していく娘を見て、“ひとは布と生きる”という先生の言葉をあらためて実感できたことは、娘からもらった貴重な学びです。
 

頭で考えるよりも、まずは手を動かす

― ところで、学びのスケジュールは?

まとまった制作時間をとれるのが早朝か夜だけだったので、つねに締め切り前は眠気との闘い。「少しずつでもやっていけば、いつか完成する」と取り組むうちに、コツコツ作業するスタイルが身についてきました。また、ほんの少しのスキマ時間でも活用できたのが、共通科目の動画スクーリング。出産のための入院直前まで取り組んでいました。

共通科目で学んだ芸術史などの教養は、大人になったいまこそ、あらためて学び直す価値があると感じました。とくに動画とレポートとの組み合わせは、知識が頭を素通りせず、しっかり身についていくのを実感。読むだけだと難しそうなシラバスも、やってみると意外とすんなり取り組めて、「とにかくやってみる」「まずは手を動かす」ことを体感的に学べました。

レポートは大変だったものの、面白かった芸術史の動画授業。

 

娘との思い出を染めた、卒業制作のワンピース

― とくに力を入れた学びは?

“絞り染”のスクーリングで色がパッと広がるようすに引き込まれ、織よりも染を中心に、いろんな技法を学んでみることにしました。なかでもとくに面白かったのが、好きだった絵を活かせるスクリーンプリント。入学したときは着物をつくるのが目標でしたが、子育てをするうちに、どんどん身近な布に目がいくようになってきて。気がついたら、娘のワンピースを卒業制作にしていました。

絵柄は《レストランのパフェ》と《夜のシャボン玉》の2種類。どちらも幼かった娘との思い出から生まれたものです。他愛もないエピソードなんですが、「自身の体験や経験、エピソードを元にしたものは面白い」と、またもや先生に勢いづけられました。ミシンもほぼ初心者の私が、ワンピース作品をつくるなんて。大それた挑戦でしたが、この大学ですっかり、悩む前にやってみるクセがついたみたいです。

卒業制作作品[(写真左)夜のしゃぼん玉・(写真右)最高の一日になりそうだね]。

 

身近な小物から、いろんなひとへ染織の魅力を

― これからの目標は?

先生や学友たちに励まされて、自宅を作業場にすることもできたし、コツコツ作業する習慣も身につけられました。相変わらず日々の生活は忙しいけれど、そのなかでも少しずつ、自分だけの制作をつづけていきたい。目標は、シルクスクリーンプリントのスキルをさらに深めること。そして、自分が身のまわりで使うオリジナルの布製品を、人にも提供することで、いろんな方に染織の魅力を伝えられたら。友人がギャラリーで展覧会をしている話を聞いて、これまでは「すごい」と感心するだけでしたが、「いつか自分もやってみたい」と思いをめぐらせています。


染織コース|学科・コース紹介
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/course/dyeing/

卒業生の声|京都芸術大学 通信教育部
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/student_voice/

説明会・相談会 | 京都芸術大学 通信教育部
https://www.kyoto-art.ac.jp/t/briefing/

YouTubeインタビュー映像

 

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