美術工芸学科 総合造形コースでは、ヤノベケンジ先生が指導するウルトラゼミ展「of subjective」を開催。2022年9月26日(月)から10月2日(日)に人間館1階ラウンジや階段、望天館1階や屋上、「言葉」を用いた作品は学内数カ所に展示、まさに学内の至る所で作品を観ることができました。ゼミ生20名、19組の作品をご紹介いたします。
Statement
様々な生き物が、それぞれの知覚を持って観測する世界を
“環世界”と呼び、私達も同様にそれぞれの環世界の中で生きていく。
目まぐるしく変化する今日の世界に於いて、
価値観を揺さぶられ、迷い、悩んでここに流れ着いた私達は
各々が構築した世界を一つ握り締め、持ち寄った。
それぞれの築いた世界は、この展覧会で一つの環を形作る。
人間館 1階ラウンジ
堤 颯輝・堤 響生/Satsuki Tsutsumi・Hibiki Tsutsumi《Gaze – わたし達は何者なのか?》
他者のまなざし、或いはまなざされるという意識によって存在する自己があるとすれば、「空想」という自己に内在する他者、外側へと表出し形を得たそれら“他者”のまなざしに晒されたとき、我々は自己と他者との境界線に立ち、「私」について思考を巡らせることになる。
團 隆希/Ryuuki Dan《Life with her Collection》
日本のアニメカルチャーを下に
作品の本質とは何処にあるかを表現する。
木曽 竣太/Shunta Kiso《錦、美波に揺れる》
西郷隆盛の半生から着想を得たフィクション小説。
史実に則ったストーリーで、日本近代化の功罪に切り込む。
具体的な内容は読んでみてからのお楽しみ。
河上 竜己/Tatsuki Kawakami《Liberation Of Toilet》
閉鎖空間に閉じ込められ、汚い、下品などという印象を持たれているトイレを不便に思い、今回私はトイレ(便器)をどこへでも連れて行ける装置を作った。
これは人に使われるためのトイレではなく、トイレの解放への第一歩であり、トイレの為のトイレなのである。
久保田 祥江/Sachie Kubota《招き猫》
私の祖母は銭湯を営んでいる。地元の人だけでなく観光客でも賑わっていた大福湯。新型コロナウイルスで自粛や緊急事態宣言によるお客さんの減少。時勢の都合で会話を控える事がルールになって3年が経った。この何処か冷たく人を距離をとった生活も少しずつ戻り始めて良いのではないだろうか。
そこで駆け出し芸大生による展覧会を企画した。私は沢山の福を招いて欲しいという願いと共に、両手を上げた招き猫を制作した。
坂倉 直慧/Naosato Sakakura《helmet》
私はコロナ禍の影響で人が多く存在する空間が苦手になってしましった。
そして三回生の頃に自らの身と心を守る為にヘルメットを作り引き籠ろうとしたが、ヘルメットは私の苦手な圧迫感を再現するものになってしまっていた。そして引き籠りたいのなら覗き窓を何故付けたのかも疑問になった。
このヘルメットを私なりに考え直した結果、私は殻に引き籠りながら周りの情報を見ていたい欲望は少なからず存在し、その様は自室に引き籠ってネットサーフィンをしているオタク・ニートの様であった。
この事から私はこのステレオタイプのオタク像ろこの頃のサブカルチャーを取り巻く環境に憧れを抱いていた事に気が付いた。それと同時に一般化してしまい「オタク」という属性が特別なものでなくなった今、私は特別な存在ではなくただのニート予備軍に属する人間になってしまった。
私はオタクになりたい 特別な存在になりたい
白石 廉/Ren Shiraishi《星の子》
戦争や疫病など不安が絶えない世界の中で、将来への暗澹たる不安が付きまとう。
~どうしてゆけば良いだろうか?~
~何者かでいられるだろうか?~
~何処へ向かうのだろうか?~
未来という暗く重い重圧で今にも消えてしまいそうになる。
ある日、ゴミ捨て場に打ち捨てられた古いガス灯のようなものを見つけた。その灯りを失った姿は、とても切なく寂しく、私の心を映すかのようだった。その姿に惹かれ、そこにもう一度光を灯し、未来を照らす光の世界を作りたいと思った。
「星の子」は未来の「光」を求めてその道しるべを探し進む少女の物語です。
篠原 康太郎/Koutaro Shinohara《これで酔ったやつ、多分鉄分足りてない。》
まわる、マワル、ぐるぐる回る
回転は動力だ。俺もあいつも地球も
人間館 ピロティ
寺坪 祐輝/Yuuki Teratsubo《You are beautiful》
病気と闘っている友人がいる。
病気を隠しながら孤独で戦ってきた姿は、同世代とは思えないほど強い気持ちで今を生きていた。
同じように生きている人に向けて、困難に立ち向かっている貴方は格好良く“美しい”
そんな自分を誇らしく思って欲しく、そのきっかけになればと思い制作した。
人間館 階段
田中 祐太/Yuuta tanaka《drawing》
時が進むにつれて人は加速し融解し混ざり合っているような気がする。
その中で僕は気味の悪さ、居心地の悪さを背中に感じつつ、止められない「ただ描く」という超個人的な行為がパブリックに介入していく様を通して自身の在処を探っている。
望天館 1階
射場 愛/Ai Iba《霖-lin-》
人や動物は経験の積み重ねとともに警戒という予防線を張って生きていく。
警戒心の根底にある野生とは、一体何なのだろう。
下中 丈/Jyou Shitanaka《終末夜行》
核戦争がいつ起きるか分からない今の世の中で
なぜ日本の人々は平和を信じて平然と生きているのか?
このままではいつか理不尽に殺される日も来るかもしれない。
これだけは絶対に嫌だ。他者に今の日常を壊されるのはごめんだ。
だから私は彼らを作った。
私が殺された時にその相手を呪い、復讐してくれるモノ達を。
浦嶋 一帆/Kazuho Urashima《IAM=MAIDEN》
私は生きてきて20と少し何度夢を見て何度自身を断罪したのだろう。
そうした私は限りなく人間へと成長していき、自身が描いた私となっていった。しかし臭いはいつも断罪する一瞬に感じるのだ。その臭いに泣いた私はもう一度夢を見た。
『変わってないね』私はそういった。
井本 駿/Shun Imoto《toys》
頭の中は、何をしても良い。
やりたいこと全てがコレクションとなる。
全て開封しよう‼
好本 彩乃/Ayano Yoshimoto《骸》
骨を火葬する。そうすることで、どうしようもなく自分を好きになれなかった私を弔い、供養する。そうして私が残っていく。
劉 承恩/LIU CHENAN《生命のリズム – 重奏》
作品は感覚に接続する建築空間性を利用する、
新しい建築空間と芸術彫刻を融合し、共鳴させる作品をメインに制作。
本展は建築家の岸和郎氏が設計した京都芸術大学望天館の空間を理解し再構成させ、
新しい発想と重奏される思いを実現させる展覧会。
そして建築空間のパフォーマンスを下にしたものが展示され、
それぞれの領域を横断するように楽しむことができる。
望天館 屋上
森 育実/Ikumi Mori《軌跡》
就職活動など、自分自身の今後について考えることが多かった今年、
そんな自分を鯉に置き換え、困難を乗り越えた軌跡を睡蓮で表現しました。
鯉のオブジェは昨年、制作したもので鯉は飛び跳ねる事で驚きを表現しています。また、水を弾き、浮かび続ける事が出来る睡蓮を困難を乗り越えた軌跡として用いました。自分自身が作った器が浮いた事から発想を受け、陶芸の新たな可能性の模索に繋がる作品になればと考えています。
松田 理沙/Risa Matsuda《Octopolis》
タコは元来非社会性の生き物であるとされてきたが、オクトポリスには社会性を持つタコがいる。偶然の連鎖で作られた環境がオクトポリスを形成し社交的なタコを作った。
このことから「オクトポリスと環境と進化」の関係に興味を持った。
オクトポリスという環境が進化を生み、
新しい「正のフィードバック」をもたらすのかもしれない。
人間館・望天館 各所
吉村 寧花/Shizuka Yoshimura《蔓延る》
私はよく、考え事や見た夢をメモ帳に書き記す。
それらは手に取れるような形のあるものではなく、
概念として私の頭に張り付いている。
張り付いたものは私の頭にあるだけで、誰にも伝えたことがない。
果たしてそれは存在すると言えるだろうか?
認識しているものは触れられなくて、正解も不正解も無い。
ただ張り付いただけのそれは一体何だと言えるだろう?
私を構成する何かが、ただ蔓延る。
教員による講評会
9月27日には後藤繁雄先生と名和晃平先生による講評会、9月30日はヤノベケンジ先生や川上幸子先生、金澤一水先生による講評会が行われました。
展覧会「of subjective」
日時 | 2022年9月26日(月)~10月2日(日)10時~18時(最終日16時まで) |
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場所 | 京都芸術大学 人間館ラウンジ・望天館1階・望天館屋上 |
出展作家 | 射場愛、井本駿、浦嶋一帆、河上竜己、木曽竣太、久保田祥江、坂倉直慧、下中丈、篠原 康太郎、白石廉、田中祐太、團隆希、堤颯輝、堤響生、寺坪祐輝、松田理沙、森育実、吉村寧花、好本彩乃、劉承恩 |
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